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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第三章 この世界は定められている

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一緒なのは目的地だけ(2)

 結局武器系の店はやってなかった。


 その代わりに武器系の店の中でも男女の変な声が外まで響いていた。今この街は、なんだか賑やかで男女の声が数多くの場所から響いてくる。……まぁ、街の人口が結構の数な理由がよく分かるというか。


 それにしても、慣れたな。色々と。


 昔であれば媚龍のブレスを喰らえば今頃は宿屋で悶々としていただろうに、今では少し目が冴える位で……。


 こうしていると自分は人間を超越した何かになってきていると思える。けどまだ人間であることを痛み続ける胸が教えてくれる。


 この胸の痛みがあるからこそ、自分には止まってる時間なんてないと、今のままではダメだ思う。


 そろそろ覚悟を決めようか。


 ◇


「お兄……ちゃん会いたいよ……」


 宿屋の部屋に戻ると泣き声が耳に入る。これはフィリアさんの声だ。


 そんな声に釣られふと、顔を見てみると目からは少量の涙が零れている。それを見て俺は自然とフィリアさんの頭を撫でていた。


『あ、その…涙を流しておられたので、すみません。えぇと、辛い時は頭を優しく撫でられると落ち着くんですよ?』


 きっと前回言われたそんな言葉が、勝手に脳内で再生させれたからだと思う。


 フィリアさん。最初は置いて行く予定だったのにここまで連れてきてしまった。なぜ旅に着いてこようとしたのかも分からない普通の少女。


 そういえば名前を聞かれたけど、答えることはなかったな。まず分かりもしないことだけど、名前を告げる時はきっと今後もこない気がする。


 駄目だな、どうも自分はまだ情を捨てきれて居ないらしい。……そろそろ手を離そう。


(ギュッ)


―――なんだ、またしても手が捕まれた。


「お兄ちゃん……?」


「あ……」


 起こしてしまったか……いや、目が虚ろだ。多分きっと寝ぼけてるだけだろう。

 一体、どんな光景を見ているのか。


「戻ってきて……くれたの?」


「……」


「ねぇ、私……お兄ちゃんじゃない勇者様に会ったの。だから、お兄ちゃんはこれから一緒に居てくれる?」


 どうやらフィリアさん今は俺に自らの兄の姿を見ているらしい。祭りの時にも思ったが俺はこれにどう思えばいいのだろう。


 俺にその人物が生きているのか、死んでいるのかは分からない。


 それでも、大切な存在と一緒に居られない辛さは……身に染みる程に分かるのだ。


「あぁ、一緒だ。だから勇者様に全部任せてほしい」


「……うん」


「もう今夜は遅い、ゆっくりお休みフィリア」


「うん、おやすみなさい」


 そう、俺は勇者。だから任せてほしい。

 きっといつか全部救って、皆が幸せな世界にするから。


 ―――そうして改めてフィリアさんが眠りについたことを確認するとやる事を済ませてから


 ヨーとサン、そしてボブを持って部屋を出る。


 大丈夫だ。きっとリウさんが居れば無事に帰る事は出来る。有り金は全部、手紙も置いてきた。


 フィリアさん今度は追いかけて来ないで諦めて下さい。俺と来ても貴方の望みが叶うことは無いのだから。


 そしてリウさん、あんまり修行できなくてすみませんでした。……次があればその時は修行たくさんしましょう。


 ヨー、サン。許してくれなんて言わない。むしろ一生恨んで貰ってもいい。


 ごめん皆。お別れの時だ。


 ◇


「もう俺ちゃんのこと気絶させないのか?」


「あぁ、今じゃ守る人間も居ないからな。それにヨーとサンにも手を出さないと約束もした今となってはその必要もない」


「はぁー感服!まさか勇者様が俺ちゃん達側!裏切り者でしたと……」


「元から、あいつらの味方だったつもりなんてない」


「それヨーが聞いたら泣いちゃうよ?えーんえん、勇者の事信じてたのに裏切るなんて酷いんだヨー!ってね」


「言ってろ」


 気分が悪い。


「でも勇者様が味方となれば向かうところ敵無し!……まぁ本当に味方なら、ね。俺ちゃんを裏切らないでくれよ?」


「どうだか……まぁ少なくとも目的地は一緒だ」


「へい!それじゃあ早く、そして速く行こうぜー!」


 ▶勇者は魔王城へ向かった


「おう、戻ったぜー」


 魔王城に着くと、メランに対してボブがお気楽な声で言った。


「……ボブ、なぜ人間を連れてきタ?……魔王様は、人間を大層嫌っていル。我もまた、人間と相容れるつもりはナイ」


「へへーそれでも心強い味方だ。それも最強の勇者様!」


「ども、勇者です。残念ですがさようなら」


 ▶勇者は、大穴を開けた


 意識のないヨーとサンを持って、奈落へと落ちる。ボブも、メランも、魔王だって。


「へ、落ち……落ちる!ちょっとぉ!」


「ボブ!これが味方だト?」


「おいおいおい!まじで裏切るやつがあるかよォ!」


「味方なんて言ってないが?」


「……ざけんなよ!」


 ▶ボブの攻撃

 高速パンチ

 しかし勇者には当たらない


「っ!この化け物がよ」


「しかしこの炎は避けられま……」


 ▶勇者の打撃

 メランの意識は落ちた


「はぁ!?メランを一撃ってお前なんなんだよ!人間じゃないだろ!」


「残念ながら俺はずっと人間だよ」


 メランが意識を失った。サンとヨーが殺されることがあっては困るのだ。後は、落ちるだけなのだから。




 ……もう、底に着く頃だ。

 底が見えたのを確認して、……ヨーと、サンを球体に投げた。


「いでっ!こんちくしょうが……大魔王様の寝室まで落としやが―――ぇ」


 ▶ボブは貫かれた

 ▶メランは貫かれた

 ▶サンは貫かれた

 ▶ヨーは貫かれた

 ▶魔王は貫かれた


 ……


 全員が吸収されたことで、球体は今までとは桁違いの邪悪さと圧倒的な力を帯びた。


 これを見てるだけで気分が悪くなる。


 正直に中身のことを知らなかったら震え上がりそうな程に恐ろしい力。しかし……これでまだ、完全復活とはいかないらしい。


 さて、遂に目覚める。


 音がする事もなく、球体は割れ、姿は顕となる。



 以前とは違う、開眼された眼は紅色に染まっており、角はただ禍々しさを増している。

 身長もずっと大きなものになって……


「……あぁ、久しぶりの目覚め。おはよう。ねぇ、君は一体何者なのかな?多分、いや間違いなく普通じゃない」


「俺は勇者だ」


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