エー篇
「ヴォーいヴォいヴォいヴォい」
酒屋の1席。小太りなガタイのいい男は机に突っ伏して昼間から男泣きをしていた。
「どうしたんだよエー。最近泣いてばっかりでずっとその調子じゃあねぇか」
小太りの男を慰めようと背中をゆするように細身の男ビーがエーをバシバシと叩く。
「うっ、うっ……なんかよォ、この1年急によぉ寂しくでよぉ。なんが胸が痛えっていうが。もぉ酒飲んでねぇどやってげねぇよ!」
「おいおい酒はいつも飲んでるじゃねぇか。そんな泣いてばっかりだとオバさんも心配すっぞ?」
そうしてビーが慰めるも、以前泣きやむ様子もなく。
「うぅ……だっでよぉ!俺以外みんな結婚しちまっでよ。ビー、お前だけは俺を置いてかねぇと思っだのにぃ!」
なんと、エーが泣く理由は周囲が結婚していった結果、なんか仲間はずれみたいで悲しい……というものであった。
「そりゃあよ……俺だってよそれなりの歳だしなぁ。ってかエー、お前もそろそろ相手を探したら良いじゃねぇか。3年前からオバさんに『 いい加減孫の顔見せろ!』って言われてんだろ?」
「だっでぇ、俺ァモテないんだ!力だけが取り柄の男によってくるやつなんざ居ねぇんだ!っー!ゴクゴクプハァ!グェ!」
そんな飲んだくれ2人の前に、渋柿を持った長身の男シーが現れて座る。
「おいおいエー。まーたお前は酒に溺れてんのか」
「シーじゃん」
「よ、ビーは元気そうだな。嫁さんと上手くやってるか?」
「もちよ。こんなオッサンに尽くしてくれるいい女はあいつしかいねぇからな!あぁもう幸せ満喫だよ」
「やめろぉぉぉ!俺の前で幸せそうな話をするなぁぁぁあ!」
なんということか……幸せオーラに触れたエーが絶叫してしまった。
「はぁ、妬むなって!元々お前が隣の酒屋の女に夢中になって、合コン狩りに参加しなかったのが悪いんだから」
小太りの男以外は、皆同じ場所で結婚相手と出会っていた。それは複数の男女でパーティを組み3日間のサバイバルを通して親交を深める合コン狩りというもの。
女好きであるエフ主催で行われたものだが、エーだけは当時隣の酒屋のシーフの女に惚れ込んでおり参加を拒んだ。
そしてもちろん、女シーフから相手にされることは一度もない。
「うるぜぇ!俺なんか、俺なんらよぉ!ビーとお前以外は酒屋に来る事も無くなっちゃうまっだしよぉ……おらぁ寂しいよ」
エーの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃである。
「あぁ……まぁなんだ。皆奥さんの為にも安定した職に着いちまったし仕方ねぇさ。冒険者はちょいと難しいよ」
「ビーも、シーも良いよなぁ!俺は昔みでえに旅してぇよ!8人で馬鹿やってよ!バニーの街にもまだいぎでぇよ……」
「あーそうだな。またいつか時間が出来たら行ってやるからお前も相手探してオバさん安心させてやれよな。このままじゃ間に合わない年齢になっちまうぞ」
「ビーの言う通りだぞ。最近じゃ魔族と恋愛するやつもいるぐらいだ、魔族みたいな顔のお前にもいい相手はいるって」
「うぅ……俺なんでぇ俺なんでぇどうせ人間の顔してねぇよー」
そうして、エーはそのまま眠りについてしまったので、この日は細身の男と長身の男に介抱され、家に帰された。
〈翌日〉
二日酔い耐性が付きいくら酒を飲んでも頭が痛くならなくなったエーが、布団の上で目覚める。
「―――んんぁ……俺、また酔っ払っちまった。ほんと最近だめだなぁ。あぁ、昔は楽しがったなぁ。8人でふざけながら旅してよ……そうそう!ビー、シー、ディー、イー、エフ、ジー、ん?」
小太りの男は過去を楽しかった旅を振り返り、その多い仲間を指で数えるも違和感を覚える。
「6人しかいねぇな。あ、俺を入れてねぇじゃねえか!でも7……だな。んん?確かに8人いたと思ったんだがなぁ……確か、一人酒も飲めないような小せぇヤツがいて……いや、気のせいか。はぁ、なんか可愛い子と出会いのある依頼でもねぇかな」
そう言うと、エーは何年か前から愛用するようになっていたすごく性能のいい装備を持ち、依頼を受けるために酒場へと向かうのであった。




