見たくない件(1)
「……本当に?」
ユンナさんから聞いた内容は俺に強く衝撃を与えた。それは既視感のあるあまりに考えたくない事。
「そう。魔王を討伐して次の朝にはルミリは消えたの。本当に何の前触れもなくね」
「……」
「アンタ、顔色悪くなってるけど大丈夫?」
無理だ。考えたくない可能性が脳裏を過ぎってしまう。初めてルシフェルを倒した時俺はどうなった?再び、始まりの日に戻った。
同じなんじゃないか?
俺がいけないだけで皆は2年よりも先を歩んでいるとしたらフィリ、ソルドさん、ビルさんも同じように俺が急に姿を消した事になる。やめて欲しい、それだけは嫌だ。
「おーい、聞いてる?ちょっと!」
「すみません。少し、考えていて」
「……しっかりなさいよ」
ユンナさんの鋭い視線が俺を貫く。
「え」
「私はアンタが勇者だとしても、ルミリが私に何にも言わないで勝手に居なくなるなんてありえない。だからルミリは絶対生きてるしこれからもルミリの事を探し続ける。だからアンタも絶対に諦めるな。アンタの大切な人の為にも」
「大切な人」
「そう、大切な……大好きな人がいるんでしょ。だったらもがきなさい。アンタが求める未来の為に」
あぁ。分かっている。そんな事は分かっている。ずっとそうだ。ただ1つの未来の為だけに俺は頑張っているんだ。たとえ、どんな事実が待っていようと、俺は俺が求める道を……つくるんだ。
◇
「綺麗だったなぁ」
情報交換をして俺はユンナさんと別れた。
その最後、初めて「ユンナ」という人間の姿を見た。別に惚れないけど、綺麗だと思っていた。
「さーて、次は魔道士さんの所へ行くわけだけど場所が分からん。ユンナさん曰く雲の国フワーラって所に居るらしいけど場所を聞く前に国王さんの邪魔が入ったせいで……」
名前的に雲の上にあったりするのだろうか。
雲の上ってどうやって行くんだマジで。
ジャンプか?飛び上がれば意外といけるのか?
▶勇者のジャンプ
勇者は凄く高く跳んだ
勇者は雲を飛び越えた
「行けた!やったね」
俺は雲を飛び越えた。意外といけるもんだな。まぁ、飛び越えただけなんだけど。
流石に安直に雲の上に国があるなんて事はなかった。ただ高く跳んだだけ。
「……情報収集するか」
▶勇者は情報収集した
「よし分かった。分かったぞ」
近くの酒屋で色々な人に聞いた情報によるとフワーラへ行くには地底遺跡にあるワープゲートを通る必要があるらしい。
とりあえず俺は地底遺跡の近くへ向かう事にした。
そして街へ続く道ということで特に危険な事も無く、俺は地底遺跡を制覇してついにフワーラへと足を踏み入れる。
「凄いなぁ」
雲の国フワーラ。その名の通り雲の上に存在している。このフワフワとした雲の上を歩くのに足がすり抜けてもおかしく無さそうだが何かの魔法によってそうはならないみたいだ。
なんなら果実が実った草や綺麗な水が湧いている場所まである。どうなっているんだ。
……いや、それよりも魔道士のボツラという人を探さないとだな。探すまでもないか。
だって目の前に「ボツラ」と大々的名前が彫られている家がある。凄く目立っている。
「すみません、ボツラさんいますか」
扉の前でとりあえず名前を呼んでみた。
返事は無い。……居ないのかな。
「あの、ボツラ君に何か用なんですか?」
俺は眼鏡を掛けた何処か素朴な印象を受ける少女に話しかけられた。しかし格好は中々なものをしている。上下白いフワフワな……雲を身にまとっているのか。これは服と見なしていいのか怪しい気がする。
俺はその問いに対して頷いた。
「珍しい。それにその格好……もしかして下の世界で出来たお友達?」
「直接の友達というよりは友達の友達ですね。初対面になります。ただ少し彼に聞きたい事があって」
「そうなんですね。……なら私が代わりに聞いてきましょうか」
……む、出来たら直接聞きたいんだけど。
「直接話すことはできないんですか?」
「難しい……ですね。彼は人見知りなのかこの国ですら私以外の人とは話してくれない人見知りなので」
「そうなんですか」
「はい。私はボツラ君の幼なじみでずっと一緒に居たので何とか。なので初めての人となると」
「何とか、掛け合ってはもらえませんか」
「いいですけど……」
話は進んだ。俺は彼女の跡をついて行く。それから止まったのは1つの神殿のような場所。
「ここです。ボツラ君は毎日ここで勇者様を待っています」
勇者様……ルミリさんを?
「ここはどういった場所なんですか」
「ここは人の記憶を司る場所。この世界に生きる人間全ての記憶がここにはあるんです」
そんな場所があったのか。というかこの場所ならルミリさんの記憶も手っ取り早く見れるんじゃないか。
「それじゃあ、彼に呼びかけますね」
(コンコン)
彼女が扉を叩く。
「ボツラ君、入ってもいいですか」
それから少し間が空いて声が返ってきた。
「リ、リプ……?ご飯なら外に置いて置いてよ。は、入ってきちゃダメだから!ただリプが嫌いなわけじゃなくて、あの……」
リプ。彼女の名前か。ボツラさんは思ったよりも声が高い。若そうだ。
「ご飯じゃなくてね、ボツラ君にお客さん」
「客!?だ……誰?」
「……えっと、なんて言うんだろう」
「ちょっとリプ、誰か知らないの!?知らない人の言うこと聞いちゃダメだって」
……自分で名乗った方が良さそうだ。
「初めまして!俺はソルドさんと、それからユンナさんの知り合いです」
一緒に旅をした2人の名前を出せば多分大丈夫のはず。
「え、あの2人の?なら……大丈夫かな」
「ボツラ君、この人直接話したいみたいなんだけど大丈夫かな?」
「……うん、扉開けるね」
大きな音と共に扉が開いていく。
そうして中から現れたのは緑髪の少年だった―――




