婚約者候補になりたくて(1)
ついにこの日がきた。
婚約者候補の話を聞いてから1週間。
1度も目的の顔を見ることは叶わずにこの日は訪れ、婚約者候補となるためにその試練に参加した。それも……「勇者」として。
門番に身分を明かした時にこの国の王から目はつけられていたのだ。そのお陰で参加を申し込んで直ぐにそれは了承された。
「ついにこの日が来ましたぁ!そう、皆さんご存知ですね。あの魔王の討伐に貢献した名誉あるこの国の第一王女であり、大召喚士ユンナの婚約者候補を今日ついに決めるのです!」
今いる場所は王城すぐ近くの広場。
ここで大々的に開始直前の挨拶が行われる。
……しかし、変な感じだ。過去に繰り返した旅でも同様にこんな大きな舞台の中、呑気に婚約者候補が決められていたなんて。
「さて、さて……今回行われる3つの試練について発表しましょう!まず……その1!」
司会の男が人差し指をたてると、男の服がもごもごと動き始める。
「ピ-ヤ」
そして、その中から小さな小型の動物が1匹現れた。
……あれはリッス。大体の森に生息する動物。魔物でいえばスッライムと強さは並ぶ。
「はいこの子は私の召喚したねピーちゃんです!ここにいる皆さん、当然ながら召喚の心得はありますよね?第一の試練では召喚士バトルをしてもらいます!」
……知らないんだけど。どうしよう、最初から知らない物が出てきた。召喚なんて俺はしたことが無い。
「今回のバトルフィールドはみんな大好きモリモリの森!今日もモーリモリ魔物湧いちゃってるねぇ。小型、中型、大型……なんと特大まで!この魔物達を倒すとポイントが貰えます!」
特大。その言葉に後ろにいる男二人が反応を示しているようだ。
「マジかよ……特大までいるのか。これはあちぃな」
「あぁ、特大の魔物を取ったやつが圧倒的有利になるだろうよ」
らしい。
「最初の試練では魔物を倒して稼いだポイントが高い上位30人が二つ目の試練への挑戦権を得るよ!さぁ皆頑張ってね!今回の制限時間は3時間。《《バトルを利用して》》有利に進めよう!」
良かった、どうやらルールは単純なものみたいだ。できるだけ強い魔物を倒せばいいのだろう。
「あ、一応確認だけど武器の持ち込みは禁止!武器は君の相棒の力だからね!」
まぁ問題無いだろう。
◇
―――モリモリの森
ついに始まった試練。バトルフィールドに入ってから30秒。俺らは各自バラけるように場所を移動をしていた。
しかしこの森、中々に強そうな魔物が多い。小型の魔物、中型は冒険者であれば誰でも倒せそうだが大型は巨大パンダと同等はある。
……ポイントの差が大きいのも頷けるな。
それぞれのサイズに振り分けられたポイントは小型が1、中型は3、大型は100、特大は1000。それぞれのモンスターの首にその価値がある。
制限時間中、首を入口に待機している男に渡す事で初めてポイントとして成立するらしい。
「グギャ!」
早速一ポイントの魔物だ。
小さい。名前は目玉草……だっただろうか。
全長20cmの二足歩行の目玉に足がついた何とも気持ち悪い奴だ。
……こいつに首無くね?目じゃん。
「まぁいいか」
▶勇者は多くの敵を刈り取った
大体10分が経った。結構なモンスターを倒した。優に300ポイントは超えている。
俺の腕の中にはの500目玉が抱えられていた。
流石に邪魔だな、交換した方が良さげだ。
「へいらっしゃい!ポイント……交換する?」
「お願いします」
▶勇者は500ポイントをGETした
……いや、効率が悪いな。待機時間に見た3ポイントの敵にすら出くわせていない。まぁ参加人数があまりにも多いせいか。参加者は約600。殆どはこの国の男で森を熟知している人間だ。
小型以外を皆で狙っているのか。
それでもこの森は名前の通り倒した分新しくモリモリと魔物が湧いてくるから時間が経てば高ポイントの魔物にも会えるだろう。
「クギャッ!」
……はぁ。
▶勇者の手には再び500の目玉が抱えられた。
「あざっしたァ」
これで1000ポイント。残り時間は1時間。
未だに俺は目玉しか見ていなかった。
……これだけでも、ポイントとしては十分か。
この時点で特大一体分のポイントがあればきっと問題は無いはずだ。魔物を倒した数は誰よりも多い。
それに大型魔物との戦闘となれば音も大きく、それだけで大体分かるはずだしそう多く無さそうだ。……まぁ、圧倒的差で大型、ましてや特大の魔物の首を取れる程の実力者がいなければの話だが。
「ちょっと君、待ちたまえよ」
突然話しかけられた。
「はい」
残り時間、少しでもポイントを稼ぎたいが無視は良くないよな。しかし変な男だ。
防具は金ピカに光ってるし、なんなら武器を持ってる。攻撃用じゃない防御に使うための盾だけれど。……ルール的にどうなのだろうか。一緒にいる魔物も金ピカだ。
これは……モグーラだっただろうか。一応龍種に近い生物で強さも実際の龍には及ばすとも中々のものだろう。
「君が交換に行くのを見ていたよ。今1000ポイント持っているんだってね」
「はい」
「凄いね。どうやら最初に特大、そして大型を多く狩られてしまったみたいでね皆ポイントが無いんだよ」
なんと、特大は最初に狩られていたらしい。特大は珍しいからその最初にいた一体だけだったのかな。
「皆が中型を探す中、君だけだよ小型をあんなに倒したのは」
「はい」
「……きっと君は上から10番目以内にはポイントを多く持っているだろうね」
なんか男の目がキラリと光った。
「教えてくれてありがとう」
これなら予選を抜けられそうだ。いや、こいつの言葉が嘘で油断を誘っている可能性も……。周囲もザワついているな。
何人かの参加者が俺らの方を見ている。狙っている。
「ふふ、ありがとうは僕のセリフさ。君に、召喚士バトルを仕掛けよう!このボコラレールが相手をするのは」
「……」
何それ。分かんなくて黙ってしまう。
……そういえばそんな言葉をルール説明の時に言っていた気はする。
「どうだい、怖くて震えているかな?君は一ポイントの魔物しか倒せない臆病者みたいだからね」
「お……おい、お前割り込んでこいよ」
「ふざけんな!消耗させる作戦なんかにのるかよ」
「ってかボコラレールって確かS級冒険者だろ?何人でいけば勝てるのやら……」
周囲の冒険者が何か言っている。なんだこれは。
「君は僕に負けてそのポイントを渡すのさ!」
そうか、分かったぞ。召喚士バトルは参加者同士がポイントをかけて戦うのか。
「なら、受けて立つ」
こうして、俺の初めての召喚士バトルが始まるのだった。




