底辺作者がエタりそうなので、登場人物の俺たちが勝手に「テンプレ」をねじ込んでPVを稼ぐことにした件
「あー……暇だ……」
ギルド酒場の片隅。
勇者のサイトは、木製の机にだらしなく顔をのっけて、呟いた。
目の前の席に座るヒーラーのシェリルも、同じようにだらけつつ、ため息を吐いた。
「もう1ヶ月……。なーんもしてない。最強スキルとやらでゴブリンの群れを唐突に倒して以来、なーんにも。一体いつになったら、冒険にでるの?」
シェリルの問いに、隣の席の戦士ソニアが答える。
「んー、なんかPVが伸びなくて、やる気が出ないらしいよ。ずっとエロサイトみてるわ」
「なに! エロサイト! FAN〇Aか!」
ソニアの声に反応し、サイトが右手で丸を作ると、そのまま目に押し当てる。
最強のチート能力・千里眼。
伝説の勇者パーティ一行に突如与えられたこのスキルは、文字通り『全てを見通せる』能力があった。
その結果、なんやかんやで彼らは自分たちが、創作小説の世界に生きているキャラクターであり、底辺作家と呼ばれる素人に生み出された存在であることを知ったのである。
「うわ、FAN〇Aのいいところで、アクセス解析画面に切り替えやがった、くそが! 何度F5連打しても、PVの『0』は『0』だよ! そんなことしてるなら続きを書けよ、続きを!」
千里眼を駆使してのぞき見をしていたサイトが、ぼやく。
エロサイトの鑑賞が終わったことを確認すると、シェリルもソニアも千里眼を発動させる。
やることが無くて暇すぎる伝説の勇者御一行様のルーチンワークである。
だが、今日は、大きな変化があった。
「ちょ、ちょっと、これまずくない?!」
ソニアが大きな声をあげる。
「新プロットだと? 突然追放されたいじめられっ子が、薬屋の知識を駆使して無双するってなんだ、それ」
サイトのリアクションに、シェリルが喝を入れる。
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ! 別の作品を書きだしたら、あたしたち一生この村から出られないよ! 最強スキルも伝説の勇者御一行様も、片田舎のゴブリン討伐で終了よ」
一生このままという驚愕の事実を突きつけられ、サイトの顔が青ざめていく。
「ま、まじで! ど、どうすればいいんだ?!」
「と、とにかく、何とかPVを稼げるような展開を、うちらで作ってくしかないじゃん。とりあえず、うちが脱ぐ? ぱいおつでPV……」
露出度高めのアーマーを外そうとしたソニアの頭を、シェリルがパコーンと殴る。
「バカ乳! そんなことしたらレギュレーション違反でBANだっての!」
「殴ったわね、この清楚系かぶれ! それじゃ何か? あんたが突然、海賊王になる冒険でも始める?!」
喧嘩を始めたシェリルとソニアの間に、サイトが割って入る。
「言い争ってる場合か! このままじゃ、一生この酒場でまずい飯を食べ続けなきゃならなくなる。なんでもいいからPV伸ばすんだ!」
「そうはいっても、どうすればいいの? 脱ぐ? とりあえず脱ぐ?!」
「バカ! 今はテンプレの時代だ! 追放だ、追放!」
「はい? 最強スキルある勇者を追放するって意味わかんないけど? なんで?」
「理由なんてどうでもいいんだよ。とにかく追放すりゃいいんだ。絶対に有能だよなって普通に思う場合でも、とにかく追放されれば、今の読者は満足するんだ!」
シェリルは、やれやれといったジェスチャーをした。
「いや、ダメよ。だいぶ前の話で忘れてしまったけど、あなたは他のパーティーを追放されてきたのよ。ほら、このバーの料理人があなたの元パーティーリーダーでしょうが」
シェリルが指をさすと、バーカウンターにいる男が、半笑いでペコっと会釈をした。
「あー……、じゃあどうする? 外に出て、突然トラックにひかれる? どどーんと異世界へ転生って!」
「チート能力がある異世界にいるのに、異世界に転生するって一ミリもおもしろくないわね。ここはやはり、この手しかないでしょうね?」
「お? 何か思いついた、似非聖女様。 それにしても、このチェリーパイ美味しいわね」
もう飽きてしまったのか、ソニアはカウンターに置かれたパイをむしゃむしゃと食べていた。
「フフフ、時代は新時代! ポストアポカリプスよ! 一回文明を全滅させてから、チートスキルで復活させるスローライフ建国記! これは、PVもジャンジャンよ!」
「「おおお!!!」」
どことなく凄そうな雰囲気に、二人は感激の声をあげる。
「よし、じゃあさっそくやるか! スキル発動! 奥義、えーとなんだったかな、我に呼応せよ大地の、えーと……」
「あー! ストップストップ!」
シェリルは、口上を書いたメモ用紙を取り出そうとしたサイトを制止する。
「え? 何か問題か?」
シェリルは、時計を指差した。
「今、昼の14時よ。まさに凪タイムと言われる時間。 こんな中途半端な時間に更新しても、玄人な読者しか残っていないわ。玄人な読者に見せたところで、直ぐにバレる。狙いは、『ざまぁ』を未だに求めてるようなテンプレ読者よ! 狙いは22時、それも17分頃を狙うのよ!」
「22時17分……なんでまたそんな中途半端な時間なんだよ」
「22時に予約すると大手の更新に負けて一切見られないからよ。タイミングをミスると新作の更新でも2PVとかになってしまうわ。確実に、更新トップ画面入りを狙うためには、まさに刹那を狙わないといけないの。だから、それまで全員ステイよ! タイミングは一瞬!」
「はぁ!? この中腰の姿勢で8時間もか!?」
かくして、伝説の勇者一行は酒場の片隅で、誰一人身動きを取らないまま、ただひたすらに壁の時計を睨み続けた。
やがて、時計の針が22時17分を指し示した。
「いいか!」
「まだよ! まだまだ……」
シェリルが千里眼を発動させ、実際の様子を確認している。
「まだ……今よ! いけええええサイトォオオオ!」
「うおおおおおお! 我が最強の力よ、世界を無に帰せ! 『アルティメット・エンド・オブ・クトゥルフぅうううううう』!!」
カッ! という閃光が走り、轟音とともに『世界』が跡形もなく消し飛んだ。
目を開けると、そこは見渡す限りの荒野。瓦礫の山。空には分厚い暗雲。
まさに完璧なポストアポカリプス世界が完成していた。
「やったわ! これで新章『廃墟から始まる無双スローライフ』の開幕よ!」
シェリルがガッツポーズを決める。
「えー。でもなんかこう、前に見た話題のやつはもっと自然満載だったぞ。みんな石になっちゃったってやつ。こんなマイン〇ラフトのクリエイティブモードみたいな感じじゃなかったような……」
ソニアの指摘に、シェリルが固まる。
「そ、それだとパクリになるじゃない! これぞ新感覚よ! 荒野から始まる建国記」
「始まるもなにも、何もないんだけど、どうすればいいんだ?」
ヒュウウウと風が悲しい声をあげる。
よくよく考えれば当たり前である。彼らは純度100%のファンタジー世界の住人であり、農家でもなければ建築家でもない。チートスキルも『戦闘用』と『のぞき見用(千里眼)』しかない。
「スローライフってさ、もう少しサポート系のジョブが追放されてからざまぁってするやつだよな? 攻撃寄りのキャラがやっちゃまずいんじゃ……」
「と、とにかくPVよ! 千里眼で結果を確認しましょ!」
三人は、慌てて様子を確認する。
少なくとも更新はされたのだ。
さらに、更新時間も完璧だ。少なからず結果は出ているはずだ。
作者のPC画面では、デイリーPVが『0』から『45』へと劇的に跳ね上がっていた!
作者は、何やら慌てた様子で、『スコッパー速報』なるものを見ていた。
その様子を、サイトは冷ややかにみていた。
「こんなんで掘られるわけねえだろ、バカたれが」
「と、とにかくPVが増えたわ! これでやる気を出してくれたら、またご都合主義なスキルを追加して何とかしてくれるわよ! 荒野から始まるスローライフに……」
三人は固まった。
何やら作者は頭を抱え、折角つくった新エピソードを削除しようとしているのだ。
「ちょっ、ちょっと待って! ダメなのー! この展開お気に召しませんかー!」
『削除』
ヒュウウウンという音が聞こえると、三人は元のバーに戻ってしまった。
ガックリと、サイトは膝から崩れた。
「お、俺の八時間が……」
「ねえ、やっぱり出す? 揉む?」
「それは興味あるけど、存在が消えるからダメ……」
シェリルは、地面に膝を抱えてうずくまった。
「もうダメだわ。大人しく悪役令嬢になって、本当は大好きな妹をイジメていればよかったんだわ」
「なんだよそれ、そもそも妹がどこにも……」
ソニアは、慌てた様子で外をみた。
「お、おい! 見ろ! 街の人が歩いてるぞ!」
サイトとシェリルも、その光景に目を丸くする。
「ということは!」
千里眼を発動すると、そこに執筆を再開した作者の姿があった。
「やったー! PV作戦がうまくいった!」
「「バンザーイ! バンザーイ!!」」
大喜びではしゃぐ三人だったが、無事に旅に出られるのだろうか?
その結果は、神(作者)のみぞ知る。
コメディにチャレンジしてみました。
テンポ重視で、やや短めです。
少しでも面白いと思ったら、評価頂けますと幸いです。
続編のプッシュにもなりますので!




