漫才脚本「甥っ子からの手紙」
A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。
コンビ名は考えていないので☓☓としました。
A・B、ステージに上がる。
A「どうも~☓☓です!」
B「よろしくお願いしま~す!」
A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。
B「(観客に向かって)いやあ、皆さん。実は僕ね、大の子供好きなんですよ」
A「(観客に向かって)皆さん。これは別に、ロリコンのカミングアウトとかじゃないですからね。勘違いしないで下さい」
B「断らなくても伝わってるから! てか、お前がそういう風に言った方がかえってそれっぽく聞こえそうだからやめてくれないか」
A「僕としては、親切心のつもりだったんですけどねえ」
B、再び観客の方を向く。
B「で、僕には五歳になる甥っ子がいるんですけど、これがまたかわいい盛りなんですよ」
A「(観客に向かって)皆さーん! B君は至ってノーマルな人ですから、誤解しないで下さいねー」
B「だから、余計なフォローはいらないんだって! お前のその親切心、世界で一番迷惑な類の奴だからな」
A「そうかなあ。僕としては、おせっかいのつもりだったんですけど」
B「もはや親切心ですらなかったのね! はいはい、俺が悪うございました。で、この前も甥っ子と遊んで」
A「あ、そうだB君。一つ言うことがあるの忘れてたわ」
B「何だよ」
A「俺ねえ、実はB君の甥っ子から手紙を預かってきたんだよね」
B「何でお前が預かってんの?」
A「じゃ、今から俺が手紙を朗読してあげるからね」
B「無視ですか?」
A、服のポケットから手紙を取り出す。
A「読みづらいなあ……」
B「まあまあ。五歳児が書いた手紙ですからね」
A「えーっと、敬具」
B「手紙、逆さまなんじゃないの?」
A「おおっ。しまったあ」
A、手紙をひっくり返す。
B「てか、五歳なのに敬具とか知ってんだ。賢いなあ、俺の甥っ子」
A「少なくとも、B君よりは」
B「失礼だな」
A「じゃあ、今度こそ手紙読むね。心から感謝するがいい」
B「誰がするか、馬鹿野郎」
A「えーっと……拝啓、天国にいるBおじさんへ」
B「俺、まだ生きてますけど」
A「この前は、僕に遊ばれてくれてありがとう」
B「俺って、五歳児に遊ばれてたの?」
A「そのお陰で、畳の目を数えるよりも楽しい時間を過ごすことができました」
B「それって、クソつまんなかったってことかな?」
A「この間は遊園地に連れて行ってくれましたね」
B「はい。確かに連れて行きました」
A「子供と一緒になってはしゃぐおじさんの姿を見て、僕は『この人、頭大丈夫かな?』と少し心配になりました」
B「盛り上げるために頑張ってたんだよ! てか、甥っ子君はそんな目で俺を見てたの?」
A「あ、そうそう。遊園地ではこんなこともありました」
B「はいはい」
A「ジェットコースターに乗ろうとした時、僕は順番の前になって恐くなってしまい、やっぱり乗れない! とだだをこねてしまいました。僕と乗るために一緒になって並んでいたおじさんは、『いいよ、無理しなくて。俺一人で乗るからさ』と優しく言ってくれました」
B「ありましたねえ、そんなこと」
A「僕は一人、おじさんが帰ってくるまでベンチに座って待つことに。でも、すごい速さで走るジェットコースターを見て、僕はやっぱりジェットコースターは乗るよりも眺めていた方が楽しい乗り物だと思いました」
B「どうして?」
A「今にBおじさんの安全ベルトが外れて落っこちないかなーっと考えるだけで、どんな乗り物に乗るよりも楽しい気分になれたからです」
B「えっ! ちょっと、ひど過ぎない⁉」
A「遊園地以外にも、Bおじさんは色々なところに連れて行ってくれましたね」
B「はいはい」
A「例えば、映画館。最近幼稚園で流行っている、アニメの映画を観せてくれました」
B「喜んでたよなあ」
A「確かにアニメは面白かったけど、僕はそれよりもR―15のラブシネマが観たかったです」
B「何言ってんだ、甥っ子! 十年早いぞ!」
A「あとは、フレンチレストラン」
B「え? そんなとこ行ったかな?」
A「あ、違った。動物園でした」
B「どうやったらフレンチレストランと間違うんだろう?」
A「そこではまあ、何かまあそこそこ面白かったです」
B「特に思い出とかないんだね」
A「大好きなBおじさん。これからも、僕のいい金づるでいて下さい。敬具」
B「嫌だよ! 何だよ、金づるって。俺の扱いさんざんじゃないか」
A「追伸」
B「は?」
A「この手紙は、AがB君の甥っ子の気持ちになって書いたものです」
B「てめえが書いてたのかよ!」
A「まあまあ。そう怒らないでよ、B君。これはね、どっきりって奴よ。俺が甥っ子君に取材をして、その内容を元にして感動的なお手紙に仕上げたというわけ。どう? B君。感動して泣いちゃった?」
B「別の意味で泣きそうだわ! もういいよ」
A・B「どうも、ありがとうございました~!」