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リュウの飛ぶ街  作者: kim
10/19

知識と経験

 街および森にて


 教育者として失格なのは自分が一番よく理解している。

 先生はそう言った。

 スープの傍にいることで精一杯の自分が、情けないニンゲンだということもよく理解している。

 とも。

「スープには悪いけど、あたし、先生キライ。」

 涙目で言葉を搾りだしたあたしに対してだ。


 そんな自分自身を卑下するセリフを吐こうが、あたしには許せそうになかった。

「だったら先生なんて辞めてしまえって言うかい?

 そんなこと言ったら、世の中の八割の先生がいなくなるよ。

 教育ってのが成り立たなくなる。」

 詭弁だ。

「情けない自分でもできることは、歴史を伝えることだけだ。」

「それだって詭弁だ。」

 なぜ?

 アタリマエだ。王国に都合のいい歴史をつまんない授業でダラダラと垂れ流すのが教育というなら、そんなものはいらない。


 ある日の図書館でのデキゴトを思いだした。

 司書で歴史教諭である先生が、あたしが読んでいた本を取りあげた。

「ふーん、『幻想動物誌』ね。

 随分とマニア好みの本を読むんだね。」

 ええ、と手短に会話を終わらせたかったのに、先生は立ち去る様子がなかった。

「まだ、なんか御用ですか?」

「エルシアは歴史が嫌いかい?」

 唐突に尋ねられた。苛立った。


 先生。

 あたしは授業で教わる歴史が大嫌いです。

 なぜなら、真実は王国において隠匿されるべき情報で、王国に都合のいい情報のみを学ばされているからです。

 この図書室だってそうです。

 ホントは紀元前の記録だってあるはずです。

 紀元後に編纂された歴史書だって、もっといろいろな角度から綴られるべきです。

 開架に並ぶ書籍は王国が選定したもので、閉架の図書はすべて王国が管理隠蔽されています。

 閉架の図書を紐解けば、きっと王国は転覆します。

 しかし、それでは知識の発展は見込めません。

 過去の踏襲は発展を導きません。


 あたしは脳内でそれらの主張を処理した後、清楚に笑いかけた。

「誤解です。

 あたしは歴史になんら思いもありません。

 この本もたまたま見つけたので手にとってみただけです。」

「そうか。

 古代史の研究の一環だと思ったよ。」

 古代史の研究ってのは、あたしが入学の際に目的として志望動機に書いたものだ。

 なんでそんなことを知っているんだろう。

 先生というものは生徒の全てを知ってんのだろうか。

 だとしたら、研究職への推薦はありえないな。

 成績自体は中の上から、上の下辺りをさ迷っているから、学校を追い出されることはないだろうけど、危険因子としてみなされているかもしれない。

 あたしが閉架図書を閲覧できる日はきっとこないだろう。

 お偉方はそこまで愚かではない。


 だから、歴史は嫌いだ。


「だったら反対に訊こう。

 エルシアが言う歴史は全てウソかい?」

「全てではないけど、改ざんされてる。

 それに全てを語ってはいないでしょ。」

「半分正しい。

 改ざんはしていない。改ざんはしていないけど、全てを語らないだけだ。

 たとえば、王国にリュウはいない。

 大陸に竜はいないとは教科書のどこを見ても書いてないはずだ。

 だから、語られていないだけで、授業で教えられた歴史は真実ではある。」

 たしかに。

 試験勉強で何度も教科書を読んだから、それは覚えている。

「エルシアは勝手な解釈をしてないかな。

 公開されていない情報をきちんと調べない自分をさておいて、勝手に竜族がいないことにしてるのは、自分自身でないかとは考えないのかい。」

 たしかに、そうだ。

 あたしはスープの話を聞いて、自分の世界の狭さに気づいたはずだ。


「淋しいことだけど、先生の仕事は教科書の内容について、補則をくわえながら学生に説明することだ。

 真実の全てを説明することではない。

 おそらく次の教科書には、ドラゴンが何千年ぶりに王国に現れたと書かれると思う。

 そうしたら、僕はそのことについて説明しなければならない。

 それだけのことだ。」

 そうなのか?

「先生は、コドモが学ぶきっかけを作ることしかできないんだ。

 僕は生きることに関してもそうだと思っている。

 立ち上がるきっかけを作ることが、僕の仕事だ。

 コドモを助け、保護することではないと思っている。」

 そう、なのか?

「もちろん、これは持論。正しくないかもしれない。

 でも、全てを救おうとして、中途半端になって自分もコドモも壊すくらいなら、自分の力以上のことをするより、持論を貫き通すつもり。

 きっかけを作って、立ち上がるまで目を離さないまでなら、非力な僕にもできるから。

 もしかしたらいつか、僕も全てを救う能力を得るかもしれない。

 そのときは全力で救う。

 コドモたちが嫌いなわけでも、見捨てたいわけでもないから。」


 先生は先生であることに、ウソはついていなかった。

 自分の考えの全てを語っていなかっただけで。

「わかりました。

 だからといって、好きになれないですけど。」

「好き嫌いはまた別次元の話だよ。」

 夢ばかり語って、とグチっていたスープの気持ちがわかる気がした。

 でも、たぶんこの先生の言っていることも本音なんだろうな。

 で、理想と現実のギャップに苦しんでるのかもしれないな。


「行こう。

 日が翳ったら、僕と一緒のテントで野宿になるよ。」

「あたしに手をだしたら、スープにチクるよ。」

「それは困る。

 ケンカはしてるけど、まだ別れたわけじゃないから。」

 ようやく笑えた。


 それからの道中は授業の歴史ではなく、歴史学の講義をされた。

 されたというか、こっちから求めたカタチだ。

 授業はワザをサズケられるもの。

 学習はマナび、ナラうもの。

 学問はマナび、トうもの。

「たとえばね、ある技術があるとする。

 授業では、知識がゼロであることを前提に基本で、現段階普遍であろうモノを伝えていくことなんだ。

 その技術を学び、習うもしくは倣うことで、初めて自分の意思で自分の血肉としていく。

 しかし、それでは技術も知識も発展することはない。

 だから、学んだものに問うていく。

 それが学問。

 君たちがいる場所は、まだ授業だろ?

 だから、まずは入口に立つ手助けをする。

 それが教師なんだよ。」

 先生がそう言ったから、さんざん問うた。答えられないくらい。


 教師が想像以上に教科の事柄について知識がないことを知った。

 当然だ。

 もちろん知識量に差こそあれ、専門でドコの、イツの、ナニを学問してきたかで、知識量は違う。あたりまえのことだけど、教科書にわずかしか書かれていないからといって、その地域や時代になんら特筆されたコトが起こっていないなんてことはない。

 教科書上有名な事件は、単純に、現王国に関わりがあるから、割かれるページ数が多いだけなのだ。

 リュウについても、隠匿したいから、がすべての理由ではないことを知っただけでも、あたしの世界は広がった気がした。


「あぁ、ここだ。」

 気がつけば、森の奥地、目的の場所までたどり着いていた。


「いらっしゃい。話はスパイアさんから聞いているわ。」

 そのヒトは、森の奥、野生動物しかいない沼にいた。

 キアナイト・ヴィーグルは沼地に住むリュウ族だった。

「あの…なんで、そんなに疲れてんですか?

 そんな遠かったですか?

 ヒューマン族の体力とか知らないからですけど。」

「あはは、そんなんじゃないの。

 あ、あたし、エルシア・ライネージです。」

 先生は名乗らず、小さく頭を下げただけだった。

 なるほど、スープのカレシであることは紹介済みなんだ。

「よろしく。あなたのことはスープから聞いてます。

 さんざんカワイイって言ってたから、どんな方かと思ったのですが、ウワサ以上の美少女ですね。」

「はぁ?

 えっと…いえ、彼女の評価は話半分にしてください。」

 なに語ってんのよ、あの娘は…


「スープから依頼されてたのは用意できてるわよ。」 

 そう言ってリュウ、たぶん水竜族もしくは青竜系ドラコニアの少女? が水辺を指し示した。

 森の葉陰から漏れてきた陽光がキラキラと水面で輝いていた。

 パシャンと魚が跳ねた。

 目線をキアナイトさんに戻したら、いつの間にやらヒューマン族の姿に変化していた。

 清流のように透き通った青い髪、うっすらと筋の入った薄藍で切れ長な瞳。

 同姓でも見とれてしまうようなたおやかさだ。


「そんなにスープって、ココに来てるんですか?」

 あたりの森を見渡した。

 隔世のような森だ。

 ピクニックがてらこられるような場所でもなさそうだけど。

 眉間を寄せたあたしをクスリと笑った。

 瞳は宝石のようだが、笑顔や仕草はウチらと同じだ。

「スープも忙しいみたいで、ココまで来るのは年に数回よ。

 これよ。」

 初めてのリュウ族に戸惑っていたところにさらに驚かされた。

 彼女が指し示したのは手のひらサイズの空色の板状のモノ。

 ヒューマン族に姿を変化させた彼女は、裏に昇り竜をあしらったテレパスを指し示していた。

 テレパスとは伝達魔法を応用した、遠距離で会話するためのツールのことだ。

 ってか、リュウはヒューマン族が開発した伝達ツールを使用するのか。

 教科書に載ることはないだろうな。


「ま、そんな感じ。

 はい。コレが約束のものよ。」

 手渡されたのは透明度の高い白青色をした宝石だった。

 その数十個。


 ヴィーグルの涙と称される宝石は、文字通りリュウ族ヴィーグル種の流す涙から精製される宝石である。ヴィーグル種は固有名が決まっていて、それは流す涙の種類による。

 事前調査で読んだ本の受け売りだ。

 つまり、鉱物学上藍晶石と分類される涙を流すから目の前の彼女はキアナイトが名前となっている。


「ホントは一個でいいって言われたんだけど。

 あなたとスープの話聞いてたら、涙が必要以上にこぼれちゃったわ。

 だからね、あなたたちの友情がいつまでも続くようにってサービスするわ。」

 宝石のサービスとはなんとも気前のいい話だ。

 って思ってしまうのはヒューマン族だからなのだろう。

 あれ?

 とふと疑問が浮かぶ。

 そういえば支払いはなんだ?

 スープからは代価になるようなものは預かっていない。

 先生にも一応確認してみるが、肩をすくめるばかりだった。

 しかたなく本人に尋ねてみた。

「ヒューマン族の感覚で話を進めるのはナシよ。

 それにきちんとスパイアさんから貰ってるから。」

「えっと、ごめんなさい。

 知識不足です。

 失礼でなければ、参考までに聞かせてもらっていいですか?」

「マジメな子ね。

 彼女の話してくれたとおりだわ。」

 あたしは頭を撫でられた。


 冷たい手だけど、温かかった。

 涼しげな笑顔だけど、喜びみたいなのがあふれていた。

「あなたたち二人のお話。

 久遠の時を生きなきゃならない私たち竜族に必要なのは、心の栄養よ。

 食べ物なんて、ほとんどいらないし、貨幣制度なんてあるわけないし。

 キラキラとした宝石溜め込むドラコニアンもいるけど、そんなのは言語能力も持たない下等竜族だし。」

 あたしはホント世界を知らないんだなと恥ずかしくなった。

 自分で調べようともしないで、と言った先生の言い分も身をもって理解できた。

 きっかけを与えたいって言ってたこともホントだった。

「そうだ! エルもアドレス交換しましょ。

 ね、いいでしょ?」

「は? え?

 えぇ、かまいませんけど…」

 そうきたか。って言うか、リュウ族とアドレス交換か…嬉しいけど、ちと複雑な気分。


 よくよく考えてみれば、案内役にカレシである先生を指定した段階で、お互い連絡をとりあったに決まってるじゃないか。

 仲良く街中を歩く二人の姿を見て、あたしはなぜかタメイキがでた。

「仲良きことはいいことかな。」

 ついボヤきが口に出てしまう。

 べつにヒトの色恋にどうこう言う権利はないのだが、どことなく淋しくなった。

 あたしの背には、今、キアナイトがふんだんにあしらわれた剣が背負われていた。

 あしらわれた藍晶石は涙のようにキラキラ輝いていた。


「ねぇ、もしかしてあの二人ってツキアってんの?」

 剣柄の宝石をくりくりといじくりながらクラスの女の子が訊いてきた。

 学校自体は許可さえ下りれば、武器は持ち込み可。

 ただしむやみに抜刀すれば退学はもとより、王国の外に広がる草原へと追い出される。

 あたしは辺りをはばかりながら、クラスメイトの問いに肯いた。

「あたしはてっきりエルスが、先生とツキアってんだと思ってわぁ。

 今回だって、二人のカケオチ説が有力だったのよ。」

「はぁ?

 ないし。ぜったいナイし。」

「ちょっとぉ、なにコソコソ話てんのよ。

 まぜてって。」


 そう。

 あたしと先生が学校に復帰したら、クラスの雰囲気が変わってきていた。

 新リーダーの求心力が失われつつあるのだ。

 だからと言って、その女の子がターゲットにされ始めたわけではない。

 そうやって、徒党を組んで行動することを良しとしない娘が一人、また一人と増えてきたのだ。

 今回話しかけてきた女の子たちもそんなクラスメイトだ。


「でもさ、先生と生徒って恋愛禁止じゃないのかな。

 大丈夫なの?」

「どうだろ。世間一般ではよく思わないヒトもいるだろうけど。

 本人たちがその辺、無頓着だからね。」

 あたしは肩をすくめて見せた。

 以前、あたしも気になって、本人達に訊いてみたことがある。

 だから、そのときのまんま先生の返答をモノマネた。

「僕はスープのことが好き。

 それは先生と生徒だからじゃなくて、たまたま出会ったとき先生と生徒だったってだけじゃない?」

 ちょっと笑いがおきた。

 で、遠くから舌打ち。とうぜんムシ。

「未成年保護は?」

 ダレもが気になるところだ。

 なので、再度モノマネしてみせる。

「それは保護しなければならない事情を作るオトナの責任だ。

 僕はスープが何歳だろうとコドモ扱いする気はないし、学校で差別することもない。」


 そう宣言した先生の言葉を、スープが納得してるのかはよくわからなかった。

 先生との恋愛よりも自分の仕事で手いっぱい、頭いっぱいな感じだ。

 ただ、依存する気はないんだろうなとは思えた。


 それを前提にクラスメイトの女の子たちに説明する。

「オトコのものにならない意思があるかないかじゃないのかな。

 保護されてる、保護されたい、依存したいって気持ちがあったら、未成年関係なく何歳になっても保護対象じゃないの?」

「そういうものかな。」

「たぶん。性別だって関係ないよ。

 オトコにもいるもん。自立できないの。」

 いるいる、って三人で笑った。


 スープも先生も今頃くしゃみ連発だろうな。

 彼女は今日は図書委員。

 だから、朝も昼休みも、放課後も一緒じゃない。

 五限目が終わったら、今日は図書室に行って、この話をしようか。

 お弁当にはしを伸ばしてほくそ笑む。


 今日も夏空。気分も晴れもよう。


 図書館こもりも捨てがたいが、これだけ晴れてるともったいない気もする。

 オープンカフェでワッフルとコーヒーってのもいいかもしれない。

「あれ?」

 あたしが首を傾げたのを見て、どうしたの、と向かいで同じようにお弁当を広げていた女の子が訊いてきた。

 あたしの目線は窓の外にあった。

 登下校時に横切る校庭の先、校門の脇に真っ黒な影をつくる今は葉っぱばかりの桜の樹が植わっていた。

 その影の中にヒトが立っていた。

 おそらく男のヒトだ。校舎を見上げている。

 そのヒトはしばらくそうしていたが、少しよそ見したらいなくなっていた。

「ダレかいたよね?」

「うん。いた。で、いなくなった。学校の関係者かな。」

 二人で首を傾げた。


「そういえばさ、エルスって、学校卒業したら大学いくの?」

「進学希望だけど、どうだろ。

 親もと戻ることになるのかな。」

「あー、そうか。一人暮らしだもんね。」

「でもね。あたし、カフェ開くのが夢なんだ。」

「へぇ、そっか。

 そういえば、バイトもそれだっけ?」

「うん。

 だから、メッチャ迷い中。」

 ユルーい会話。


 でも、ぜんぜん緊張しない。

 メンドくさくもないし、ウソついたり、ネタ選びに困ったりしない。

 もしかしたら、勝手に線引きしてたのは、あたしのほうだったんじゃないだろうか。

 一瞬、思考がネガティブに向かったけど、すぐに修正する。

 スープの短剣があたしの弱さを斬り裂くイメージ。


 五限目の終わるチャイムが鳴った。

 予定どおりあたしは図書室に向かおうと、スープと廊下を歩いていた。

 昼休みのコトとか、図書室に新しく入荷した本の話とか。

 ありがとうって言ったら、首を傾げられた。

「あれ?」

 思わず目線をそらし、廊下の窓を見たら目についてしまった。

 学校の敷地内なのに、生徒でも先生でもないような男性の姿がそこにはあった。

 ランニング途中の運動部員がチラチラと横目に見ながら走りすぎていく。

 あたしは立ち止まってよくよく見てみた。

 ダレかが報告したらしく、教務主任の先生が男性教諭数人をひき連れて現れた。

 不審者と判断し、追いだしにかかったらしい。 


「ヴァル…」

 窓の外を見つめるあたしが呟いた。

 スープがあたしと外を交互に見る。



 山および街にて


 俺は、カノジョとその友達に山でのことを語ろうとした。

 しかし、思いだそうとしただけで言葉が震えだす。

 頭の中でのみ、語り続ける。


 同族の雄たけびで目を覚ましたんだ。

 中腹付近に見つけた小さな洞窟の中だった。

 周囲に気配がないことを確認しつつ、入口から外を見るが、夏の山は枝葉を広げた木々で覆われているから、空が見通せない。

 そして、枝葉を広げた森の隙間から差し込む光の下、身体は凍りついたように動かない。

 刻まれた恐怖の傷は想像以上に深いことを知った。

「助けに行かなくていいのだろうか。」

 そう呟いてみるものの、意志どおりに身体が動くことはなかった。

 ヤツらと対峙する前までは死ぬ覚悟ができていたはず。

 だとしたら、覚悟が甘かったのか?

 違う。

 死にたくない、というのとも違うのだ。

 おそらく恐怖は、生死とは関係ないのだ。

「逃げよう。」

 俺は洞窟をとび出した。

 小さな男の子がはるかに巨大なドラゴンと闘っている。

 わかっている。

 しかし、恐怖はそっちとは逆方向へと足を運ばせた。

 山の下へ、街へ、炎天山の竜王から遠くへ、と。弱りきった自分を鼓舞できる日がくるのだろうか。

 不安になる。

 恐怖が五感を支配する。

 怖い。

 このまま力尽きてはダメなのか。


 数ヶ月とはいえ、自分が過ごした街が初見の景色に見えた。

 鈍重な歩みを懸命に進めた。

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