婚約者候補になりたくて(2)
ボコラレールとの召喚士バトルの結果、俺は勝った。
戦闘はあまりにも早く終わった。襲いかかってきたモグーラを1度殴るとそれで終わった。
「俺の勝ちだな」
「なんだとぉ!?生身の人間に負ける?いや、この強さ……君もしかして、もしかしなくともあの方と同じ力を持っているというのか!……こんな平民が!くそぉ!」
目の前のボコラレールは何か気になる発言をしながら逃げていった。
さて、残り時間は少しでも多く魔物を狩ろう。
さっきの試合を見てた他の参加者も俺から離れていったしこれなら気楽にいけそうだ。
……ってかボコラレールからポイント貰えなかったな。ポイント持ってなかったのかな。
◇
それから、いろいろあって俺の腕の中には目玉が抱えられていた。……おかしい。
中型や大型と出くわさないのにも程度があるだろ。
(……ざわ……ざわ……ざわざわ)
……うん? なんだ、急に森の中がザワ付き始めた。それに伴い強そうな魔物の気配がここまで届いてきた。本当に強い。
下手をすればボブに相当してもおかしくない。
そんなレベルの魔物が現れたというのか?
……これも決められた事かもしれない。とりあえず向かってみよう。
「メダママギュアァ!」
気配の方へ向かうと、そこには目玉草がいた。
「お、おい!なんだよあれ……」
「デケェ!今まで見たどんな魔物よりもでけぇよサイズ的にとんでもない強さだぞ」
「特大どころじゃねぇ……。あれは超特大!伝説の100万ポイントのモンスターだ」
ただの目玉草ではない。超特大目玉草がそこにはいた。それも特大を超えるサイズということでより大きなポイントを貰えるそうだ。
「仲間の恨みぃ……ギュアァ!」
倒すか。
(―――ザンッ)
そうして、超特大目玉草の首(目)は飛んだ。
そう、一瞬で飛ばされた。
……俺でない。この場にいた一人によって。周りがその光景に騒然としている。
全身を覆うような黒のスーツと黒のブーツ。それに覆面で頭を被った人物によってそれは倒されたのだ。
こいつだ。最初に出たという特大を、そして小型以外を倒したのはきっと。……人間なのか?
魔物の首はこいつの腕の中には1つも無い。超特大の魔物の首はスーツの中にまるで飲み込むように消えていっていた。未知の使い手。
魔王に匹敵するかもしれない。あまりにも異常な存在。もし、この存在が俺のように繰り返しているのならいい。だけどそうじゃないとしたら……?
「え、こわ」
俺の口からは軽くそんな言葉が出ていた。
……魔王と同等なのは恐ろしい。俺にとって脅威になる敵ではなかった。もうあの魔王ですら一撃で葬れるようにまでなってしまったから。
ま、このスーツが悪い敵だとしたら力で無理矢理この場を荒らすだろうからとんでもないただの実力者なのか。
改めて世界は広いな。こんなにも強い存在が他にいたなんて。
……こうして、第一の試練は幕を閉じたのであった。
◇
モリモリの森を抜け、広場へ戻ると多くの肩を落とした参加者が待っていた。
あの圧倒的なスーツの人物を見て大半はリタイアをしたのだ。
そんな様子を見ていると、司会の男の声が辺りに響く。
「―――第一試験の集計結果が出ましたァ !……今回一位を獲得したのはなんと『覆面ダー』そのポイントは脅威の約101万と圧倒的な差を見せつけた!凄い、凄いぞ」
案の定特大を倒した人物はフードだったらしい。それにしても101万って……。
「続けて二位は2000の目玉を狩った今回、その注目から視線を外すことは出来ない男、勇者だぁ!」
「……あいつ勇者だったのか」
「強いわけだよ」
「でもなんで勇者がうちのとこの姫様の婚約者候補になろうとしてんだ」
「あれだろ、もと勇者パーティだった姫様の力を借りたいんだろ」
俺の名前が呼ばれると、その視線はこちらへ向けられそんな憶測が飛び交った。
少し居心地が悪い。
「そして3位はボコラレール!3位で3ポイント!順位とポイントが同じでいいね!……あれ、彼が最後の突破者!?この3人以外はまさかの0ポイントって事ですかぁ!?」
司会の男は肩の上のリッスと共に目が飛び出るように驚いてる。当然だ。あれだけの人数がいて3人、それも一位とそれ以外で圧倒的な差まで空いている。しかしボコラレール……あいつ中型モンスターを一体見つけられたのか。
「まさかの展開!第二の試練をするには少しつまらない人数だ……困ったなぁ」
第二の試練は残った30人で行われるはずだった。その内容はカグヤの山に隠された5つの伝説の武器を見つけるという内容。
その武器を見つけた5人が残るはずだった。
……が、それをするまでもなく既に人数は3人減っている。
「しかーし!試練の目的は全て姫への愛と力を確かめるため。これだけの結果を残した3人。であれば愛も力も伝わった!ということで第二の試練を飛ばして第三の試練に行きましょうか!」
第三の試練か。これの内容はまだ知らないんだよな。司会が「第三の試練は、その時のお楽しみに!」と言っていたから。
「第三の試練は『その覚悟ホント?』だ!」
……なんだ?
「これより残った3人には姫様の婚約者候補になるためにかけられる物を行ってもらいます!そう、簡単に誰の愛が1番強いかを確かめるんです。もちろん嘘はバレますからね。覚悟の強さに反応してピーちゃんの動きが変わりますから」
本当に単純な内容だ。実力も関係しない。
正直、一番厄介だ。
……他の二人の反応も見てみる。
ボコラレールは自信ありげだ。もう既に勝った気でいるのか愛の告白を空に向かってしている。スーツは顔も見えないし分からない。
「さて、さて……じゃあ3位だったボコラレールさんから覚悟を国にしてもらいましょうか。大勢の前だからって恥ずかしがっちゃダメですよぉ?」
「ふっ、このボコラレールに恥なんて概念は無いさ。姫の為ならばこのボコラレール、その全ての愛をかけましょう!ユンナ様以外の誰も愛すことはしません……そう、私は貴方の愛の奴隷になれます」
「「「おおぉぉぉ!かっけぇー!」」」
ボコラレールの言葉に他の参加者が歓声を上げる。それに伴ってか、ボコラレールの姿もより輝きを増しているように見える気がしないこともない。
「ギュアー!」
と、リッスが大回転し始めた。これが覚悟次第で大きくなる反応か。
「ギュギュギュギュア!」
なに、空中で5回転だと。……!止まった?
違う。指でハートを作ったのだ。小さく短い手で。
「これにてフィニッシュ!これがボコラレールの覚悟!ピーちゃんも素晴らしい反応を見せてくれた……!さぁ次はあの勇者様の番だ。果たしてボコラレールを超える反応は見られるのかぁ!やはり愛の告白はされるのか」
期待の眼差しが一斉にこちらに向かれる。
……まぁ、言う事は決めたさ。
「俺がユンナ様にかけられる物は《《命》》です」
かけたっていい。これも目的の為だから。覚悟は既に決まっている。
そして次の瞬間だった。……リッスが分裂した。
「ギュア!」
「ギュア!」
「……は?え」
なんで?2匹なった。
「ギュギュ……」
元からいたリッス1がリッス2の前に片膝をつき手を握る。
「ギュギタ!」
「ギュン!」
……言葉に答えるようにリッス2が大きく飛び跳ねてから1を抱きしめた。
「ギュギュ」
「ニュニュ」
2匹は幸せなキスをした。
「おおっと!なんだこれは、なんだこれは!分裂したピーちゃんがまさに、まさに愛を体現したぁ!これは凄いぞ……!凄い!ボコラレールを超えましたぁ!勇者様の愛は最強と言っていいでしょう!」
「「「う、うおおぉぉぉ!」」」
盛り上がっている。非常に場は盛り上がっている。しかし、ボコラレールだけはただ静かにこちらを睨んでいる。
「さぁて……覆面ダーの番ですね!勇者を超える事はできるのか」
「“私は全てをかける“」
……お、おぉ。なんと。
俺はここで初めてスーツの人の声を聞いた。男では無い、そのスーツ姿からは想像できない高く可愛らしい声。女の人だったのか。
「ギュア……」
そしてリッスの反応……え。それは、予想外のものだった。
「反応なしだぁ!」




