ルシフェル篇
ゴフェルの統治者、ルシフェル。
神々しい光を纏う彼は正に神の使の遣いに相応しいそれ相応の容姿、そして力を持っている。
そんな彼の住居は旧魔王城ことルシフェル城。そんな直球ネームの城で行われる彼と、その配下の様子だが……どこか騒がしい。
「うん、平和な世界も退屈しない。これも彼と一緒にいた影響かな。環境が変われば思考も変わるというものだ……それに憧れていたんだよね可愛い子を独占すること」
「……ふ、ふざけるなぁぁあ!」
椅子に座り足を組むルシフェル。それを見て怒り狂う幼女だ。
「なーに怒ってるの、まおちゃん?」
「まおちゃんでは無い!おのれぇ忌々しい天使め!」
「いいじゃないか。今の可愛い姿の君に
『魔王』なんて大層な称号は合わないんだ。諦めて今の立場を認めなよ。まおちゃんとして過ごすのも楽しいだろう?」
ルシフェルはまおちゃんの頭を優しく撫でる。
「うぅ!たとえ姿が変わろう尊厳だけは捨てぬ!貴方に復讐し必ず再び世界を混沌へと落とし入れるんだからな!」
「うん、生意気。でも姿が可愛いだけで許せてしまうのだから可愛いは正義というのは間違いない。君もそう思うだろう?」
ルシフェルはとんでもなく足の長い魔族へと問いかける。
「間違いありませんよ!魔王様……いや、まおちゃんは可愛い。これに限っては早くではなく、遅く……いやずっとこの姿でいてもらいたい!ルシフェル様と俺ちゃんは同意見!」
「だよねー。ボブはノリも良いし話が分かるね。君が本当にいい子だ」
「ありがたい言葉です!」
「おのれボブ〜!私を裏切りおって!」
「仕方ないですよ。世の中は弱肉強食。貴方も遠く及ばない強さを持つルシフェル様に従うことこそが俺ちゃんの至高!それも配下の中でも一番有能な部下になれたのだから!」
そう、ボブはメランすらも差し置いていく有能な部下であった。強者の命令には絶対服従のボブはルシフェルにとって都合がよく、それ故に絶対の信頼を持たれている。
そんなボブは今の世の情勢にも大きく貢献をしていた。
―――本来ゴフェルに戻り再び眠りにつくはずだったルシフェル。しかし友の施した力によって眠りにつく所か、堕天する前の完全体としてゴフェルへと再臨を果たした。
そして友の望んだ世界の実現のためにルシフェルは魔王、そして四天王の鎮圧を行った上で、人間の王に取り引きを行い人間も魔族も共存できるようにしたのだが……その上で大きな役割を果たした貢献者こそがボブなのだ。
魔族と人間が友好的取引をする際に話すのはそれぞれの代表であるが、魔族の代表者である魔王は人間を忌み嫌い、手を取り合う事などしないし、その魔王に忠誠心のあるメランもそうである。そこで、表上の魔王として立ったのがボブなのだ。
「そうだね、僕の部下の中では君が一番有能だよ」
「ありがたき言葉!」
「でも部下としてではなく、ペットてしてならまおちゃんが勝るかなぁ」
「その呼び方をやめろ!虫酸が走る!」
「もう、躾がなってないね。ボブ、まおちゃんを拘束引き回しお願い」
「はいよろこんで!俺ちゃんの足が火を噴く!行くぜ!」
「え、あ……ボブ待っボ―――ァァァァ!」
そうして、まおちゃんとボブは瞬く間に遠くへと消えていった。
そして、それを見てルシフェルはメランへと問う。
「メラン、さっきからずっと動かないけど君の大好きな魔王様を助けなくていいのかな?」
「……我にボブを止めることなど、できヌ」
「そう、やる前から諦めるか。君はつまらないね」
「……もはや、どうでもイイ」
「僕はね、ボブのように自分の考えで、目的のために動くやつが好きなんだ。だから人間を滅ぼすため動いていた魔王だって別に嫌いな訳じゃない。本来であれば君らの事を止めることも無かっただろう。勇者に天啓があったように君たちを手助けしても良かったくらいだ」
そこまで言ってルシフェルは一番大切な存在を頭の中で浮かべ、ニコリと笑う。
「ただ、今回は僕のやりたい事と彼の目的が相反していたから止めるよね。もう色々サポートしちゃって……個人的に彼に褒めて欲しいのはピンク髪の兄妹を助けたことだよ」
「わけのわからぬ話をするナ。貴様は何をいいたいのダ」
「少しくらい待ってよ。話してる途中なのに。……せっかち。さっきボブも言っていたようにこの世界は弱肉強食。弱者は強者に従うのが世の常だ。魔族が魔王に従うように、平民か王に従うように、そして僕以外が僕に従うように……ね。弱者は強者を前に本来の目的、思考すらも曲げられてしまう。例えば魔族を庇っていた子供がいたんだけど、その子は魔族を忌み嫌う者によって大きな怪我を負った。そう、強者に逆らえば大きな苦痛が与えられるんだよ。だからそれを恐れて皆立ち止まる。けどね、絶対に越えられない壁を前にも立ち向かい、命令さえも飛び越えて自分の欲望を遂には叶えた人間もいることを僕は知っているんだ」
ルシフェルの相変わらず長い話もメランは遮る事なく静かに聞いた。
「……そうカ」
「そう、だから君も僕に抵抗してみなよ?君だってせっかく熱い魂を持っているのだから」
「フ……その言葉魂に刻もウ。……だが、いつか後悔しても遅いゾ」
「うん、君も少しは楽しめそうになったね」
ルシフェルの決して退屈することのない日常は、続いていく。




