黒いカラス
クマと出会ってから、白い羽根のカラスは考え込むことが多くなりました。
『あなたにとって友達とはなんでしょう?』
ずっとひとりぼっちだったので、あまり考えたことはありませんでした。
けれど、今は友達がいます。
小さなネズミを思います。
大きなクマを思います。
カラスは、一度きりの出会いを大事に大事に思い出します。
では、答えは?
考えごとはそこまででした。
となりの枝に一羽のカラスがとまったので、カラスは顔を上げました。うっとりするほど夜のように黒く、大きく立派な翼のカラスでした。
カラスは、他のカラスに見つかりたくなくて離れようとしましたが、黒いカラスが呼び止めました。
「どうか、そのままで。君はいつもひとりですね。そこでどうでしょう。わたしと友達になりませんか?」
黒いカラスは優しく微笑んでいます。
けれど、カラスは狼狽えています。
「わたしは、白い羽根をしています。あなたから見れば、さぞ、醜いことでしょう。気持ち悪いでしょう。わたしはいなくなりますから、どうか、おゆるしください」
カラスは白い羽根をはばたかせ、姿を隠してしまいました。
黒いカラスは、どこかにいる白い羽根のカラスに聞こえないよう、小さく、小さく、溜息をつきました。
醜い。
気持ち悪い。
どちらも、群れの他のカラスらが散々浴びせてきたものです。心に染みついたものは、とても根が深そうです。
願いを叶えてくれる。
こんな魅力的なことを簡単に諦めるわけにはいきません。
でも、黒いカラスはあまり気が長くありませんでした。
さて、どうしようか。
黒いカラスは考えを巡らせました。
白い羽根のカラスは、白い羽根を取って、友達になったものの願いを叶える。
ネズミとクマを見た限り、それは確かです。
では、友達にならないと願いは叶えられない?
羽根を取るのは、願い事を言うのは、白い羽根のカラス自身ではないといけない?
確かめることは、無駄ではありません。
次にすべきことは、誰にやってもらうか、です。