夢のタクシー♀
2月24日の夜
正確に言えば25日になったばかりだ。
安藤祥子はラジオを聴きながら試験勉強をしていた。
「いよいよ明日…今日か今日は大学入試!頑張らなきゃ!」
2月25日は、篠路大学の入学試験がある。
篠路大学は出身というだけで、優遇されるほど超有名大学だ。
祥子が今通っている高校も有名な進学校。
所謂エリートだ。
「試験前日だから無理しないでよ」
母だ。祥子が幼い頃に両親は離婚し、女手ひとつで育てられてきた。
「わかった」
明るい声で返事をする。
勉強してからもう5時間は経つ。
「もう寝るかな〜」
祥子は呟いた。
ラジオの天気予報は、明日は吹雪だと伝えている。不安を覚えながらも、祥子は床についた。豆電球が、ひとつ切れていた。
翌朝いつも通り6時に起き、朝ごはんを食べる。
天気予報が的中したのか、天気は大荒れ。
バスでは間に合わないと判断し、タクシーを呼ぶことにした。
電話を手にとった時、ふと昨日見た夢の事を思い出した。
「ハアハア」
祥子は走っていた。
でも進まない。
目の前に「篠路大学人入学試験会場」と書かれた看板があるのに
祥子は、泣きそうになった。
ここで遅刻したら3年間、いや18年間の努力はどうなるの?と考えると涙が止まらなかった。
その涙に車のライトが反射した。
タクシーだ。でも誰も乗っていない。そのことが明らかになった時目が覚めた。