ゆるく減り張りをつけて生きましょう
@0
その子はとても無遠慮で図々しい子でした。
「ささきさーん。お金足り無くなっちゃいましたー。家住まわせてくださーい。」
@1
「何度も言ってるが、就活して仕事について。あなたを食べさせるために働いてるわけじゃ無いから。」
スーツをしゃっきりと着て不真面目な子に注意をしている獣女性。
この人は佐々木である。
佐々木は株式会社ブラックで働いている社会人である。
「はいはーい。了解でーす。」
そして注意された不真面目な獣っ子。
この子は豊華である。
豊華は日夜ゲームをする、生粋の遊び人である。
「分かってないと思うのは気のせいかしら。」
「えー、気のせいじゃないですかー?」
佐々木は目頭を揉み、豊華は悠々とゲームをしていた。
@2
「だらいま!」
佐々木は帰宅した。
「げー、ささきさんまた飲んだのかー。」
靴とか放り投げながら上がり込んでくる。
宝華を見つけるとにかにかしながら「また、ゲームやってるー♪」て大声あげる。
「ささきぃーモード入ってるわぁ」
ささきぃーモードとは佐々木が慣れないお酒を飲んでしまい、笑い上戸となる第2形態の事である。
「ねぇー、きぃーてぇよかちょーがさぁー」
「はいはい、聞いてあげますからお水飲んで来て下さい。」
取り敢えず退かして、パソコンを仕舞って置かないといけない。
前に「きぃれないのかー!」って笑いながらパソコンを金槌で破壊したから危険なのだ。
@3
「れね、かちょーにかみついて、やったのよー、おしりにがぶーてね」
佐々木は嬉々として愚痴りながら何故か涙を流す。
「しごお、くびぃなっちゃうかもぉ」
「はいはい、悲しいですね、私も悲しいですよー。」
豊華は佐々木の頭を撫でて宥める。
「ぜっらい、おもっへはい!よー」
凄く面倒だけど、慰めないと慰めないで文句を言われるか らしかたない。
しかも、だんだん何言ってるかわかんなくなってくるから最後は全部肯定するという一連の作業になるのだ。
「はいはい。思ってますよー。」
「おもっふのか!おもうの!か、えへへー」
@4
「はぁ ぁ」
ため息一回くらいは良いだろう。
あんなのに付き合ってられない。
佐々木は机の上で伸びてる。
豊華は腕を伸ばして首を鳴らすと、パソコンを開いた。
「今日の株式は...。」
豊華の本業は株主である。
いくつもの大企業の株を持つ親なのだ。
「んー、ここは確か事業が完成したっていってたなー。運用される前に投資しとこうかなー」
その配当で年間数億を稼ぐ凄腕なのだ。
何故佐々木の家に住むことになったのか。
@5
豊華は実家ではなく一人で暮らしていた。
セキュリティーがそこそこのコンビニの近く。
家にはハイエンドのコンピュータを置いて浮かれ多様にゲームをしていた。
「うへへ、課金課金。」
欲しい物を片っ端から買い漁り、周りからは課金上位1%の化け物と噂されるくらい課金していた。
けれど、ある日。
「あぁ!上限より使っちゃった!」
決めていた上限額より、利用額がはみ出してしまった。
上限とは自分と親で約束した、決まり事。
いくら稼いでいてもそれ以上は使わない。
使うのは、働くためか学ぶために限りという約束だ。
この上限には家の賃貸まで入っている。
その理由は親は娘に賢く慎ましく生きて欲しいとの願いが含まれているが、それは豊華には関係ない話だ。
「課金にお金が足りない...どうしよう。」
そうして考えたのが。
「そうだ、佐々木さんちに泊まろう!」
良いアイデアと頷いてたという。
@6
今日の取引を終えて、豊華はパソコンを仕舞う。
仕事でクタクタに酒を飲んで?飲まされ?グダグダになった佐々木を介抱してあげる。
ソファーに寝転がして、部屋の明かりを消したら御終い。
「おやすみなさい」
自分も寝て御終い。
獣は趣味です。