魔王は滅ぼされた。
魔王は滅ぼされた。
勇者のパーティーによって。
そしてパーティーは解散し、皆はバラバラの人生を歩むことになった。
皆高いステータスと多彩なスキルを武器に再就職について行った。
僕はパーティーの前衛高い防御力と高いHPを誇る戦士だった。
しかし、魔物を倒すならともかく人と戦う兵士として再就職するのに抵抗を感じ、田舎に引きこもり畑を作り農作物を育てる農家の道を歩むことにした。
今思うと、僕は農業をナメていたんだと思う。
勇者とともに魔王を倒すのに4年掛かった、それから4年経った今でも農業の道は極められない。
まだまだまだまだ沢山の経験と工夫と知識が必要だった。
そんなちょっと行き詰まっている頃、勇者が家に訪ねてきてくれた。
「いやぁ久しぶりだな戦士、おまえ同窓会にもなかなか来ないから心配になって見に来ちゃったよ」
勇者は強いだけではない、気配りのできるパーティーリーダーでもあった。
「ごめんね、作物の世話で長くここを離れるわけに行かなくてね。魔法使いみたいに転移魔法とか使えればよかったんだけど」
「いやいいさ、元気そうなんで安心したぜ。それよりここに来る途中見たんだけどここらの畑全部お前の?なんか凄い面積広かったんだけど」
「いゃぁー、僕さ筋力のステータスカンストしてるのだけが取り柄だったからね」
「それにしても凄いな、どんだけ耕したんだよw」
「うん、ちょっと工夫した鍬使っててね。これなんだけどツバメ返しの鍬って言って一振りで2回耕せるんだよ」
「まてまてまて、もしかしてツバメ返しの剣潰して鍬にしちゃったの?」
勇者は目を丸く見開いて口をパクパクさせてる。
「あと面白いのは鎌鼬の鎌なんてのもあるよ、遠くまで一気に草刈りが出来て凄い便利」
「まてまてまて、まてって嘘だろ」
勇者は僕の両肩を掴んでじっと僕の目を見る。
「まだある」
「よし農具にした物全部持って来い!」
ずらりと並ぶ農具の数々、日照り対策の雨振らしの杖なんかはそのまま使っていたけど、それ以外の殆どが農具として改変されていた。
勇者は顔に両手を当てて体をクネクネくねらせながら「おお、神よ」とか言ってる。
そして
「おまえ普通に農業やれよ、農地広げすぎるからこんなの居るんだろ。」
ちょっとキレ気味だった。
しばらくハアハアしてたけど、落ち着きを取り戻した勇者は
「まぁ、もう済んじまった物はしょうがないから、あとは何とかしとくけど」
「すまないねー勇者、なんだかいつも」
「それにしても農地広い割に質素な家だな」
下手したら魔法剣より安そうだと言いそうになったが、それは流石に飲み込んでおく勇者だった。
「うん、まだうまく育たなくて。大きすぎても小さすぎても形が歪でも売り物にならないからねぇ。ほとんどは売れなくて教会に寄付として持っていってるんだよ」
「そうか、農家ってのは大変なんだなぁ」
しみじみと語る勇者。
「ああ、今日泊まっていく?形はイマイチだけど新鮮な野菜なら沢山あるからご馳走するよ」
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パーラーラーラーパッパッパー
翌朝
「んじゃ、また来るぜ。一応まだ戦士最強なんだから魔王が復活したら呼ばれると思っててくれよ」
「うん、その時はしかたないねぇ」
「あと、次回同窓会するときは魔法使い使いによこすから来いよ」
「うんうん、かならず行くよ」
そう言うと勇者は戦士の家を背に歩き出した。
「しかし、大陸丸ごと畑ってやっぱやり過ぎだろぉ」
セリフの掛け合いで話を勧めれるよう落語を意識して書いてみました。
オチがちょっと突飛ですが、そこはご容赦ください。
また、誤字脱字などございましたらご指摘頂けると幸いです。
ここまで読んで頂きありがとうございました。