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陽子さんは、なんと食べられて喜ぶ

陽子さんの隔離世界の調査報告


陽子さんの隔離世界では、僕たちの想像力の及ぶ範囲で、あらゆる不可能は可能になる。


山が生き物のように徘徊する世界がある。。。

星が、、、芸術的な形であったりする。。。

意思だけの世界もある。。。

子供の落書きみたいな世界もあった。。。

いわゆる現在存在する漫画や映画の世界は、すべて存在させれる。。。

そのバリエーションも、いろいろアレンジできる。。。

シリアスバージョンにも、コメディバージョンにも、かわいい感じにも調整できる。。。

あらゆる小説のシーンも参加者のイメージ通りに出現する。

飲み食いする必要がない世界もあるし、

セックス体験が、心だけで実現するような世界もある。。。

沈黙の世界があり、とんでもないにぎやかな世界もある。。。


まるで、統一性のないカオスな世界が満ちているようにも感じるが、陽子さんが、そのすべての世界の管理者ゆえに、それはあらゆる魂のパラダイスとなっていた。


陽子さんの自然な管理判断のもとに、求められる世界が、求める魂へ提供されるのだ。


隔離世界の障壁を超えた魂同士の関係性は、陽子さんの許可がなければ、実現不可能となっていた。


心からの合意が成立し、なおかつ、陽子さんの許可がなければ交流できない。

交流できないといっても、別にそれで不都合はないのだが。。。

では、陽子さんは、一体どんな基準で許可したり、しなかったりするのか、、、

調べてみたところ、以下のようなことがわかった。


いくら魂同士での心からの合意が成立していても、それが勘違いの合意であったり、魂が、自分や相手の状態を正しく認識できていないような場合には、許可されないようである。


つまり、管理者、保護者としての配慮ということらしい。

そうした陽子さんの管理によって、

例えば、素敵だと思えた相手に嬉々として出会ってみたら、思っていたような相手では実はなくて大変に嫌な思いをしてしまった、、、というようなことが生じることがほとんどなかった。


商品をぱっと見て、衝動的にいいなと思って購入したら、全然、思っていたようなものでなくて、酷いものであった。。。というようなことがないのだ。


それでも許可をどうしても求めるような場合は、許可されることもある。

だが、その前に、陽子さんが、化身して、その相手とほとんど同じキャラクターを演じてみせたりするらしい。。。


まあ、たいていは、その時点で、ほとんどの魂が、許可要請を取り下げることになるのだが。。。


それは、あらゆる魂の真実を深く知る陽子さんだからできることであった。


これは、陽子さんの安全試食システム、、、と呼ばれている。。。


そういうわけで、隔離世界間での交流はできるが、そこに酷い悲劇が発生することは、ほとんどないということがわかった。


あらゆる世界に陽子さんを求める声が上がるのは、こういうことだったのか、、、。


僕は、だんだん理解しはじめた。


とても僕にまねできる芸当ではない。


陽子さん以外に、一体誰にそんなことができるのだろう。。。


僕は、今まで陽子さんのしているようなことを、自然に瞬時にできそうな人物に出くわしたことがない。


僕は、そして、陽子さんの存在価値を、改めて噛み締めるのであった。


かめば噛むほど、調べれば調べるほど、とてつもなく素晴らしい味の出る陽子さんであった。


陽子さん、、、あなたは、まるで、スルメのようだ。


ああ、陽子さんのだじゃれが予想される。。。


と思ったのだが、、、また予想がはずされた。


目の前に、踊るスルメがあった。。。くねくねと。。。火にあぶられて、、、

くねっている。


陽子さん!悪ふざけは止めてください!


僕は叫ばずにはいられなかった。


食べてしまいたくなるじゃないですか!


どーぞ と、、、陽子さんの楽しそうな声が脳内に響いた。


僕は、食べることができなかった。


この意気地なし、、、と言われてしまった。


後に同じようなケースで、化身した陽子さんを食べた魂の話を聞く機会があった。


その時は、木の実に化身していたらしい。。。


食べた瞬間、彼は、ありとあらゆる魂と一体化したらしい、、、

言葉では、到底説明できない体験だったらしいが、、、言葉にするならば、そういう感じだったらしい。。。


ありとあらゆる世界のすべてが一瞬で把握できる状態になったとも言う。。。

時空を超越した体験だったとも言う。。。

体験しないとこれはもうわからないだろうとも言われた。。。


僕は、その話を聞いて、次のチャンスがあれば、陽子スルメを食べてみよう。。。と思った。


その瞬間、

どーぞ と、、、脳内に聞こえた。。。


目の前に、陽子さんスルメがあった。。。くねくねと、、、。


掴んで、、、口に投げ込んだ。。。


僕は、言葉を超えた体験を理解した。


やったー!と陽子さんは、僕の中ではしゃいでいる。


そこはかとない達成感があった。


食べられて喜ぶ陽子さん、、、なんというキャパシティの広さだろう。。。


計り知れない陽子さんであった。




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