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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
サイドクエスト

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重要なタイプのサイドクエスト

 もう、どれだけ時間が経っただろうか。


 何度繰り返したのだろう。この世界で行ったことのない場所の方が少ないくらいだ。


 ルシフェルから計画を伝えられてから、今に至るまで、十分なくらいにそれを達成するのに必要な力も手に入れた。いつの間にかルシフェルにだって勝てるようになった。


 フィリには、何度も心配をかけた。幾度同じ用に旅をして抑える事が出来ない事が何度かあった。それでも、もうすぐ全部終わる。


 今足りないのは、覚悟だけだった。


 ◇


「この村は初めて見たな」


 王様からの言葉で目覚めてから、フィリと会う前に何ヶ所か行ったことのない場所に行く、というのが俺の慣れた行動パターンだった。そして今回訪れたのは村、ツイカサレター村という場所だ。


 瞬間移動を編み出してなければこんなタイミングからは行けないほど遠くにある。

 ……しかし、この村危ないな。


 一目で分かる。全体が異質な魔力で覆われている。とても強い力だ。


 村の中へ足を踏み入れてみる。とても静かだ。……あ、人がいた。井戸の辺りに集まってるんだな。辺りも木に囲まれた自然豊かに見える村だけど、森……木が魔力を発しているらしい。木に近づくのは危険だな。


「このツイカサレター村に人が来るなんて……ここは危ない。森を抜けるにも一苦労、目的地は分かりませんが戻って違う道を通った方がいい」


 言ったのは老人。村長だろうか。


「この村を救いに来ました!俺は勇者ですから」


 俺がそう言うと、村長の目が丸くなった。


「勇者……!?本当ですか?しかせなぜこのような村に、天からの救いか……奇跡だ」


「本当です。俺がこの村を救います。ちなみに今この村ってどういう状況なんですか?」


「はい、それが森に魔王を名乗る存在が現れまして……森全体の木を生命力を奪う呪われた木に変えてしまったのです。だから私たちは長い間家に入ることもできません」


 ……魔王が?いや、本当の魔王ということは無いだろうけど。だって、そこまで強い力を持つのなら相応の気配が分かるはずだ。魔王ではない。……ただ、魔王を名乗れるくらいにはこの森にかかっている力は恐ろしい。


「それは大変だ。でも大丈夫。俺がこの村の事救いますから!だから安心してください」


「おぉぉっ……ありがとございます!」


「それじゃあ、何か森についてわかっている情報とかあったら教えてください。皆さんの力が必要です」


「はい!まずこの木は……」


 ◇


 とりあえず村長さんから聞いた情報をまとめようと俺は1人、村の人から離れた場所に移動した。


 どうやら木は魔法が通じないらしい。

 かと言って気を倒すために近づきすぎれば生命力が吸われてしまう。


 ……生命力に関してはまぁ、死なない程度になら吸われても問題ないか。


 それに木を倒す分には風圧で十分だ。

 ただ、それじゃあダメだ。

 この村にとって木はとても大切なものだ。

 暮らしに欠かせない。どうにかこの村の自然を守りながら自称魔王を倒せないか。


 いっそ森に魔法が効かないかなら全体を覆う魔法を使うか?そうすれば自称魔王だけ攻撃出来る。……けど魔法効くのか?

 それに自称魔王を倒した瞬間に魔法耐性が消えたら森が破壊される。


 ……ダメだなぁ。


「―――あの、どうか今からでも依頼は取り下げてください」


 あ、さっきからこっちを隠れて見てた赤髪女の子だ。


「いや、依頼は取り下げないけど」


「取り下げてください!あの木はあまりにも危ないんです……人間じゃ太刀打ちなんて出来ません。いえ、出来たとしてもそれで生命力を奪われてしまっては……」


「……え?いや……触れなくても風圧で壊せはするんだよ」


「嘘ですよね……?安心させるための。そんなの人間にはできませんよ」


「それが、出来ちゃうんだなぁ。俺、勇者だからさ!だから大丈夫」


「それなら今すぐやってみてくださいよ」


「え……いや、それは」


「出来るんなら、迷う必要はありませんよね?……無理なんですよやっぱり」


「できる、できるから!ただ木を倒しても意味無いでしょ?その自称魔王を倒さないと問題は解決しないし。で、その自称魔王は森の中に潜んでると思う。だからそれだけをどうやって倒すかを今考えていたんだ」


「え?」


 困惑してるなぁ。


「魔王だけを……?」


「そう、魔王だけを。俺もね勇者としてこの村の自然は守りたいんですよ。だって君たちにとってこの森全体だって大切でしょ?」


「それは……そうですけど」


「でしょ。だから俺は考えるよ方法ってのを。もちろん、直ぐに答えは出す。出せなかったらその時は命賭けるから」


 生命力賭けてでもやってやるさ。

 この村は過去見てきた場所でも一番緊急性が高い。今までに見つけられなかったのも……時間が経てばきっと滅んでしまうからだ。


「命をってなんで……そこまで、できるんですか?貴方はこの村にきたばかりなのに」


「できる限り救いたいっていうか、見て見ぬフリはできないしさ。……何より、俺には救える力があるから」


「……だったら私も一緒に考えさせてください!勇者様が頑張ってるのに村に住む私が何もしないなんて嫌だから」


「あぁ。じゃあ一緒に考えよう。ところで君……名前は?」


「モミです。よろしくお願いします、勇者様」


「うん、よろしく」


 しかし、本当にどうしたものかなぁ。

 魔王だけをピンポイントに攻撃する方法。


 ◇


 夜が明けた。作戦は考えた。名付けて即殺大作戦。


 まず森に入ります。生命力を吸わせます。

 吸った生命力で自称魔王が強くなります。強くなったら存在気づきます。倒します。


 ……まぁ、やっぱり生命力を吸われるのは避けられないよな。だけどできる限り少ない生命力で済むように頑張るんです。


「勇者様……本当に、いいんですか?」


「うん、モミちゃんは俺の事信じてて」


「……はい」


 モミちゃんはニッコリと笑い―――


「勇者様……後はお願いします」


 そして木に触れた。


「……は、おい、何やってる!木を離せ!」


 言うまでもなく、モミは木から離れた。いや、倒れた。


「誰か、早く運んで看病しろ!」


 今すぐにでも俺が運びたい。けど、一瞬だがどこかで強くなった奴が森の奥にいた。そいつを殺せ。……殺す。


 ▶自称魔王は、一瞬で殺された


 ……最悪だ。予想してなかった。まさかモミさんが自分を犠牲にしようとするなんて。ちゃんと見ていればこんなことにはならなかった。


 ―――それから、モミさんはちゃんと目を覚ましはした。それでもあの一瞬で生命力はかなり吸い取られた。寿命にかなり影響するレベルだ。力のない女の子が触ったのだから……こうもなる。


 直ぐに死ぬこということは無い。間違いなく2年は生きる。それでも、それでも。


 ……自称魔王の魔力が殺して直ぐに無くなるタイプで良かった。直ぐに家で看病出来た。

 瞬間移動が出来て良かった。遠くに薬を買いに行けた。


 村を救ったのに、村人は全員どこか辛そうにしている。村の中でも若い子が命をかけたのに自分達は見るだけだったからだ。

 それが悪い事なはずは無い。それでも、罪悪感を抱いてしまうのだろう。


「ねぇ、モミちゃん。なんであんな事したの」


 村を出る直前。俺はそれを聞くことにした。聞いた方がいいと思った。


「なぜでしょう。自分だけ無力なのが嫌だったのかもしれません。……私、きっと村に恩返しがしたかったから」


「恩返し?」


「私、親と離れ離れになったんですよ。小さい頃に……兄と一緒に。両親が悪い訳じゃないんです。魔族に襲われたんです。それ命からがら逃げたのがこの村でした。みんな優しく受け入れてくれて」


 この村に髪色がピンクなのは……1人だけだ。


「両親と別れたのに、ここでの暮らしは幸せだったんです。幸せだったのに……魔王が現れて。最初の時に魔王を倒すために森に入った何人かが命を落としました」


 ……。


「それを見てもう幸せに暮らせないと思いました。水を飲むための井戸も前までは木に囲まれていて、本当はもっと早く死んでいたかもしれません」


 けど、俺が来た時に井戸の周りに木はなかった。


「兄は鍛えて村に恩を返すためにって強くなったんです。それで、生命力を使って井戸の周りの木を倒したんですよ」


「お兄さんは、強い人だ」


「自慢の兄です。でも、私はその時どうせ長く生きれないのなら一緒に死にたいと思ってしまいました。私は弱かったので。けど……そんな時に勇者様が来たんです。勇者様の姿を見て、私も誰かの力になる覚悟ができました」


「そっか」


 否定をすることはできない。


「本当にありがとうございます。勇者様のお陰で兄の覚悟は無駄にならなかった。私も、村へ恩を返すことができたから」


「……そっか」


 ◇


「なぁルシフェル……俺は今回自称魔王に会ったよ」


「勇者!今回は凄く元気がないね。フィリちゃんはいつも通り宿屋に置いてきてるけど……久しぶりに呪ってたりするのかな?」


「……冗談に付き合ってる余裕は無い」


「OK。自称魔王に会ったんだね。どんな感じだったのか記憶見ていい?」


「勝手にしろ」


 ▶ルシフェルは記憶共有した


「あー自称魔王っていうか……次期魔王というか、元魔王?何世代も前の魔王が小さな村で復活してたみたいだね。それで手始めにあの村で力を付けようとしてたみたいだ」


「ただの自称魔王じゃないのか」


「うん。あと50年くらい放置してたら世界の半分くらいなら全部養分になったかな。魔王時代はカイエルお手製天啓勇者様じゃなきゃ倒せない強さでもある」


「そうか」


 ……本当に、すぐ倒さないとダメそうだ。


「ところで勇者、覚悟は出来たの?そろそろ計画をしないと」


「出来た。次は最期の旅だ。だから好きに生きる」


「うん、とても楽しみだ!」


 ▶勇者はルシフェルを倒した!


 ◇


「勇者よ!ソナタに魔王討伐の使命を与える!」


「ん、いいよ!」


「そうか、やはり駄目か……」


「いや、いいよ!」


「やはりそうか……だが、魔王を討伐した暁には金貨100枚を―――んん?今なんと言った?」


「だからぁーいいって言ってんだろ!このやり取り何回目だよ!」


 もー鬱陶しいなぁ。そうだ、今回はとびっきり自由な旅だ。普段はやらなかった事だってやってやろう。あの王冠とか椅子、前々から興味あったんだよねぇ。


 世界を救う勇者なんだ……もう好きに生きさせてもらおうかな。


……さてと、どうしてやろうか!




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