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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第三章 この世界は定められている

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そして天使は語った

 ―――昔昔あるところに、1人の聡明で賢く、世のことわりから外れた聡明な天使ルシフェルと使命に縛られる可哀想な天使カイエルがいました。


 そんな二人の仲は良く、互いに『面白い世界を創る』という目的の元に協力をしていたのです。


 そうして二人の協力によって創られたのが世界『ゴフェル』。ゴフェルは不完全なものでしたが、だからこそ生まれた強大な敵、『魔王』に人間が試行錯誤して立ち向かうドラマは面白く、その内容には神も大満足していたそうです。


 神も満足するような面白いものになった理由の1番はなんと言っても『勇者』という存在。


 誰もが諦める状況で『勇気』というたった1つの感情を武器にただの人間が世界に抗うのです。その姿は天使ルシフェルも心を打たれたとか。


 それから、勇者によってもたらされた平和によって人間達はおよそ100年もの間、楽しく暮らしその生涯を謳歌しました。


 けれども、ゴフェルは常に変化を起こし時間の流れが新たな『魔王』を誕生させます。


 それに伴うように、人間側にもまたその度に新しい勇者が現れる。

 そんな何度も何度も繰り返されるドラマは神にとっての娯楽の1つでした。


 天使達も、人間達が成長していく姿に喜び、嬉しく思っていて。


 魔王を倒すという結末は同じ勇者。けれどそのどれもが違う道筋を辿る。

 飽きることのないもの。


 ―――しかし、それが幾度も繰り返される内に人間側にとある変化が訪れてしまいます。


 それは人間のサガなのか、「勇者様が助けてくれる」という甘えた人間の他責的な考えが次世代の勇者誕生を阻むことになったのです。


 魔王を倒す度に生まれる平和な時間に慣れた人間はついに『自分が勇者になる』という選択を忘れてしまったのです。


 人間から生まれた勇者という存在が当たり前となった世界で勇者が消える原因となったのもまた人間だったのです。


 こうして勇者は現れること無く魔物によって世界の均衡は崩されゴフェルは消えることになるはずでした……そう、カイエルの介入が無ければ。


 神が好きであろう世界を守るためでしょうか……なんと、カイエルは直接的な介入をしてしまったのです。


 それこそが『《《勇者の天啓》》』。


 カイエルは神という存在を世界に示し、その信仰者を伝って適当な人間を勇者として魔王討伐の使命を与えました。


 自らを勇者と言われた者は、自分を特別だと思い込みその使命を果たす。

 カイエルの行った行為によって結果的に人類は救われました。


 しかしそこにはかつてルシフェルの感じた人間の面白さは無く、むしろ人間、そしてカイエルに《《醜さ》》を覚えた。


 人為的に生み出された勇者は天使、人間の欲から生まれた呪いによって通常の何倍にも及ぶ成長性を得ることができたのです。その成長性により下手なことが無ければ死ぬことは無く、死んだとしても天使の理不尽な力で蘇える世界の誕生です。


 勇気ある物が得た称号勇者。それはその人物本来の生を歪める呪いへと姿を変えた。


 神はこの世界ですら、面白く思ったのかもしれません。ならば神によって生み出されたカイエルは使命のために世界を守る。


 ―――しかし、そんなカイエルとは相反するように聡明なルシフェルはとある行動を起こします。


「カイエルによって定められた世界が嫌でたまらない」そう思い、そして気づくのです。自分もまた、神の為に面白い世界を創るという天使の定めに縛られていた事に。


 そうしてついにルシフェルは神、そしてカイエルに反逆を起こしました。


 とは言っても、神に創られた存在のルシフェルが勝てるわけも無く結果的に地の果てまで堕ちることにはなりました。しかし最後に大きな呪いを残していったのです。


 かつてのように勇気を武器に立ち向かう人間が生まれることを願い、『本当の勇者にしか勇者の天啓を与えられない』そんな呪いを―――


 終わり


 ◆


「いやぁ、我ながらいい最後だったと今でも思うよ」


「つまり俺が今何度も繰り返すことになった元凶はお前ってことじゃないか……最悪だ」


 カイエルと記憶を共有するようになって最初の繰り返しで、見ることの出来なかった記憶について話をして貰ったが結局はこいつが1番の悪ではなかろうか。


「ふふ、なんと言われても僕は君が好きだよ。僕の呪いによって勇者が生まれることが無く世界が滅びるのも良かったけど、再び僕が好きだった勇者が生まれたことが嬉しいんだ」


 ルシフェルはこんな事を言っているが、俺としては天啓とやらで生まれた勇者が世界を救う仕組みでも俺は別に良かったんじゃないか思っていた。


 世界の命運を前に面白い面白くないだとかそんな細かいことは気にしていられないだろ。


 こいつとは価値観は合わない。それにしても話を聞いていて何か違和感が……あ。


「なぁ、俺もどっちかと言うと天啓とやらで勇者になったと思うんだがお前の話と矛盾してないか?」


 そうだ、王様を通じ「勇者になったこと」を伝えられたのが俺のはずなのだ。


「そう……少し君はおかしいんだよね。けどね、僕の呪いがある限り君は本来の意味での勇者であることは間違いないはずなんだ。それに、勇者になった日に戻る事も2年間で強制的に時間が巻き戻ることに至っても理解ができない。君は全体的におかしいね。せっかく僕を殺してもそれすら無かった事になるし。カイエルは何がしたいんだろう」


「……頭が痛くなってきた」


「まぁ、矛盾した内容を考える事ほど頭が痛くなることはないよね。とりあえず僕たちはこの矛盾がどうすれば矛盾しないかを考えなければいけない。少なくともこの2年から抜け出さない限り《《君の目的が達成されることは無い》》わけだからね」


「あぁ、分かってる。ところで復讐するにしてもカイエル達がいる世界ってどうやって行くんだ?」


「うーん、考え中かな」


「……」


「とりあえず僕も頭が疲れたからさ、楽しい話でもしようよ?そうだな例えば日本にある漫画の話とかさ!須磨太郎の脳内にあった漫画のドラゴンボー〇だけどあれに出てくる瞬間移動とかって便利そうだよね。どうにか実現できないものかなぁ」


 瞬間移動……もしも使えたら最初からいい装備を揃えられるし安全に旅が出来るな。

 まぁ、流石に実現はできないだろう。

 できない……よな?

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