婚約者候補になりたくて(3)
第三の試練が終わった。結果は俺の勝ちであった。……ただ、どこか違和感が拭えない。
なぜスーツの女の言葉にリッスが反応しなかったのか。ただ覚悟が無かった、という事になるのかもしれない。けれどそうは思えなかった。あの時、声に驚きはしていたがあれはとても重く聞こえた。強い信念を俺は聞いたのだ。
「納得出来ない!こんな判断は間違っているんじゃないかなぁ!」
―――と、急にさっきまで俺を睨んでいたボコラレールが怒り心頭といった様子で大きく声を上げた。
「まずさぁ、最後の試練の審査員間違ってるんじゃない!?愛のためにかけられる物をこっちは言うのに捧げる対象が聞いてないってどういうことさ?」
確かに、それはそうかもしれない。
「もしかしたら僕のあの言葉にユンナ様本人の心が揺らいでいた可能性だってあるだろ!?どうかしてる。あーあ、許せないなぁ……納得出来ないなぁ。司会さん、……いや、国王様。幻惑系の召喚獣で顔を変えているようですが」
……司会の男が国王だったのか。
「むむ、流石S級冒険者でもあるボコラレール殿。見破っていましたか」
「いえいえ、僕に貴方の魔法は見破れません。ただ、貴方程の方がこんな場を静かに城で見ているとも思えなかったので……カマをかけさせてもらいました」
「ほぉ……これは1本取られました」
「……改めて国王様、納得出来ません。勇者とはいえこの国のものですら無い男を大召喚士ユンナ様の婚約者候補にするだなんて。1つ、ここは召喚士の国。最後も召喚士バトルで決めさせて下さい」
「ふむ、まぁ貴方が言いたいことも分かりますからね。勇者様、ここは1つ彼と戦ってはくれませんか」
……まぁ断る道理はない。本来ならボコラレールが婚約者候補になっていたはずなんだ。今回はキッパリと諦めて貰うためにも戦おう。
「ふっ、森では本気を出しませんでしたがこの場では僕がS級冒険者たる由縁、その力をお見せしましょうか……いでよ!究極土竜正義聖剣神強強銃《きゅうきょくモグーラジャステスエクスカリバーゴッドマグナム》!」
ボコラレールがそう言うととても強そうな召喚獣が現れた。土色のゴツゴツとした肌。逞しい肉体をしている。量の腕にはそれぞれ聖剣らしきものと須磨太郎の記憶で見た日本で言う銃に近い物が持たれている。
頭についたルシフェル天使の輪っかのような物からはどうやら魔法も放たれるらしい。
「負ける訳にはいかない!最強のユンナ様にふさわしいのは僕だけなんだよぉ!」
「悪いけど、俺も負けらんないんだよ」
▶勇者の攻撃
勇者は究極土竜正義聖剣神強強銃を思い切り殴った
究極土竜正義聖剣神強強銃は倒れた
「な、なんだと……一撃で。やはりお前はユンナ様と同じ力を持つというのか!召喚士としても貴様は特別な存在だと言うのか!」
……ユンナ様と同じ力。前も言っていたな。なんなんだろうか。
「でも、力だけじゃない!大切なのは愛!ユンナ様が僕を見てくれれば……」
「何を言っている。ユンナならずっとそこで見ていただろう。ほれ、そこで」
そう言って王が指を刺したのはスーツの女だった。
「は、いや。そうじゃないか!なぜ気づけなかった僕は。あんな巨大な魔物を一瞬で倒していたんだ。それができるのは他に彼女しかいないはずなのに」
多分、認識を妨害するような魔法がかけられていたのだろう。対象はこの国の人全員。
化け物だ。……本当に魔王と同等かもしれない。
「ユンナ、どうだ。もういいんじゃないか彼の事は残念だったと諦めてこの勇者様を婚約者にするのは」
「嫌。私は認めない」
「何故だ。何が嫌なんだ言ってみろ。どんな婚約者ならお前はうんと言うのだ!それをしないからこんなにも大きな場を開いたというのに」
「……貴方には分からない!」
(シュンッ!)
え、なに。なんか急にユンナさんに身体掴まれたんですけど。
「お、おいユンナ、どこへ行く!」
おー、ビュンビュンと飛んでいく。速い。
本当にどこ行くんだろう。
「おい、お前」
「なんですか?」
「お前に私の事諦めてもらうから」
ユンナさんはそう耳打ちをすると、俺を勢いよく山へと墜落させられるのだった。




