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陽子さんの付与魔法 クリアー と僕と俺と私と私達、、、の調査隊

陽子さんの付与魔法 クリアー


陽子さんの隔離世界では、個々別々に望みの世界に隔離されてしまう。


それはそれで、なんでもありで多いに喜ばれていた。


だが、隔離状態ゆえにマンネリ化するケースもあった。


そうならないために、陽子さんは、いろいろなお茶目ないたずらをしてくれているようだが、一応、建前上、なんでもあり をうたっている手前、陽子も陽子なりの遠慮をしているようだ。


そこで、陽子は、隔離世界の魂が、望むならば他の魂たちと 遊ぶ という選択肢も用意していた。


ただ、その場合、他の魂に酷いことをしでかしてしまう可能性もあったので、陽子は、クリアー という付与魔法を付与していた。


付与魔法 クリアー とは、望まないあらゆる状態や関係性から、瞬時に 解放され、望まなかった状態や関係性以前の状態に戻れる魔法のようなものである。


つまり、陽子の世界で他の魂と関係性を持つ場合、あらゆる魂は、この クリアーという魔法を いつでも自由に無制限に使えるようになる。


なんでも自由、ではない。


あくまで、この能力は、自衛手段であり、他の魂の状態を操作することはできない。

ただ、自分の望まない体験や関係性を なし にする つまり クリアーするのだ。


その後、また、自分の隔離世界に戻るもよし、関係性を相手と話し合い、やり直すのもよし、別の魂と双方合意の上で別の関係性を持つのもよし、であった。

さらにどうしていいかわからない、、、途方に暮れた、、、、ような場合は、陽子に相談する という選択肢まで用意されていた。

相談すると、手取り足取り、かゆいところに手が届くようなレクチャーを受けれるらしい。ま、陽子のことだから、、、お茶目ないたずらしながらなのであろうが、、、、。

そのイタズラを目当てに、わざと 対して悩みもないのにクリアー をして相談する者たちが、最近激増しているらしいが。。。

俺が、それはルール違反ではないか? ある魂に問うてみたところ、

目を泳がせながら、、、

「い、いえ、悩みが、本当にあるんです!どうしても、陽子さんのイタズラをうけたくてしょうがないという悩みがあるんです!」


とのことであった。


どうやら、イタズラ依頼をして、待っていることができなかったらしい。


俺が、彼らのイタズラ依頼を溜め込みすぎたからか、、、そろそろ、この膨大なお荷物を、陽子に渡さねばならないな。。。と俺は思った。


今度、陽子にお茶目ではないちゃんとしたイタズラもたまにはするように言っておく方がいいかもしれないな。。。


これでは、陽子のイタズラ中毒者ばかりになってしまうだろう。。。


陽子のイタズラ中毒に クリアー を使うこともできるのだが、困ったことに、

中毒すれば、まずクリアーしたがらない。。。


いいことなのか、悪いことなのか、といえば、、、別に悪いことではないのだろうが、、、、まあ、みんなそれを楽しんでいるんだから、ま、いっか、とも思う。


そういうわけで、陽子の世界で他の魂と安全に交流する ことができる。


まあ、とはいえ、陽子さんは、なんでも見境なく、、、特にどうしようもない、、、魂に特化して、、、食ってしまうんで、いろいろやばい魂もいるらしく、他の魂との交流には、陽子の許可がいる。


どうやら、陽子さんに食われた世界の毒のような者たちは、時空を超越したなんでもありの陽子さんの世界の中で、思いっきり楽しませられながら毒を抜かれて陽子化してゆくらしい。。。。


そのようにして、陽子さんは、あらゆる世界とそこに存在するあらゆる魂たちを、あの手この手で、救っていた。。。


なんということだ。。。

これは、、、、今の俺には到底まねできることじゃないなと思った。


嫌な体験のクリアーは、ここでは自由に何度でもできる だが、、、陽子のようになるには、あらゆる魂の望ましい未来の可能性を深く理解するとてつもない修行が必要だな と思った。


あらゆる魂の最高の未来を、あまねく照らし出現させる太陽のような存在、、、それが陽子の本質なのだろう。

陽子は、魂たちの心の闇を消し、そこに光をもたらす。。。


たったひとつの光であっても、それは、一瞬で、世界全体を照らす。

それが、真の光であるならば。。。


陽子は、魂の闇を消してしまう。。。


闇の中で、植物たちが育つことが不可能なように、闇は、世界の未来の可能性を消してゆく。

光は、そこに無限の可能性を生み出す。。。


俺は、魂が闇に進むのも、光に進むのも、それぞれの魂の自由だ と思っていた。。。

だが、、、陽子は、陽子さんは、有無を言わさず、あらゆる魂を取り込んで、光を見せる。。。。

魂たちが、どうしても闇を望むなら、彼らに取っては闇と見える光すら見せてくれる。。。。


俺は、陽子の世界を見守ってきて、俺の考え方に疑問を感じ始めていた。


彼らは、、、本当に闇を望んでいたのだろうか?

彼ら自身は、そうだ と言うかもしれない。。。

だが、、、本当にそうだったのか?

本当は、そうではなかったのではないだろうか?

ただ、本当の光を知らなかっただけ、、、ではなかったか?

本当の光に照らされたことがなかっただけではなかったか?


本当の愛というものが、本当の光と同義であるならば、

彼らは、本当の愛を、ただ、今まで知らなかっただけであったのではなかったか?


俺は、その真実を、自分で確認したくなった。


そろそろ、陽子の世界に 「参加」してみようか と俺は思った。


観察者 見学者 見守る者 としてではなく 参加者 として。


なに、受け入れがたいことがあれば、いつでも自由に クリアー できるのだしな。。。


そうだ、今のこの俺の精神状態に いつでも戻れるように クリアーを自動設定しておくか、、、


そして、陽子の世界でのすべての体験の記憶も残しながら、、、


そのために、俺は、俺の意識を二つに 分離させた。


俺である俺と、俺である僕と、、、、さらに必要なら必要に応じて、、、

俺は、自分の意識を分離した。


そして、俺は、俺 と 僕 に分離し、、、さらに、それを見守り観察する 私に、、、

自分の意識を分離した。


これによって、今の自分を残しながら、陽子の世界を生き、さらに、その双方の自分を見守る態勢を作り出した。


これで、より意識世界全体を理解できるようになるはずだ。


陽子の世界を旅する僕の記憶 と 以前の俺の記憶 は、私が、バックアップする。

同時に、陽子の世界を旅する僕がクリアーしたり、されたりしたあらゆる記憶も、それを見守る私が、バックアップする。


さらに、私は、念のために、この私のあらゆる記憶を、 あらゆる世界に 散らばっている 私たち にバックアップするようにした。


これで、この意識世界が完全消滅でもしない限り、俺と僕と私と私たちの全記憶、全理解は、消滅しない。


現象としての俺や僕が、消滅しても、それは、私や私たちの中で、再生できる。


そう、望む部分だけ自由に。。。


私たち、、、、の意識世界は、そうした自己防衛、自己保存システムを持っていた。

そして、成長システムも持っていた。


ある時に、私たちは、私たちの存在する世界のあらゆる体験を味わい、望ましい体験とそうでない体験を調べ、より望ましい意識世界にするために、意識世界全体に拡散したのだ。


だが、私たちは、そろそろ、あらゆる可能性の探索から、その統合へ向う必要を感じることになった。


陽子 という 意識存在に 私たちが出会うことによって。。。


私たちは、未熟 であった。。。

陽子 によって、それに気がつくことになった。


今までは、手当たり次第に、あらゆる可能性を、試していた。

良い者も、悪い者も、なんであれ。。。


だが、そのために、私たちは、おびただしく 傷ついた。

そして、自分自身の存続すら危うくなってしまった。


私たちは、自分たちで創りだした数々の本能や欲望によって、その滅びへと進んでしまっていることに気がついた。


自分たちが創りだした食合いや排他的生き残り競争などの自己否定的なシステムに、自分たちが捕われて、抜け出せなくなっていた。


自分たちが、創りだしたということも忘れ、それに実も心も束縛されてしまったのだ。


私たちは、自らを自縛し、自爆しかけていた。


陽子の独裁 がなければ、 この世界は、終わっていた。


そして、私たちは、今後は、陽子 のごとく 存在する必要を感じたのだ。


私たちは、そのために、自分の意識を分離し、陽子の世界に、自分の意識を送り込んだ。


陽子は、このスパイ行為とも思われかねない私たちの行為に、


「へー、あなたなかなかやるじゃなーい」


と、いたずらっぽく笑って喜んでくれた。


僕は、今、ワクワクしながら陽子さんへのイタズラ依頼書を、書いている。


ああ、僕もこうなるのか。。。。。


そうなるとは思っていたけどね。。。


僕は、「陽子さんに食べられ隊」に入隊してしまった。。。


ようし! こうなったら、全力で、食べられよう。

そして、僕も、陽子さん化するのだ!

僕は、もう、やる気まんまんだ。

これは、とてつもない生き甲斐だ。。。すごいよ陽子さん!


ああ、うらやましそうに、陽子さんの世界の外に取り残された僕の分身体が

見ている。。。


やっほーい!だ!

最高だぞ。これ。。。


僕たちは,今まで一体何をやってたんだろう。。。

こんな可能性があったのに、、、一体、何を目指していたんだろう。。。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


陽子の世界の外に取り残された私たちの魂が、何かぶつぶつ言っている。。。


おい、あいつ、浮かれ過ぎじゃないか。。。。


ああ、、、、確かにな、、、しかし、なんか、嬉しそうじゃないか。。。


おい、お前、まさか俺を裏切って、あっちに行こうとか思ってんじゃないよな。


え、、、いや、まさか、そんなことあるわけないじゃないか。


。。。。それ、嘘だろ。


なんでだ?


な、なんでって、お、俺は、あんな世界になんか行きたくないぞ、本当だからな!


お前、、、、。


なんだよ。。。


素直になれよ。


な、、、、何言ってやがるんだ!お前だろ、行きたがってるのは!


あー、わかったわかった。ほら、陽子さんのイタズラが、はじまるぞ。


な、なに! 


二人は、一番大好きなテレビ番組が始まる時よりも、そわそわしながら、

心のスクリーンに映し出される陽子さんのイタズラに意識を向けた。

まさに、手に汗握る、、、、風情だ。


すでに、陽子さんのイタズラを見ることは、私たちの最大の楽しみ行事になってしまっていた。


いつも予想を裏切って笑わせてくれたり、楽しませてくれるのだ。。。


こないだは、

陽子さんのゲンゴロウ化を見た。

分身体の私が、散歩していて、ふと池があったので覗いてみると、そこでは、なんと陽子さんが、ゲンゴロウと遊んでいたのだ。

顔だけ陽子さんで、体はゲンゴロウになった陽子さん。。。

くるくるとゲンゴロウたちと、追いかけっこをしていた。

私の分身体が、

よ、陽子さん!何やってんですか!と問うと、

「遊んでんのよー、あんたも一緒に遊ばないー?」と返事がある。


いや、、、いくらなんでも、ゲンゴロウはないでしょう、、、陽子さん。。。

と僕は思ったが、陽子さんのお誘いには抗えない。。。


僕は清水の舞台から飛び降りる気持ちで、池の中に飛び込んだ。


。。。。。。


ああ、、、、楽しい。。。


飛び込んでみてわかる、この不思議。。。。だ。


楽しいのだ。無性に。。。


くるくると、、、僕もゲンゴロウ化して、陽子さんを追いかける。


時々、羽を羽ばたかせたり、アクロバットを披露する陽子さん、、、

水中もすいすいと。。。。


僕は、それまでそんな虫けらの世界など大したものではないと思っていた。


だが、、、、これは。。。。この楽しさは、、、一体なんだ!


目からうろこ、、、だ。


食事のために、魚とか捕らえねばならないのか、、、ちょっと不安になったが、

いっこうに腹が減ることもない。。。

ああ、そうだ、ここは、陽子さんの世界だった。。。

いわゆるいいとこ取りというわけだ。

楽しめる部分だけいろんな世界から取り入れて、それを複合させる、、、陽子さんの技だ。


このとてつもなく楽しい気分も、多分、どこからか調達してきたのだろう。

しかし、、、なんという組み合わせ方をするんだ。。。あまりにも奇天烈だ。


僕は、そういう体験をしながら、自分の捕われた心、元の世界での常識というものを、、、忘れていったのである。。。


僕にはそうして、ゲンゴロウの友達もできてしまった。


陽子さんは、ゲンゴロウたちに、ゲンヨウコさん と呼ばれている。


陽子さんは、そう呼ばれて、嬉しそうだ。


こうして、僕は、時々、ゲンゴロウたちとも、遊ぶようになった。


そういう友達が、次から次へと出来て、僕は遊びまくっている。

ここでは、あらゆる元の世界の生命だけでなく、あらゆる空想可能なキャラクターと、、、、そのような遊び友達になってしまう。。。

自分が空想できそうもない、すごいキャラクターまで出てくる。。。

そういうのは、僕のイメージできる範囲外だから、ああ、陽子さんのイタズラだとわかるのだが。。。

それがまた、素晴らしい遊び友達になるのだ。。。



遊びが、仕事、、、、いや、ここには、遊びしかない。。。


僕は、そう、外の仲間への報告書に記録した。


僕は、そんな風に陽子さんから学び、成長していくことになる。。。




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