表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
終章 勇者は好きに生きる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/68

正解は人によって違ったりする

 チビフェルを含む勇者パーティは今日も今日とて旅をしていた。


 勇者の旅が始まりもうすぐ2年が経つであろう現在、街を襲う魔物のほとんどは3人の美少女の手で殲滅され、世界は平和へと第1歩を踏み出している。


 そして今日、ラブケーンで風龍と媚龍の夫婦喧嘩で最近出来たという露天風呂の噂を聞きつけ勇者一行はそこへ向かった。


「お師匠〜今日も楽しかったですね!」


 宿屋、長くなった髪から水を滴らせた温泉上がりのリウがソファに腰掛ける勇者の前で気分上々と語りかける。


「うん楽しかったね。けど、とりあえず髪乾かして?あと服ちゃんと着て」


「着てますよ?」


 勇者の指摘に、リウはポカンとした。


「下着はちゃんと着たとは言わないかな……なんか薄いし色々と見えてるから隠して?」


「断ります」


「お師匠の頼み断らないで欲しいなぁ」


「だけど断っちゃいます!」


 そんな会話を2人でしていると、勇者の隣に座っていたマネが立ち上がりリウの元による。


「リウ。女の子なんだから獣の前ではちゃんとしないと危ないわよ」


「え、獣って……むしろ紳士なのに」


「あら初耳ね。それじゃあリウ、紳士に襲われる前に髪乾かしに行きましょうね」


「えっと私襲われても……」


「あー!え……!」


 ▶勇者は色々とヤバそうだ


「リウ、勇者様が本当に獣になりそうだから辞めてね?」


「え、でも……」


「ほらもう、髪乾かししてあげるから早く行きしょう」


「え、乾かしてくれるの?マネちゃんがそう言うなら行こうかな」


 そうして、リウとマネは髪を乾かしに部屋を出た。


「いやぁ、眼福だね勇者」


 そしていつの間にか現れていた、ちびフェルである。


「そうか、じゃあその目を潰ししてやろうか?」


「あはは目潰しなんて面白い冗談だなぁ」


 ▶勇者の目潰し

 しかしルシフェルは避けた


「危ないなぁ。え、冗談じゃなかったの?」


「冗談なわけないだろ。今度は避けるなよ」


 立ち上がった勇者はジリジリとちびフェルに寄る。


「勇者怖ーい!にっげろー」


 ▶ちびフェルは逃亡した


「はぁ……」


 まるでいたずらっ子のように笑いながら逃げていくルシフェル。

 しかし、勇者はそれをおいかけることはせずに再度ソファにかけて一息ついた。


「それにしても……もうすぐ2年か」


「だね」


 一息ついたところに、フィリが現れ当然のように横に座る。2年の旅で19歳となった彼女の背は勇者の背よりほんの少しだけ高い。


「フィリ……毎回迷惑かけてごめん」


「いきなりだね。でも私は·····勇者に必要とされて嬉しい」


「そっか」


「それに、いつも守られてたから·····今回は新鮮で、楽しい」


「フィリが楽しいと俺も嬉しいよ。だけど、男の子として不甲斐ないです」


「勇者、へこんでる」


「まぁ男は、大切な人を守りたい生き物だから」


 勇者は、どこか寂しそうな目で呟いた。


「⋯⋯ね、勇者。露天風呂、一緒に入ろ?」


「え、でもあそこ混浴」


「今の時間なら、2人だけだから、問題ない」


「いや、問題しかない!」


「私勇者と一緒がいいな……」


 ▶フィリの潤んだ目

 勇者には効果抜群だ!!


「……そう言われたら、断れないよ」


 ▶勇者は立ち上がった


「じゃあフィリ、行こうか」


「うん」


 ▶勇者はフィリの手を握り露天風呂へ向かった


 ◇


「あったかぁ……沁みるねぇ」


 外は暗く、少し冷たい風が吹いている。その中で暖かいお湯に入ったのだから勇者も安堵の声を漏らす。


「うん·····気持ちいい」


「最高だ。旅の疲れが一気に癒される。まぁ今回は見てるだけになったけど」


「今まで頑張ったから。たまには、休んで」


「うん。でも今回が最後の旅だから」


 勇者は「()()()旅ができる」とルシフェルの寝床で宣言をしている。


「勇者、街を全部救って、それで旅が終わったらどうする?」


「旅が終わったら?分からないや」


「約束、覚えてる?」


「覚えてるし分かってるよ。ずっと叶えることが出来なかったけと……もうすぐだ」


「私、その日がくるの……待ってるね」


「うん……うん?」


「勇者、どうしたの?」


 勇者は、異変を見つけた。見つけてしまったのだ。こちらを覗いてニヤニヤとしているちびフェルを。


 見つけた以上、本当は今すぐこの場で排除したい。しかしフィリに言おうものならせっかくの露天風呂もろとも消える可能性があるから動けない勇者。


「フィリ、ちょっとのぼせてこない?」


「それって……誘い?」


「あ、違くて。あの……普通にそろそろ出た方がいいかなって」


「ならまだ、2人でいたい」


 その言葉に勇者は嬉しそうで複雑な顔をしている。と、そんな時。なんとニョロニョロと伸びる透明な何かによってちびフェルがどこかへ消えてしまった。


「あ……じゃあ、もう少し一緒にいようか」


「うん」


 ▶勇者はフィリと2人で露天風呂を堪能した


「―――いや、露天風呂最高だった」


「ね」


 露天風呂から出た勇者とフィリ。2人仲良く手を繋いで他の3人の元へともどると……


「手繋いで……ねぇマネちゃん、もしかして2人もっと仲良しになったのかな?」


「こら、女の子がそんなこと言わない。けど……お楽しみだったのは間違いないわ」


「ぉ"が"ぇ"り"」


 2人でヒソヒソとするリウとマネ。そして顔の原型がないちびフェルが待っていた。


「健全なお風呂タイムでしたが?」


「……一緒にいれて、楽しかったよ」


「それはそう」


 勇者とフィリはとても満足そうだ。


「私もお師匠様と一緒に入りたかったですー」


「もうリウったら……でも、あと何回かここに来たいわね」


「そうだね。いつかまた……ルシフェルを除く皆で来れたらいいな」


 そう言うと勇者は、遠くを見つめた。


 ▶露天風呂を通じてパーティの友好度は上がった(ちびフェルは除く)


 ◇


「うん、今日も楽しかった」


 皆が寝静まった頃に勇者はそう呟いた。


「本当に2年間楽しかったな。たまたまエーさん達と出くわしたり、リウの記憶も戻っちゃったり……やらかしてるなぁ」


 勇者は感傷に浸っている。


『そうだね楽しかったね!いやぁ君の旅についてくなんて今まで無かったから僕もたのしかったよ!まさか僕が守られる側になるっていうのも新鮮だったからなぁ。大満足だね?』


 しかし感傷に浸っている勇者の脳内にルシフェルが水を差すように語りかけてきた。


「……変なやつがいなければもっと良かったんだけどな。特に今日は」


『え、変なやつなんていたの?気づかなかったなぁ』


「……」


 ▶勇者は鬼の形相をした

 しかし、ルシフェルに効果はない


『ごめんって!もうこんなに楽しい旅で黙らないでよ?いや、楽しい旅だったからこそ黙りたくなるっていう気持ちも分かるけどね』


「いや、今黙ったのは100お前のせい」


『ひどい!勇者のバカ!もう知らない!』


「はぁ……()()()()にお前を連れてくなんて正直、もったいなかったな」


『最期だからこそ2年間だけでも仲間と一緒に居たかったのにね。でも、それには僕を無力化する必要があったんだから仕方がないね』


 その無力化が解除されたルシフェルは笑いながら答える。


「最期なんだ、少しでも皆と一緒にいたいと思うのが当たり前だろ?」


『ソルドとかビルとか、一緒に居たい仲間はいただろうに……最後の最後は男を連れて行かないなんて君って意外とスケベだよね』


「欲望に忠実に生きた結果だ。俺だって男……むしろ今まで一度も手を出してない時点で誠実だ」


『出してないと言うか出せなかったの間違いじゃない?』


「どっちみち意味は同じだ。だってこの世界は―――」


2()()()()()()()()()()()だもんね。ねぇ勇者。この世界は直に最初の地点に戻る訳だけど……ずっと一緒に居られるって嘘をついたまま終わってもいいのかい?』


「今まで嘘なんて何度もついてきたんだから今更だ。それにこれは俺とお前の二人だけで背負う問題だからな」


「だね。それじゃあ今にも涙を流してしまいそうな君が駄々こねる前に辿るべきエンディングに行こうか」


「……あぁ」


 ▶世界は繰り返される


 ◇


「勇者よ!ソナタに魔王討伐の使命を与える!」


「いってきます。じゃあね!」


「うむ、判断が早い!」


 ▶勇者はルシフェルの寝室に瞬間移動した


「や、おはよ。過去最速でここまで来たんじゃない?」


 ルシフェルは背筋を伸ばし、勇者に視線を合わせ呟く。


「今回は旅じゃないからな」


「それもそうだね。それじゃあこの世界、壊そうか」


「あぁ、全部終わらせる」


「思えばここまで試行錯誤してきたよね。この世界が僕を閉じ込める為だけに創られた世界だったり、四天王と僕、そして君以外はこの世界の為だけに創られたゴフェルに生きる生物のコピーだったなんて。僕達が繰り返している間もゴフェルでは魔王も、君も、僕すらもいない平和な世界で1年、また1年と歴史を刻んでいるのかな?」


「なんで今更なんでそんな昔に考えた話を……なんだ、今になってお前も怖くなったか?」


「うーん、この世界が消え四天王と魔王はゴフェルに戻ると、今も僕の体内に生きる彼らの存在が矛盾してしまう。色々と矛盾したこの世界でしか今のカッコイイ完全体の僕は存在出来ないだろうね。……だからもう少し世界壊すの遅らせない?」


「無理」


「知ってた!今のは冗談。それに、君がどうにかしてくれるだろうから。本当はね、君という友に消えて欲しくないんだよ……本当に」


 そう言うと、ルシフェルから数滴の何かが垂れる。


「なんだ、気色悪い。ついさっきまで楽しい旅出来たんだから未練なんてないだろ」


「むしろ未練が湧いたね。あんな旅を何度もしたのに未練がない君がおかしいんだよ」


「未練が無いわけじゃない。ただ、俺は俺の欲望の為にこの世界を終わらたいんだ」


「あぁ、それが君の選んだ終わり(エンディング)だもんね。僕は決して止めない。……そして、本当に説得しないといけないのは僕じゃない」


「知ってる」


 勇者はそう言うと、目を瞑った―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ