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ともだち  作者: 猫野 朔
2/19

クマ

 



 友達がこなかったので、白い羽根のカラスはとても心配していました。


 どこかでケガをしたのだろうか。

 また誰かに追いかけられているのだろうか。


 探しにいこうとも思いましたが、その間に遊びにくるかもしれないので、動くこともできません。


 そこへ、ふらふらとクマがやってきて、


「めずらしい羽根のカラスさん、このあたりにドングリはありませんか? もう、ずっと何も食べていなくて、おなかがペコペコで……」


 どすんっと大きな体で しゃがんでしまいました。


 ドングリが実るのはまだ先です。

 カラスは少し考えて、それからクマに言いました。


「このあたりにドングリはありません。でも、わたしと友達になってくれるなら、願いを叶えましょう」


「ええ、なりましょう。ドングリのためならお安いご用です」


 カラスは嬉しくなりました。そして、白い羽根を一枚取って言いました。


「ドングリが沢山実っています」


 すぐ近くのドングリの木から、雨のようにばらばらとドングリが落ちてきました。

 

 クマは夢中になってドングリを食べはじめました。地面のドングリがなくなると、木にも登り、鈴なりの実もどんどん食べていきます。


 カラスは、喜んでいるクマを嬉しそうに見ていました。


 沢山のドングリを食べて満足したのか、クマは枝にまたがり、カラスに言います。


「おいしいドングリをありがとう。おかげで おなかがいっぱいです。ところで、あなたは 友達の願いなら、なんでも叶えれるのですか?」


 カラスは少し困った顔をして、


「なんでも、ではありません。でも、友達の力になりたいと思っています」


 それを聞いて、クマはするすると木から降りいって、カラスを見上げました。


「友達として、一つお聞きします。あなたにとって、友達とはなんでしょう? よくよく考えるといいですよ」


 そう言って、山へ帰っていきました。

 



◇◇◇◇◇



 毛づくろいをしているクマのそばに、黒いカラスがやってきました。


 それまで大好きなドングリをたらふく食べご機嫌だったクマは、急に嫌な顔をして出迎えます。


「とてもステキなお芝居でした」


 黒いカラスがからかうので、クマはそっぽを向きました。


「おかげで、よくわかりましたよ」


 黒いカラスは、上機嫌です。

 けれど、クマは、ますます機嫌が悪くなっていきます。


「そんな顔をして。あなたは沢山ドングリを食べられて良かったではありませんか」


「うるさい! 用は済んだはずだ。もう二度とくるな!」


 クマは、大きなつめを振り上げます。当たっては、ひとたまりありません。黒いカラスは、ひらりと高い枝へ飛んでから、クマをバカにするようにゲラゲラと笑って、どこかへいってしまいました。


 黒いカラスがいなくなっても、気持ちは晴れませんでした。


 


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