なろう作家 二酸化炭素を弾丸にできる転生チーター
その日。
五百万人の勇者を育てた大賢者の弟子であるナオミは、街道で一人の邪悪な魔術師と遭遇しました。
「俺は、大気中の二酸化炭素を凍らせて弾丸にできるチート能力を持つ魔術師!」
男はそう名乗りました。
「ニサンカタンソ・・・?」
五百万人の勇者を育てた大賢者の弟子であるナオミにとっても、それは初めて聞く魔法でした。
「フ、わからないのか!?所詮中世ヨーロッパ風異世界魔法は遅れているのだな!では親切に教えてやろう!二酸化炭素というのは空気中に酸素や窒素同様に含まれている目に見えない物質の事だ!これは地球上のどこにでも存在している!つまり、砂漠のような乾燥地帯にも二酸化炭素はあるという事だ!即ち、二酸化炭素を凝縮して弾丸として撃ち出せば無制限に遠距離攻撃可能!まぁ今から俺の破道の礎になる貴様にとってはあまり意味のない事だろうがな!それがわかったら」
そして、二酸化炭素を凍らせて弾丸にできる魔術師とやらはその右手に二酸化炭素を凍らせて弾丸を造り始めました。
「くくく!見るがよい!この二酸化炭素の弾丸が出来上がった時、貴様の命が尽きるのだ!さぁ恐怖に怯え、命乞いをしろ!財布の中身をぶちまけ、これだけしかありません、見逃してくださいと涙を流すがよい!!!」
・・・・・。
ナオミは知りませんでしたが。
大気中に含まれる水分は、4パーセントでした。
同じく二酸化炭素は0.04パーセントでした。
エネルギー変換効率は、百倍悪いとか。
時間がかかるとか。
お前の魔術はスタート時点で間違えてるからどうあがいても術式に無駄が多すぎるだとか。
その二酸化炭素を固めるエネルギーをそのまま放出して攻撃すればよくねとか。
今ナオミが思っているような事を考えてはいけないのです。
「フフハハハ!もうすぐだ!もうすぐ、もうすぐで我が魔術が完成し」
「石の弾丸」(ストーンバレッド)
そして、このように相手の魔術が完成する前に攻撃魔法を叩きこんで倒してしまおう。
などとも考えてはいけないのです。
「カズヤさん。このお金でパァーとやってください」
街の宿屋兼酒場に帰って来たナオミは、店内のテーブルに金貨の入った袋を置きました。
「お、どうしたんだそれ?」
飲み代が払えなくて店の床掃除をしていた冒険者仲間のカズヤが尋ねます。
「街道を歩いていたら、悪の魔術師と遭遇したので倒しておきました。どうせ悪銭ですからとっとと使ってしまった方がいいでしょう」
「そっかー。ちなみにどんな奴だった?」
「石の弾丸の術一撃で倒せました」
「それってランクEの魔術師が最初に覚える攻撃魔法の一つじゃないのか?」
「はい。そうですが」
「なら。たいしたことない悪の魔術師だったんだな」
「はい。私もそう思います」