ネズミ
そのカラスは、いつも群れのすみにいました。
カラスはみんな黒い羽根なのに、そのカラスの羽根は白いので、仲間にいれてもらえず、すみっこにひっそりといるのです。
ある日、カラスは小さなネズミに出会いました。
ネズミは、クロネコに追いかけられていて、カラスに、助けてとお願いしました。
いつもひとりぼっちのカラスは、話しかけられたことが嬉しくて、ネズミに言いました。
「わたしと友達になってくれるなら、その願いを叶えましょう」
もう、クロネコはすぐそこです。
ネズミは、慌てて答えました。
「あなたの友達になります。だから、助けてください」
カラスは喜んで、自分の羽根を一枚抜いて言いました。
「クロネコは家へ帰ります」
ネズミの目の前にいたクロネコは、そのまま通り過ぎ、何処かへいってしまいました。
ネズミは涙を流して言います。
「あなたのおかげで助かりました。約束通り、あなたの友達になりましょう」
カラスは、とても喜びました。初めて友達ができたのです。もう、ひとりぼっちではありません。
ネズミは、明日遊びにきます、と言って、森へ帰っていきました。
お日さまが眠って、起きてから、カラスはネズミを待ち続けました。けれど、お月さまが輝く夜になっても、ネズミはきませんでした。
◇◇◇◇
白い羽根のカラスとネズミのやりとりを、一羽の黒いカラスが見ていました。
黒いカラスは、どうしてクロネコがネズミを食べなかったのか、不思議でなりません。あれこれ考えてもわからなかったので、ひとつ策を講じてみることにしました。