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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
アフターストーリー

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とある男篇

 今日も、平和である。

 争うのともなく、普通の街の一軒家で幸せに過ごす。


 この世界に俺という人間は今日もまた、生きていた。


 1度は終わらせたこの人生。本当に最期になるはずだったし、自分もそう選択した。

 ―――けれど、不思議なことに俺は欲望に忠実で……結局は心のどこかで最後まで生きたいと、そして「忘れられたくない」とずっと思っていたらしい。


 抑えていたつもりだったけど、結局は少しだけ溢れていたみたいで……それが()()()()()()影響を与えた。


 それよってほとんどは少し違和感を感じる程度に、そして何人かは完全に思い出してしまったのだ。


 そして思い出した人が俺を望んだ。


 それは2人の勇者と一緒に旅をした剣士。

 消えきてしまった勇者と、存在しない記憶に生きる勇者を探すべく旅に出た。


 それは大切な人との約束を信じ、待ち続けた魔法使い。奴隷として捕まったまま待ち続け、剣士に助けられた後にその旅に続いた。


 それは夢を追い続けるトレジャーハンター。記憶を頼りに近未来な遺跡に行ったところ剣士と魔法使いに助けられて、秘宝ではなく、もう1人の仲間の姿を探した。


 こんな3人の想い(呪い)がこの世界に俺を呼んだのだ。いや……+αで一番嫌いなヤツがいるな。下手をすればアイツが一番俺を望んでいたかもしれない。


 あとは……思い出していなくとも、それこそ無意識に俺を望んでいた人もいたのかもしれない。まぁ、色々な人と会ったからな。


 しかし前のような力も無ければ容姿も少し大人びた気がする。むしろ、これが年相応の姿なのだろうか。繰り返される時の中では俺だけが容姿が変わっていなかった。


 この変化が色んなものから解放された結果と思うと、本当に嬉しい。


 とにかく、今は……すごく幸せだ。

 ずっと望んでいたものも叶ったのだから。それでもモヤモヤとする部分はあるけど。だって破ったままの約束が色々あるし。


 ……まぁ、俺の代わりにこの世界では信用出来る二人の手で色々とやってもらったけど、というかむしろ俺に出来ること自体ないかもしれない。


 寂しがり屋の魔族は本当の勇者様に任せたし、強さを求める魔族と修行したい武闘家に関してはアイツが出会わせてくれたみたいだし。


 最強の王女様は旅をした最愛の存在が作られたものだと知ったけれど本人とまた一から始まったらしい。あの二人は将来どうなるのだろうか。ルミリさんは王子になる気なんてないだろうし、王女様の方から嫁いで来そうだ。


 救えるはずも無かった存在も俺は色んなものねねじ曲げて救った。それは成長のチャンスを奪った事になるかな。でも、あんな犠牲の上に立つものなんて俺は認められなかった。


 ナンパ男に関しても二人がまた出会えたかし良かった。あの時の選択をルミリさんが謝れて。で、肝心の本人は今だとストライゾーンが魔族の女にまで広がり魔族と人間の輪を繋げようとしているらしい。


 雲の上にいるボツラは……まぁ、そろそろ関係が進展したんじゃないだろうか。なんやんかやルミリさんと会う以外で下の街に降りないのは雲の上で一緒に居たい存在があるからだろうし。


 エーさんは……まぁ、いつか結婚できるだろう。うん、きっと皆大丈夫だ。


 多分これであの世界で俺が出来なかった物はどうにかなったと思う。

 ……なったよな?


「ねぇ、お客さんだよ」


「あぁうん。ありがとうフィリ。今向かうよ」


 と、色々と考えていたら誰か来たようだ。ソルドさんは、ビルさんと遺跡に行ったばかりだから違うだろうし……アイツか?

 仮にも統治者なんだからこうも頻繁に普通の民家に来られると困る。

 たまには文句のひとつでも……いや、文句言ったところで意味ないか。


「……え」


 しかし、実際に待っていた人物に俺は驚いた声を出してしまう。住所どころか存在そのものさえ覚えていないはずの……フィリアさんが。


「お久しぶり……いえ、初めましてですかね?」


「初めまして」


「……また、会えましたね」


 この言いよう……なぜか、フィリアさんも俺の事を思い出していたらしい。


 一体いつ、どのタイミングで思い出したのか……いや、どっちかというと教えられたのか。住所知っている時点でルミリさんが教えちゃったんだろう。もう現れた以上は俺はあれをしなければいけない。


「すみませんでした!」


 ▶勇者の謝罪

 しかしフィリアに効果は今ひとつだ


「え、え……?なんで謝るんですか」


 開幕謝罪。だって、最終的には約束守れたとはいえ、あの時何も言わずに消えたのだ……実質1回約束破っている様なものだ。


「あの時……1度置いて行ってしまったので」


「……あぁ、いえ。それは別に少ししか怒っていないので大丈夫です」


 少し怒ってるじゃん……!それでは何の用事だろうか。


「私は今日一言、告げに来たんです。ありがとうございました勇者様。勇者様のおかげで、また兄に会えたので」


「どういたしまして……けど、勇者様だなんて。勇者はむしろ君の兄だ。今の俺は普通の人間でしかない」


 まぁ、その兄と俺は実質同一人物なので少しややこしいが。


「私にとって、間違いなく兄と同じで勇者様です」


「……そっか」


「それで、せめてもの気持ちを込めてお名前でお呼びしたいのです。なので改めて聞きますね。貴方をなんと呼べば……?」


 ……やり残したこと、あったじゃないか。この質問に俺は答えないといけないよな。


「俺の名前はね、ユウシャ」


「え、ユウシャ?それは名前ですか」


 俺の返答にフィリアさんは戸惑っている。

 そりゃそうだよな。それも1度自分を勇者じゃない普通の人間だと言ったばかりなんだ。


「うん。名前はユウシャだよ。不思議とこの名前が一番しっくりきたんだ」


 この世界に生きる一人の人間として、改めて大切な人にもらった名前。

 そして俺が俺である証明。

 実はフィルとかルフィとかルミーリなんて名前候補があったのだが、これが一番俺に合っていると思った。フィリだって、そう感じたのだ。


「そうですか。確かにしっくりきますよね。勇者様……いえ、ユウシャさん」


「うん。ユウシャです!」


 役目に縛られる事も、2年間を繰り返すことも無い世界でこの先も俺の人生ものがたりは続いていく。

 そして、フィリアさんと出会って思い出したやり残した事。結局まだまだ、たくさんあるんだ。


 ◇


 あれからフィリアさんが帰り、俺は1つの大きな決心をした。


「フィリ、一緒に旅に出ない?」


「……唐突だね」


「ごめん。だけど……欲望が抑えられないんだ。俺がまだ見てない未来がこの世界には広がっている。そう思ったら、止まっていられないんだ」


「……ユウシャはやっぱり、正直だね」


「うん」


 二人で幸せに暮らすってのはもちろんだけど、長く続くこの世界で俺はやれること全てしたい。それに、別れたまま忘れられたままってのも嫌だ。たとえ初めからのスタートだろうと、また皆と仲良くなりたい。


「ところで、最初は……どこに行く?」


「ふっふー!実は前々から行きたい場所があってさ。やっぱり―――」


 そんなことで、俺の旅はまだまだ、続く!

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