敵の敵は敵
「Goodmorning勇者!」
長い記憶から目が覚めて早々、不快な声に出迎えられる。
「いやぁ、君の記憶はとても面白かったよ。うん、まずはごめんね?何回も君を殺しちゃったみたいで……これでもすごい罪悪感を感じてるんだよ。許してくれるかな?許してくれないよね!分かってるよ」
すごく、うるさい。
さっきまで見ていた堕天前のルシフェルの方がまだマシな性格だった。……いや、誤差か。
「それはどうでもいい。記憶の引き継ぎについて分かった事はあったか教えてくれ」
「うん!いいよ。まぁ、これから話すのはあくまでも推測に過ぎないけどね。だって僕自身の記憶が戻ったわけではないから……でも、1つ間違いない事は『呪い』が関係していること」
呪い……やっぱりカイエルかゴッツにかけられたってのが関係してるのか。
「うん、長い時間が無意識に生み出した君の呪いだよ。そう、君の仲間が記憶を引き継いでいたのは君がかけた呪いだったんだよ!」
は……?俺がかけた?
「俺がかけた呪いってどういうことだよ」
「君は繰り返す度に仲間と仲を深めた。しかし、その次に会う時にその仲間は記憶を失い自分だけが引き継いだ。その悲しみからいつしか君は『忘れないで欲しい』と呪うようになっていたんだよ。いや、正確には『同じように繰り返して欲しい』かな。まぁ、似たようなものだよね」
無意識に……願っていた。それを俺は否定することが出来ない。
「それじゃあ、なんで今は呪いが消えたんだ……?」
「1度僕を殺した事で繰り返す必要が無いと思ったから……はたまた『須磨太郎』のせいか」
「須磨太郎のせい?」
「そうだね……君はカイエルからある種の『罰』として別の人格と入れられたと思ってるみたいだけど、目的は別にあったと思う。それが僕の考えだ。例えば一人称、『僕』が『俺』に変わったけれどこれは須磨太郎の人格が入った事による変化だろう?まぁ、彼は別世界に来たのに未練無く平気に生きられるお気楽人間だからね、そんな彼の持つ要素が絶望した君の精神を中和させたんだ。カイエルに救われたのかもしれないね。……それと一時的とは言え君の意思が沈んでいたことで呪いが解けてしまった可能性が高いと僕は思うよ」
「……そうか、教えてくれてありがとう」
「わ、素直に感謝してくれなんて!それに仲間を裏切ってまで復活させてくれたんだ、僕も期待に添えて嬉しいよ?」
……。
「あれ、もしかして忘れたの?ヨーとサンの事だよ?いや、ある意味じゃフィリアちゃんとかリウちゃん……それにフィリちゃんも置いていってるわけだから裏切ったと言えるかな?」
「っ」
「あーごめんね?君を傷つけたい訳じゃないんだよ。本当に感謝を告げたかっただけなんだ」
「別に、いい……裏切ったのは事実だ」
「そっか。ところで色々思い出したところで提案があるんだ!まぁ、今まで何度もしてきたよね。僕と手を組んでカイエルに復讐をしない?」
何度も断ってきた誘い文句。
絶対に、どんなことがあっても乗ることはないと思っていた。……けれど僕は、いなくなってしまった。
「俺は……何をしたらいいんだ?」
「初めてこれを肯定してくれたね。うん、でも今はまだ情報が足りない。とりあえず……すごく簡単なのに消えることの無い呪いをかけよう。これから僕と君は『共犯者』。たとえ世界がどうなろうと記憶を共にする……勇者、これは約束だ。僕は君を裏切らないから君も約束してくれ決して裏切らないと」
「あぁ」
「言葉はどんなものよりも強い呪いとなる。きっと次からは僕も記憶を引き継げるはず……いや、どうだろう。まぁ、次が始まればわかる事か。それじゃあ今回はもう終わろう。あ、前回は僕が殺しちゃったみたいだがら今回は君が僕を殺してよ」
▶勇者は剣を突き立てた
しかし、刺さらなかった
「無理なんだが?」
「あはは、流石に力に差がありすぎるね!」
「……またいつか殺してやるさ」
「味方に言う言葉じゃないね!」
「共犯者であって、味方では無いだろ」
そう、敵の敵が敵だった―――それだけなのだ




