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ともだち  作者: 猫野 朔
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小さな大きい勇気

 




 黒いカラスが持ちかけた話にのったことで白い羽根のカラスと出会ったクマですが、黒いカラスを追い払っても胸の中のもやもやが晴れず、翌日にはカラスのねぐらのある森へ向かっていました。


 とにかく、黒いカラスか白い羽根のカラスに会いたかったのです。


 森へ行っても、どちらにも会えませんでした。白い羽根は別として、そもそもカラスの個性など見分けがつかなかったので、黒いカラスはいたのかもしれませんが。


 そんなクマを最初に導いたのは、いっせいに移動を始めたカラスの群れでした。黒い塊に嫌な予感がしました。

 夢中で追いかけ、その途中で、クマはネズミに出くわしたのです。


 小さなネズミが小さな両腕をめいいっぱい広げて、


「待ってください!」


 小さな生き物が目の間に立ちはだかったのは初めて経験でした。大きなクマを見ると皆が逃げていくからです。

 けれど、小さなネズミはおびえることもなく、必死に叫んでいました。


「どうか、友達を助けてください! このままでは殺されてしまうかもしれません!」

 

 とんでもない勇気に感心すると同時に、白い羽根のカラスが頭をよぎったのでした。

 小さなネズミを背にのせました。そのとても正確な道案内のおかげで、なんとか白い羽根のカラスを救うことはできたのです。




◇◇◇◇◇




 雪がやんで、カラスが再び穴ぐらを出ていきました。クマは起きてはいましたが、寝たふりをして見送りませんでした。


 カラスが聞かなかったこともあり、今まで助けた経緯を話したことはありませんでした。

 クマの話をカラスは静かに聞いていました。きっと、血生臭いあのことも思い出したことでしょうが、特に動揺する様子は見受けられません。

 話が終わると、カラスは改めてクマに感謝し、小さなネズミにも早くお礼を伝えたいですと穏やかに話していました。


 カラスがいなくなって、クマは寝床に顔をつっこんでから、勢いよく頭を上げました。はらはらと笹がクマの上に降ってきます。

 まるでカラスの群れが捨てた白い羽根のように。


 願いを叶える羽根。

 使い方によっては、ぞっとするほど恐ろしいものです。

 カラスは友達に使うと限定してはいたようですが、初対面でも容易に友達にしてしまうので抑制力はないと考えました。どんなものだって善意だけでできてはいません。おせっかいですが、もう二度と使わせるべきでないと思いました。

 

 だから、ねぐらの森へ行きました。黒いカラスをとめるか、あばよくば白い羽根のカラスに会って説得したかったのです。


 使わせるべきではない。考えは、今も変わりません。そのためなら、友達ではないと言ったり、羽根が欲しいと言ったり……嘘も、おどしも、悪者だと思われることだって恐れはしません。


 クマの考えは黙っていることで効果があります。

 ただ、どうしてもカラスに話してもらわないといけないことが一つあります。


 クマは、おもむろに穴ぐらの一番奥の小さな穴に笹を一枚つっこみ、ぐいぐいと中をほじくります。すると、ひぇ、ひゃぁ、と悲鳴が聞こえてきて、小さなネズミが飛び出してきました。


 

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