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ともだち  作者: 猫野 朔
13/19

行方



 雪がちらつくと、決まってクマの穴ぐらにカラスの姿がありました。


 入り口で念入りに体の雪を落として、音をたてないよう、そっと奥へいきます。

 

 クマも冬ごもりをするとは言え、春まで死んだように眠りつづけるわけではありませんでした。うとうと眠り、そのうち、ふと目が覚めて、なんとなく寝返りをうったり、毛づくろいをしたりしながら、またうつらうつらと眠るのです。


 ゆっくりとした寝息が聞こえます。クマは仰向けで両手足を投げ出し、大きな背伸びをした直後のような姿で寝ていました。

 カラスは笹の寝床のはじに座り、じっとクマを眺めました。

  

『あなたにとって、友達とはなんでしょう?』


 クマがカラスに投げかけた質問です。

 未だに答えは見つかりません。

 また、クマは言いました。


『おれは友達じゃない』


 悲しい言葉でしたが、それでも離れがたくて雪が降る日は穴ぐらにいくことにしているのです。

 

 凍える外とは違い、穴ぐらの中は温かくて心地がよく、冬ごもりをしていなくてもついつい眠くなってきます。

 ほんの少しだけ、とカラスは自分の羽根に顔埋めて目を閉じました。



◇◇◇◇◇

 


 覚えがある少し固い毛の感触で目が覚めました。びっくりして飛び起きると、カラスはクマの腹に包まれるようにして寝ていたのです。

 カラスの動きに、クマも目を開けました。


「お前、やっぱりあったかいなぁ」


 寝ぼけているようで口調がぼんやりとしています。

 カラスはぎこちない動きでクマから離れます。


「やっぱりと言うことは、わたしが寝込んでいた時もですか……?」


「んー、そんなこともあったなぁ」


「つかぬことをお聞きしますが、わたしが寝込んでいた間、友達のネズミさんを見ませんでしたか?」


 カラスは身を乗り出すようにして問いかけます。外に出るようになって、前のねぐらの森や小さなネズミとはぐれた場所に行き、その周辺で出会った動物に行方をたずねてまわっていますが、いっこうに消息がつかめないのです。


 クマは眠そうにゆっくりとまばたきをしながら、


「ああ、あいつか……」


「知っているんですか!?」


 突然の大きな声に、クマが目を白黒させます。そして、詰めよってくるカラスのために、寝床に座りました。


「……もしかして、会ってないのか?」


「寝込んでいた時に見たような気がしますが、ずっと会えてません。今、どこにいるんですか?」


「けっこう近くにいるぞ。……ただ、ネズミも冬ごもりするから春まで待ったほうがいい」


 冬ごもりと聞いて、カラスはネズミの消息をつかめなかったわけを悟りました。とにかく無事なことが嬉しくて嬉しくて、


「よかった。本当によかった……」


 思わず言葉がついて出てくるほどです。


 クマはカラスの喜ぶ姿に目を細めて見ていました。ただ、あまりにまぶたの距離が近かったので、徐々に眠気に襲われ、こくりこくりと頭が揺れ始めます。


 やがて少し気持ちが落ち着いてくると、カラスはふとあることに気がつきました。

 

「あの、なぜ、あなたがネズミさんを知っているのですか?」


 クマは両手で顔をこすり、眠気を払おうとがんばります。もう少し起きて話さなければいけません。



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