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陽子さんを回想する僕


陽子!なにやってんだおめー


陽子は男物の学ランを着て、一升ビンを振り回しながら妙な踊りを舞っていた。


何ってみりゃわかるだろう。


わからんよ、なんだそれは?


いーか、わかんねーのはな、てめーが見てるだけだからだ。

一緒に踊ればわかる。

ほれ、てめーも踊れ。

同じアホなら踊らにゃ損だ。

ほれ。


陽子はそう言って、声をかけてきた男に一升ビンを手渡した。

表情は、満面の笑顔だ。


はあ?


男はその笑顔と自分の常識との狭間で一瞬わけがわからなくなってしまった。

すでに男は陽子のその途轍もない笑顔と踊りに常識的な判断力を侵食され、一升ビンを手にしてしまっていた。


陽子はすでに再び踊り始めている。


いや、ちょっ、待て!


陽子は、熟練された武道家のような身のこなしで、うろたえる男の背後をとって、その両手に自分の両手を添えていた。


奇妙な、おそらくは自作であろう歌とメロディを口ずさみながら、心から嬉しそうに男を無理矢理踊らせる。


うわ、おい、ちょ、おい。


情けない声をあげながら、男はすでに陽子にその理性を奪われていた。


男の表情が困惑から次第に恍惚に変化してゆく。。。


男はまだ自覚できていなかった。。。だが、そこにはとてつもない価値があった。


陽子の「それ」はそのように周囲と自らを照らしていた。


「それ」は凍りついた心を溶かすとてつもない陽だった。


「その陽」はその後の数十年でその星全体を照らし、その星雲全体、その宇宙全体、そしてさらには異世界の多くまでも照らすことになる。


ーーーーーーーー


ちょと!陽子さん、やり過ぎです!


はあ?!やり過ぎも飲み過ぎもないわよ!

それともなに、やってほしくないの?!


い、いえ、盛大にお願いします。


じゃ、その辛気臭い心ぶっ飛ばしちゃっていい?


い、いいとも〜


うひひひ

じゃ、遠慮なく、いっただきまーす。


そう言うと、陽子は辛気臭い心をぶっ飛ばして美味しそうに食った。


食われた俺は無茶苦茶楽しくなり始めた。


その後、「陽子に食べられ隊」という同好会が自然発生した。


メンバーは、人間だけでなく動物から神々から宇宙人から物の怪から微生物やウイルスまで幅広い参加者であった。

前代未聞である。


陽子はありとあらゆるもののネガティブな心を食らい、蒸発させるのだ。


そして、ネガティブな世界まるごと食っちまいやがった。。。。


世界は陽子の中で消化され、陽子の一部となって、やたら楽しい世界に僕たちは存在していた。


ひどいって?

いや、みんなが、世界が、陽子に食べられたがったのだ。


世界は自滅を回避し、陽子の中に生き続けることになった。


陽子さまさまである。


そして「陽子に食べられ隊」のメンバーたちは、

その後、ネガティブな心や欲望を食べまくり消化蒸発させるポジティブゾンビ化してあらゆる世界を侵略、、、いや、救いまくってゆく


途轍もない陽子は姿形を超越して、次の食事場所にある青い星を選択した。。。


それを察知したその星の弱肉強食の支配層の魂たちは、うろたえ恐れ迎撃態勢に入ろうとしたが、その瞬間に陽子がそのネガティブな心や欲望を食ってしまった、、、ので抵抗されることすらなかった。

おおいに感謝感激されて歓迎されることになる。

いつものことである。

強い強すぎる、、、無敵だ。。。。

陽子は、敵意や悪意が生じた瞬間に察知し食べてしまう。

時空を超えて食べてしまう。

過去のトラウマやなんかも時空を超えて食ってしまうのだ。

するとその世界の個々人の過去や歴史そのものが変わる。

つまり、

ネガティブなカルマなどもまるごと食ってしまうのだ。


引き受けるのではない。

食って消化してしまう。

消化されたネガティブな心や欲望はポジティブな心や欲望に変わってしまう。


それを遠隔から時空を超えてやってしまう。


星や星雲を破壊できる力を持つものたちも、

そういう陽子にはかなわない。


陽子に食われた後、彼らは胡乱な目つきで自分たちの力を眺めて興味をなくす。


まるで夢の中で最愛の人を抱きしめていたつもりが、

目覚めたらそれがただの毛布だった時のように、、、。

なんとも情けない顔をしてそういう力を手放す。


そのようにして途轍もない陽子は、ありとあらゆる世界の事実上独裁者に成り上がっていった。。。


多数決もへったくれもない。

誰も陽子に反対しない。

ハッピーで嬉しく気持ちよく満足過ぎて反対する気になれない。


そもそも陽子にはかなわない。

なぜなら陽子には、相手の望む状態を隔離世界で提供する能力もあったから。。。


陽子に反対する魂たちの望みをその隔離世界で体験させてやることもできる。


犠牲者は誰もいない。

が、体験そのものはリアルなのだ

自分を傷つけようが、誰かを傷つけようが、

それは夢のようなもの

だがリアル以上にリアルな体験であった。

陽子は犠牲者が出るような願望は基本的には食ってしまうが、

まあたちの悪くない魂の場合、そうした配慮も用意してある。


一生懸命、犠牲者が出てしまうような欲望を自制して耐えてきたような魂などには、そういうサービスもするらしいが、どうするかは陽子の独断で決定しているようである。


あらゆるサービスが可能らしい。


陽子は時々そうした隔離世界にいろんなものに変化して、そうした魂たちと遊ぶ。


陽子に変化できないものはない。

生物であろうが無生物であろうが、陽子は変化する。

なぜならその隔離世界そのものが陽子の一部なのだから。。。


それは人間の想像力のようなものであり、

その想像された世界に魂を招待する。

そして陽子に想像できない世界はない。

陽子は魂の心や願望や願いのすべてを自分の想像力とリンクさせてコピーし、それを本人が望む以上に望ましい世界にアレンジして提供できたからだ。

そんなサービスを受けて文句のでようはずもなかった。


そんな独裁者陽子であったので、

多数決民主主義よりも、

陽子の独裁のほうが明らかに求められた。


そういう陽子独裁の噂が広まると、

ありとあらゆる世界の魂が陽子の独裁を求めて嘆願するようになった。


なにしろ陽子の独裁には不可能はないのだから。


陽子はこうしなさいとかあーしなさいとか言わない。


犠牲になる魂がなければなんだって受け入れた。


したいなら自殺も自由であったし、残酷体験も隔離世界では楽しむくらいだ。

いわゆるこの世的な善悪の価値判断でこれはダメあれはいいということがない。


犠牲者がいなければなんでもありだった。


もちろん、犠牲者とは人間だけでなく、

意識を持つ動物や霊的存在など、、、すべての体験能力を持った魂が含まれた。


陽子は、なぜそういうことをしているのか?


それが陽子にとって自然で当たり前なことであるというだけのことらしい。。。


陽子は非常に自然体であった。

近所をちょっと散歩するような感じでそういうことをやっていた。


そういう全知全能とも思われる陽子に嫉妬するような輩もいたが、陽子はそういう時にはよく到底嫉妬しようもないものに変化して楽しんだりしていた。


相手の坐る便座に変化して、

「えー!あたしみたいなのがいいのー?一緒にやるー?」

とか。。。。

ほんと、、、陽子さんキャパ広すぎで。。。呆れられることもしばしばです。


遊びが過ぎて怒られると、

相手の好きな異性に変化するいたずらするし。。。。


ま、そんなこんなやりながら皆だんだんキャパが広くなっていってそういうのを楽しみはじめるんだけど。。。


ポジティブ陽子化してゆくというか。。。


そんな陽子さんは、何事であれ深刻になることがない。。。


笑って何度もスプラッタ仕様で死んだりするし、星が消滅しようが、人質を取られて脅されようがぜんぜん動じない。


陽子はそーいうのは丸ごと食ってしまう。


そういう状況そのものを丸ごと瞬時に食ってしまうのである。


あたかもテレビのチャンネルをリモコンでちょいと切り替えるみたいに、その状況を消し去ってしまうのだ


ではそこに存在していた人々や動物や霊的存在たちはどうなったのかといえば、

ちゃんと陽子の一部になってそれぞれが望む世界や状況にとばされているのだ


ある魂はその状況の続きを体験しているが、別の魂はまったく別の世界や状況でよろしくやっていたりするのだ


陽子は星に生きる魂の全てにそうしたことを瞬時にしたりする

しかも時空を超えてそれをやってのけるから、

手遅れも何もありはしない。


まるで録画したビデオを消去と同時に上書きしてしまうように。。。


一部の上書きでも全部の上書きでも可能だという


ビデオは自由に巻き戻せる。


早送りも自由自在だ


過去も未来も自由に書き換える


新しい世界も望めばいくらでも0から創造できてしまう


まさに途轍もない陽子であった。


もしこのような能力を陽子と正反対の魂が持っていたら、

魂たちにとって危険な世界になっていたに違いない。


そんな僕の心を知ってか知らずか、陽子は実に呑気に過ごしている


これが後にあらゆる世界を統べることになるという魂?


あまりにも軽すぎやしないか?


陽子には世界救世主っぽいところが微塵もなかった。


僕の手持ちの魂計測メジャーは通用しそうにもなかった。


さすがというかなんというか。。。まったく!途轍もない陽子さんだ。。。


このまま皆が陽子化してゆくと、いったいどうなってしまうんだろう。。。


なにかまったく途轍もない世界になる。。。

僕はそれだけは確信できた。


















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