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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
アフターストーリー

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フィリア篇

「天におられる神よ、貴方の創った世界では今日も平穏な日々が続いています。これも全て貴方が地上に遣わしてくれた、()()()()のおかげです。私は再び手に入れたこの幸せのため、今日も貴方に祈りを捧げます」


 広く、静寂な空間の中で私は毎日行うゴッツ様への感謝を述べていた。


 長年私達の信仰してきたゴッツ様。その存在へと信仰心はこの1年の間により強固なものへとなりました。


 そのキッカケとなった事件は魔王の復活。


 言い伝えでの魔王は100年に1度生まれるとされている存在のはずですが、まだ19年しか生きていないはずなのに3度も魔王の誕生に立ち会っている。


 幼少期に2度、そして1年前に。


 1年前に起こったそれは突然で、何の予兆も無く現れた魔王。ですが、その脅威は広がることなく終わりを迎えた。


 それを行ったのがゴッツ様の遣いの天使であるルシフェル様。

 身に纏う光を見た時にはゴッツ様と見間違えてしまった。そんな彼は魔王一派を瞬く間に制圧。そしてその後に魔物……正確には『魔族』と私達『人間』が共存するようにお告げを下しました。


 最初は私を含む多くの者が魔族との共存に不安を覚えていましたが……それも時間と共に変化し、今では多くの人が魔族という存在を認めるようになったのです。


 ―――とはいえ、魔物魔族によって大切な存在を失った人も数多くいて。そうなれば共存を否定する人だって少なくはありません。


 だから今の私の仕事は神への祈り、傷ついた人を癒す事、貧困層への支援に加え、『全ての魔族が悪ではない』という事を伝えるための布教活動です。


 私も魔王の侵攻によって1度家族を失った身ですが、それでも優しい子……むしろ被害にあった子もいる事を知っているので、そのような子の為にも魔族差別を無くしたい。


(ギィィィィ)


 教会の扉が開かれた音が後ろで鳴る。どうやら3()()が帰ってきたようです。


「3人ともおかえりなさい。それとお疲れ様でした。何かいい情報はありましたか?」


「あぁフィリアただいま」

「タダイマ」

「ただいまだヨー!」


 お兄ちゃんに、神父様、そして教会で神父様が面倒を見ている魔族であるヨー君だ。


 ヨー君は1年前にお兄ちゃんが帰ってきた時に一緒に居た魔族の子で、神父様とも面識のある少し不思議な子。子供にしか見えませんが、神父様の友人らしいので年齢がよく分かりません。


「ところで例の街に行って収穫はありましたか?」


 お兄ちゃん達はこの3日間、教会を空けてラブケーンという魔族との共存が最も進んでいる街へ言ってきたのだけれど……。


「あぁ、すごい収穫があった。あの街は魔物魔族の力があってこそ繁栄した街だったんだ。あそこの名物の1つ、龍の露天風呂なんだけど……龍の力でできたものらしくてね。あれを例に、魔族と協力して町おこしを進めて行ければより多くの人が魔族達の良さを理解できる」


「露天風呂のおかげでプリストの身体も少し良くなったしいい街だったヨー!」


「ヨー、マタイツカ……カケッコトカデキルヨウニナルカラナ」


 本当だ。声も大きくなって影も濃くなってます。いえ、本題はそこじゃなくて……!


「それじゃあそれに習ってヨー君はなにか出来ないかな?例えば幸せな夢を見せるとか」


 あれ?……私今変なこと言った。ヨー君に夢を見せる力なんて。


「ヨ!それすごくいいんだヨー!」


「え、本当にそんなこと出来るの?」


「できるヨー?フィリアが言ったことだヨー」


「そうなんだけど……」


 また、これだ。不思議と何か心に、ポツンと穴が空いているような感覚。

 前にもあった。勇者としての使命を終えてお兄ちゃんが帰ってきた時だ。

「約束通り帰ってきてくれてありがとうお兄ちゃん……」と言った時も同じ感覚になったのだ。


 そしてその時に約束した人の顔が、不思議とどうしても思い出せない。


 お兄ちゃんと約束したのならお兄ちゃんの顔が浮かぶはずなのに……浮かぶのはお兄ちゃんでもなくて、何か頭に霧がかかったようになる。


「フィリアが泣いちゃったヨ!?ヨー泣かせちゃった!?」


 え、嘘。私涙流してる?


「ヨーのせいじゃないさ。フィリ大丈夫、大丈夫だよ」


 そう言って昔のようにお兄ちゃんが、優しく頭を撫でてくれる。本当に……懐かしい。


 だけど……これよりも少し小さくて、悲しい手に撫でられたことがあるような気がする。


「それにしても……そうだね。フィリにはこの事を話してもいいかもしれないね」


 この事……お兄ちゃんは何の事を言っているの?


「神父様、それにヨー。少し2人になってきます」


「ドウゾ、イッテキテクダサイ」


「え、ヨーも気になるヨー!」


「ごめんねヨー」


「ヨー、フタリデアゾボウカ」


「遊ぶヨー!」


 それからお兄ちゃんは私を外に連れ出す。

 お兄ちゃん……どうしたのかな。


「今から話すのは……僕じゃない、この世界を救った一人の勇者様の話だ―――」




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