13歳少女失踪
天照沙希の中学時代の話です。けど関係ないです。天照が誰か気になる人は「超心理的青春」をお読みください。
ある小説のストーリーを変えたものですので、完全な自作ではないですのでご了承ください。
お前の大事な親友が見つかったらしいぞ、と三上くんに言われ、意味がわからなかった。私の友達で、発見されるような、路頭に迷う友人はいなかったから。
三上くんが、新聞を寄こしてくる。
毎朝、中学校に出勤する私は、まずコーヒーを淹れ、できるまでにタイムカードの所まで行く。カードを通す。それからコーヒーを持ち、自分の机に座って、新聞を開く三上くんのふざけた雑談に付き合う。毎朝はこんな具合だ。朝の七時前、私と三上くん以外はまだ誰も来ていない。これもいつも通りだった。
「十三歳、少女、失踪」と小さな小さな三面記事に書かれていて、その単語が目に入った。そんな細かく新聞を見ないあたしは、当然知らなかった。新聞を見るとしたら、天気予報とテレビの番組欄だけだし。
「報道規制か何だかわかんないけど、『失踪少女発見』なんて、失踪したことを載せてなかったのに、そんなこと書かれても意味ねぇよな」三上さんは指を鼻に押入れながら、文句を言った。「忙しいときに誘いをかけてくる女と同じだ。暇なときに、誘われないと意味が無いんだよ。なあ大香山、そう思うだろ?」
私はそれを聞き流す。新聞には名前が記載されていた。失踪していた人の名前だ。記事には、無事に見つかり、両親の元に帰ったと書かれていた。
やっと三上くんの言う、親友の意味がわかった。それは、私の知っている子で、2ヶ月前、転校していったあたしの教え子で、記憶の一番手前の引き出しに閉まっていた。
「私たち先生にとって、勉学を教え、1年のほとんどを共に過ごす子供達は、自分の友人のようなものよ」
それは学年主任の出雲先生が朝礼時に、よく口にすることだった。
出雲先生は、私のいる中学校では教頭と校長を含んでも最年長で、年に似合わない、青春映画のような言葉を恥ずかしがらず、口にする。もしかするとそういうセリフが好きなのかもしれない。
新聞を閉じる。なんとなく胸が痛む、私の大事な親友が失踪していたらしい。