工場に来た男
七 アウグスタ
冬になると、新聞の文字が大きくなった。
最初は社会面の隅の三段記事だったものが、十二月には一面を取るようになった。見出しが、日を追うごとに太くなっていく。まるで町全体が、恐怖に比例して声を張り上げているようだった。
デュッセルドルフの吸血鬼、依然逃走中
吸血鬼、という言葉を、記者は選んだ。
私はその見出しを三回読んだ。それから新聞を折りたたんで、テーブルの端に置いた。ピーターが帰ってきたとき、彼がすぐ目にする場所に。
彼は帰ってきた。コートを脱いで、手を洗って、椅子に座って、テーブルの上の新聞を一瞥した。
「またか」
それだけ言って、新聞を横にずらし、スープの皿を引き寄せた。
「怖くない?」と私は聞いた。
「何が」
「この犯人。うちの近所でも出ているでしょう」
ピーターはスプーンを口に運んだ。「戸締まりをしっかりしていれば大丈夫だ」
「そういうことじゃなくて」
「じゃあ、どういうことだ」
私は彼の顔を見た。彼も私を見た。穏やかな目だった。いつもの、あの目だった。世界で一番安全な場所にいるような気持ちにさせてくれる、あの目。
「なんでもない」と私は言った。
「そうか」と彼は言った。
スープを飲み干して、彼は「うまかった」と言った。
私は「よかった」と言った。
その夜、眠れなかった。天井を見ながら、自分が何を恐れているのかを考えた。犯人が怖いのか。それとも——犯人が怖くない自分が怖いのか。
横で、ピーターは静かに眠っていた。
規則正しい寝息を立てて。
子供のように、穏やかに。
八 ピーター
春になった頃、警察が工場に来た。
聞き込みだった。犯行時刻に近い時間帯に、この周辺を歩いていた人間を探しているという。刑事は二人で、一人は若くて、一人は疲れた目をしていた。
疲れた目の刑事が私に話しかけた。
「あなたは?毎晩何時頃に帰宅しますか」
「だいたい八時か九時です」
「奥さんはいらっしゃいますか」
「います」
「確認できますか」
「もちろん」
刑事は手帳に何かを書いた。私は彼の鉛筆の動きを見ていた。アリバイを書いている。アウグスタが証言すれば、それで終わりだ。
彼女は証言するだろう。嘘をつかない女だから。でも私が帰宅した時刻を、彼女は正確には知らない。台所にいて、時計をいつも見ているわけではない。八時とも九時とも、あるいは十時とも言えるような、曖昧な時間帯。
それで十分だった。
刑事は「ご協力ありがとうございます」と言って、次の工員のところへ歩いていった。
私は仕事に戻った。
機械の音が、また始まった。
その日の夕方、工場を出て、私はいつもと違う道を歩いた。川沿いではなく、街の中心を抜けるルートで。明るい通りを、普通の顔で歩いた。
肉屋の前を通ったとき、ショーウィンドウに自分の顔が映った。
中肉中背で、特徴のない顔。どこにでもいる、四十代の工員の顔。
私はその顔を、少しの間眺めた。
それから歩き続けた。
九 アウグスタ
刑事が家に来たのは、その二日後だった。
「奥さん、少しよろしいですか。ご主人の帰宅時刻についてお聞きしたいのですが」
疲れた目の男だった。私はエプロンで手を拭いて、ドアを大きく開けた。
リビングに通して、お茶を出した。刑事は「結構です」と言ったが、私はお茶を出した。そうしないと、自分の手が何もすることがなくなるから。
「十月の十三日の夜なんですが、ご主人は何時頃お帰りになりましたか」
十月の十三日。
私は考えた。考えるふりをした、というより、本当に考えた。あの頃、ピーターはよく遅く帰ってきた。残業だと言っていた。八時のこともあれば、十時を過ぎることもあった。
「八時か……九時頃だったと思います」
「思います、というのは?」
「正確には覚えていなくて」
刑事は手帳に書いた。
「ご主人は帰宅後、外出されましたか」
手が、止まった。
お茶のカップを持ったまま、私は刑事の顔を見た。疲れた目が、私を見ていた。責めているのではなく、ただ待っている目だった。
「しません」と私は言った。
「いつも?」
「いつも」
刑事はまた書いた。
「ありがとうございました」と彼は立ち上がった。「奥さん、もし何か気になることがあれば、こちらに」
名刺を置いていった。
ドアを閉めて、私はリビングに戻った。名刺をテーブルの上で見た。それからキャビネットの引き出しを開けて、名刺を入れた。
閉めた。
窓の外では、子供たちが路地で遊んでいた。甲高い声が、ガラス越しに聞こえた。
私はしばらくそれを聞いていた。
引き出しは、閉まったままだった。
十 ピーター
アウグスタが引き出しを開けているのを、見た。
何かを仕舞う音がして、私は廊下から覗いた。彼女は気づかなかった。白い紙のようなものを、引き出しの奥に押し込んでいた。
夕食のとき、私は聞かなかった。
聞く必要はなかった。
彼女が何を仕舞ったか、なんとなく分かった。刑事が来たことは、工場で噂になっていたから。近所を一軒一軒まわっているらしい、と誰かが言っていた。
アウグスタは私を守ったのだ、と思った。
何も知らないまま、守った。あるいは——
知っていて、守ったのか。
その考えが、一瞬だけ頭をよぎった。
私はスープを飲んだ。
アウグスタはパンを切りながら、今日の市場の話をした。キャベツが値上がりしている、どこの店も同じ値段で談合しているに違いない、まったくひどい話だと。
私は「そうだな」と言った。
彼女の首筋の、あのほくろが見えた。
愛していると思った。
この言葉を、私はあまり口にしない。でも心の中では、驚くほど頻繁に、その四文字が浮かぶ。
アウグスタ。
私の妻。
私の、唯一の——
「パン、もう一枚いる?」
「もらおうか」
彼女は皿にパンを乗せて、私の前に置いた。
「たくさん食べて」と言った。
「ああ」と私は言った。
窓の外で、風が鳴っていた。




