クマ
友達がこなかったので、白い羽根のカラスはとても心配していました。
どこかでケガをしたのだろうか。
また誰かに追いかけられているのだろうか。
探しにいこうとも思いましたが、その間に遊びにくるかもしれないので、動くこともできません。
そこへ、ふらふらとクマがやってきて、
「めずらしい羽根のカラスさん、このあたりにドングリはありませんか? もう、ずっと何も食べていなくて、おなかがペコペコで……」
どすんっと大きな体で しゃがんでしまいました。
ドングリが実るのはまだ先です。
カラスは少し考えて、それからクマに言いました。
「このあたりにドングリはありません。でも、わたしと友達になってくれるなら、願いを叶えましょう」
「ええ、なりましょう。ドングリのためならお安いご用です」
カラスは嬉しくなりました。そして、白い羽根を一枚取って言いました。
「ドングリが沢山実っています」
すぐ近くのドングリの木から、雨のようにばらばらとドングリが落ちてきました。
クマは夢中になってドングリを食べはじめました。地面のドングリがなくなると、木にも登り、鈴なりの実もどんどん食べていきます。
カラスは、喜んでいるクマを嬉しそうに見ていました。
沢山のドングリを食べて満足したのか、クマは枝にまたがり、カラスに言います。
「おいしいドングリをありがとう。おかげで おなかがいっぱいです。ところで、あなたは 友達の願いなら、なんでも叶えれるのですか?」
カラスは少し困った顔をして、
「なんでも、ではありません。でも、友達の力になりたいと思っています」
それを聞いて、クマはするすると木から降りいって、カラスを見上げました。
「友達として、一つお聞きします。あなたにとって、友達とはなんでしょう? よくよく考えるといいですよ」
そう言って、山へ帰っていきました。
◇◇◇◇◇
毛づくろいをしているクマのそばに、黒いカラスがやってきました。
それまで大好きなドングリをたらふく食べご機嫌だったクマは、急に嫌な顔をして出迎えます。
「とてもステキなお芝居でした」
黒いカラスがからかうので、クマはそっぽを向きました。
「おかげで、よくわかりましたよ」
黒いカラスは、上機嫌です。
けれど、クマは、ますます機嫌が悪くなっていきます。
「そんな顔をして。あなたは沢山ドングリを食べられて良かったではありませんか」
「うるさい! 用は済んだはずだ。もう二度とくるな!」
クマは、大きなつめを振り上げます。当たっては、ひとたまりありません。黒いカラスは、ひらりと高い枝へ飛んでから、クマをバカにするようにゲラゲラと笑って、どこかへいってしまいました。
黒いカラスがいなくなっても、気持ちは晴れませんでした。