陽子さんの世界会議乱入事件
陽子さん、世界会議に乱入事件
これは、ある星のある世界会議でのお話である。
しかつめらしい大統領やら総理大臣やらが一同に集まっている世界会議に
かの陽子さんが、乱入した。
そこでは、武力の持ち合い問題やら、領土問題やらややこしい国家同士の利害問題について、各国が互いに相手国を罵倒しあう最悪の事態になっていた。
世界は、そのまま世界大戦に突入すると予測される状況であった。
すでに、各国は、臨戦態勢に入り、潜水艦やら空母やらが配置されていた。
爆撃機が、飛び立つ準備もされていた。
ミサイルの安全装置もはずされていた。
ある大国が、会議はみせかけで、はじめから、宣戦布告するつもりだったからだ。
そこに、陽子さんが、ひょっこりと現れてしまった。。。
会議は、国際テレビで生放送中であった。
各国のお偉方も、それを見ていた世界各国の市民も、あっけにとられた。
ひょっこり会議のテーブルの上に現れた陽子さんは、すけすけ水着姿であった。
(ああ、陽子さん!また、やるんですか。。。)
その陽子さんは、そのまま何やらわけのわからない自作のなんたら節だとかを、踊り始めた。
ガードマンたちが、職務上の義務感から、陽子さんを取り押さえようと、、、思った瞬間、陽子さんにその心を食われた。。。
ガードマンたちは、何やらわけがわからなくなり、陽子さんと一緒にそのなんたら節を踊り始めた。。。
それを見た各国のお偉方たちは、とてつもないクーデターやテロ行為が発生した、、、と思った、、、瞬間、、、その心も陽子さんに食われた。。。
陽子さんは、悪い心をパクりと食べてしまうのだ。
心を食われた者たちは、その心が陽子さんのすることなすことと同調してしまうのだ。
いつも、それって反則技みたいな能力だと思う。
というわけで、、、、世界会議は、てんやわんやの大騒ぎとなっている。 というか宴会だ・・・
当然、各国のお偉方たちも、一緒に踊り始めた。
背広やネクタイや、ズボンまで、脱ぎ捨て始める。
なにせ、陽子さんが、すけすけ水着なのだから。。。と。
陽子さんに、皆、同調したくなるのだ。
これぞ、裸のおつきあいというものか。。。
罵倒し合っていた敵国同士の大臣たちが、ほとんど裸同然で、肩を組んで陽子を囲んで恍惚とした表情で踊っている。。。
そして、世界中のテレビ映像に、その実に、はずかしくも感動的な光景が、広がった。。。
それを見ていた世界各国の市民たちは、頭の中が真っ白になった。。。
世界大戦を準備していた軍隊のお偉方たちは、その光景が信じられなかった。
そして、我々、軍隊は、どうすればいいのだ、、、と思った、、、
すでに宣戦布告することを事前に告げられていたし、攻撃準備万端であったのだ。
だが、、、目の前に広がる光景は、あまりにもこの世のものとは思えない何かであった。
そのまま、攻撃をはじめるべきか、否か、、、軍隊の司令官は、しばし懊悩した。
が、軍隊の司令官として、何かしらの判断を下さねばならない。。。
命令は、絶対に守らねばならない、、、そう判断した、、、瞬間、、、その心を陽子が食った。ぱくりと。。。
陽子は、時空間を超えて、悪い心を感知し、その心を食えるのだ。
攻撃準備していた軍隊のメンバーすべてが、ことごとく戦おうとする心を陽子に食われて戦意を完全に失った。 それは、一瞬の出来事だった。
そして、陽子さんにその心を食われた司令官から攻撃停止命令が送信された。
なぜだか、その絶対解読不可能のはずの軍隊の攻撃停止の電報の最後には、「つまらないことやってないで、みんなで踊りましょう! 陽子より」と記されていた。
世界会議は、形容しがたい感動的なダンスパーティになっていた。
その光景は、それを見るものすべてにとてつもない感動を与えた。
誰もその感動に酔っぱらってしまっている、、、、だがなぜ感動するのか誰もわからないのだが、、、。
それゆえに、その世界会議の映像を見ていた市民たちも、おのおのの場所で、踊り始めていた。
真っ白になった心の空白に、陽子が、入り込んだのだ。
つまり、陽子菌に犯されたのだ。
陽子菌は、あらゆる世界における最高クラスの善玉菌だ。一般市民に、あらがえるはずもない。
そして、人々の魂の性質は、その陽子菌によって、腐敗ではなく発酵をはじめ、、、何やらより良いものに変化してゆくのだ。。。
そして、その事件をきっかけにして、世界から軍隊が消滅した。
軍隊を持ち、戦争をしようと考える者たちの心を陽子は、問答無用で、すべて食ってしまったのだ。
一瞬で、、、。
その事件をきっかけにして、あらゆることが、スムーズに平和的にうごきはじめた。
いつものことだ。。。陽子独裁。。。すでに結果はわかりきっていた。
失敗のあり得ない陽子の独裁だ。世界侵略行為だ。だが、その侵略行為で嘆く者が、一人もいない。
その世界の雰囲気は、とてつもなく変化した。
その世界のネガティブな悪い心がすべて陽子に食われたのだから。欲望も本能も全部、、、陽子に食われて一瞬で消えたのだ。
民主主義もなくなった。選挙など時間の無駄と、、、誰もが思うようになったからだ。
話し合うようなことなど何もなくなった。
皆、陽子に出会ったその時点から、最高に満足な状態となったからだ。陽子独裁に不満などみじんもない。
悪い願望や欲望や本能が全部消えてしまったからだ。そうなると、、、、文句を言う者もいなくなるのだ。
何かを変えたいとか、思うこともなくなった。
他の人や動物を殺したり、いじめたりする心がその世界から完全に消え失せていた。。。
人々は、陽子の意識が中継したテレパシーで意思疎通していた。
その結果、言語の違いという問題も消滅した。
文化や価値観の違いという問題も、陽子文化一色になって、消滅した。
一色とはいえ、陽子文化には、あらゆる文化が選択肢として内包されちゃんと保存されていた。
もともとの世界をどうしても求められた場合は、陽子さんの絶対能力に守られた隔離世界内で、元の世界での生活も選択できた。
つまりは、、、元の世界が、完全に消滅したわけではなかった。
陽子さんは、食べたものを、ちゃんと再生できるように保存していた。しかもそれぞれの魂に応じて最適化までしてくれた。不要な部分は、消化し、必要な部分だけ残して提供できたのだ。
それでは不満が出ないわけだ。
陽子さんに心を食われることで、あらゆる魂が、自分をある国家や文化や民族や宗教や価値観の一部ではなく、いろんな文化や価値観を自分の選択肢と理解する意識状態になった。
そうした文化や宗教や価値観などは、陽子独裁体制のもとでは、自由自在に選べる何かに変わったのだ。
ほとんどそれらは料理のようなものとなっていた。それぞれが、食べたいものを食べればいいじゃないの、、、というわけだ。毒はちゃんと無毒化しておいたから、安心して自由に好きなのを食べて頂戴ね、、、と、、、
生命の種のレベルでも同様な変化が生じた。
人々は、自分をいわゆる人間である、とはもはや思えなくなった。
人間も選択肢であり、他の生命種の、つまりは、鳥や馬や牛やゴリラや象やトカゲやカエル、、、なども自分の選択肢であると理解する意識状態になった。
精神体のような存在になっていた。
そして、なんと、人々は種の違いを超えて、テレパシーで意思疎通できるようになっていた。
犬と人間が、ゴリラと猫が、、、くじらと馬が、、、、普通に意思疎通していた。
それは、何か悪いものではなく、より自由な魂の解放であった。
人々は、陽子事件をきっかけにして、人という種を超えたのだ。。。
それは、太陽の光の出現が、長く続いた闇を一瞬で消し去るように、一瞬でそのように変化した。
資本主義なども、当然、消滅した。
貨幣経済も消滅した。
その星の魂のあらゆる必要は、陽子がすべて満たしてしまったのだ。
それゆえに、相互依存の仕組みも消滅した。
生命の弱肉強食の仕組みも消滅した。
自分の意識の中に、無限の隔離世界を出現させ、
世界の法則さえ、変えてしまう陽子だ。。。それくらい簡単なことであった。
そして、やらねばならない労働もなくなった。
今までのあらゆる労働は、当人がやりたければ、楽しみとしてやればいい何かになった。
あらゆる労働は、そうして、いろいろとある趣味のひとつになった。
陽子が踊るのが好きだったために、様々な踊りが流行した。
人々のほとんどが、自分で歌や音楽や踊りを作りはじめた、陽子のように。。。
そして、、、自作したそれぞれの歌や踊りを、楽しく歌い踊りはじめた。。。
その踊りは、肉体次元だけでなく、精神体でも踊られるようになった。
人々は、いや、動物たちも、肉体を離脱して、霊的な体でダンスパーティをしはじめた。。。
そのほうが、踊りのバリエーションが広がってたくさん楽しめるからだ。
それは、とてつもない世界変化であった。。。
まあ、これが、終末兵器戦争によって破滅する予定であった星の歴史を書き換えた「陽子さん、世界会議乱入事件」のあらましである。
その後も、この世界は、ひたすらエンドレスに楽しみに満ちたものになってゆくのだが、それは、また、別で報告するとしよう。
また、やっちゃいましたね、陽子さん。
彼女のカルマ手帳には、とてつもないプラスが、エンドレスに増えてゆくのだが、、、どこまで増えるのだろう。
ちょっと、分けて欲しいよ。。。僕は、ひとりつぶやいた。
ん?
そうつぶやいた瞬間、僕は、陽子さんの隔離世界に引き込まれた。
え? もしかして、僕、食べられちゃったの?