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黒のガーディアン  作者: 梅野 ソノ
見えない敵編
2/2

決意

幼い頃から、ずっと疑問に思ってきた。

生まれた世界は、生きていくにはとても生き辛い世界。両親がいない子供なんて大半で、レオもそんな境遇で育ってきた。

人間よりも遥かに優位な位置に存在する生物。彼らを自分の目で見たことは一度もない。なざならば、見えないからである。そんな生物を人々はこう呼んだ。"見えない怪獣(悪魔)"だと。

まさしくそうだと思う。悪魔に怯えながら生活する日々。外出するには、剣を振り回しながら歩かないといけない。そんな状況下なのに、政府の人間は動こうとしない…否、動くことができないのだろう。

レオが生まれた国、スノーランドと呼ばれる王国は、雪の都と呼ばれる反面、悪魔たち生殖率第一位に位置する生きずらい国である。

「レオ、朝ごはん出来たわよ。」

凛とした美しい声が背後に聞こえたレオは振り返った。

「姉ちゃん!今、行く!」

二カッと笑ったレオは慌ててテーブルへ向かう。

木製で作られたテーブルのそばに、二台椅子が置かれており、手前の椅子に座った。

朝食には卵のサンドイッチ、コーンスープ、サラダと毎日のありきたりな食事が並んだ。

「ほんと、相変わらず美味いなー。これなら、いつでも嫁に行けるんじゃねェ?」

笑いながら茶化すと、姉のシオンはむっとしたような顔をした。どうやら、レオの言葉が気に食わなかったようである。褒めたつもりではあったのだが、そうとは取られなかったようだ。

「な、なんで怒るんだよ。この間だって、声かけられてたじゃねーか。断っちまったの?」

その言葉にシオンはこくりと頷いた。レオは勿体ないなと思う。シオンは男性にとても人気がある。美人で凛とした佇まい。薬師をしており、薬の知識は豊富で村の人間も先生、先生と呼んでは慕っている。そんなシオンは、レオにとって自慢の姉であった。

「もしかしてさ、俺のせいとかじゃねーよな!?」

「断じて違うわよ。」

「だったら、なんで、」

「レオ。」

シオンは真っ直ぐレオの瞳を見つめて名を呼んだ。その漂う雰囲気に、レオは口を紡ぐ。

「今は、仕事を大事にしたいから」

シオンは両親を亡くしてから、医学の勉強に励み、村にいるただ一人の医者に弟子入りをし、薬師となった。たくさんの人々を助けたい、それが彼女の夢である。

「だったら、俺の怪我も治してもらわねーとな。」

「もう、また、その話?」

「おう!俺は、この世界を変えるんだからな!」

「ふーん?」

信じてなさそうな姉の表情にむっとするが、口にはせず、二カッと笑って見せた。そんな和やかな空気の中、食事をしていた時であった。

「ねぇ、今何か聞こえなかった?」

不安そうな顔で、シオンはレオを見た。レオは耳を澄ませる。

「………悲鳴?」

甲高い女の声が遠くから聞こえてきたと思えば、その声は各地に木霊していく。悲鳴の声がだんだん近づいてきて、恐怖を覚えた。

「姉ちゃん、!」

レオはシオンの前に出るように構え、玄関前に立つ。ダンダンダン、と玄関の扉を叩く音がしたかと思えば、「オースティン姉弟!いるなら今すぐ逃げるんだ。悪魔が来た!」と男が言った。レオの頭に、過去の映像が流れる。自分を庇ったせいで悪魔に襲われ、冷たくなってしまった両親が。手足が震えるのを感じた。

「しっかりしなさい!」

「痛ェ!!」

バシッと背中を叩かれた。後ろを振り向くと、フライパンとナイフを両手に持ったシオンが立っていた。

「剣士はこういう時、怖がったりしないで女を守るもんよ?」

ニヤリと笑って見せたシオンはレオの腕を引き、玄関に立てかけられていた銀の剣をレオに渡した。

「父さんの形見。受け継ぐんでしょ?それで、私をしっかり守ってみせなさいよ?」

「ほんっと、姉ちゃんには敵わないわ。」

ははっと笑いながら受け取った剣は、想像以上に重たくて。

その剣を力強く握り、レオは玄関の扉を開けた___________。

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