一緒なのは目的地だけ(1)
『やーいチビ!短足!弱魔物!』
俺ちゃんは……弱い。短足猿特有の足の速さはオーク族の鈍重な特徴でかき消され、オーク族の力強さも短足猿の細い腕によって他よりも劣る。
オークの父ちゃんと短足猿の母ちゃんの不悪い部分を持って産まれたのが俺ちゃんだ。
こんな風に俺ちゃんを悪く産んだ世界を呪いたい!って思うけどそれは力がある者だけが許される思考。
そう、まさに魔王様とかのこと。
不平等な世界を恨み、魔物だけの世界を作ろうとする。そんな独裁的望みを成し得る力を持つのが魔王!
……けど、人間の勇者に魔王はやられる運命らしい。上には上がいるってやつ。
だから俺ちゃん、ワガママは言わない。
頂点じゃなくてもいいからせめて1つの部分だけでも上の存在でありたいんだって。
だから願った、 足が長くなれば―――と。
オークも、短足猿も持っていない物が、俺ちゃんを特別にしてくれる。
そして、これを叶えてくれた大魔王様のために俺ちゃんは生きる。早く、そして速く。
◆
「うぉぉぉ興奮が止まらねぇ!」
「お師匠……サンがいつも以上におかしくなりました」
アイクズの毒で興奮しているサンが道中の魔物を消し炭にしている。
……アイクズでこれならば媚龍のブレスでもくらおうものなら街ひとつ破壊するのではなかろうか。
―――ボブは……大丈夫か。
ロボロボ遺跡での1件から数日経ち夢から覚めたボブを既に3度気絶させているが、大体1日も経てば目を覚ましてしまうから気を抜けない。下手をすれば気絶しているフリをしてどこかで出し抜いて来るんじゃないかという不安もある。
ただ逃げられるだけなら問題は無いが、裏切り者であるヨーとサンを狙われれば……特にヨーに限っては今度こそ殺される可能性すらある。
それに、目を覚ました時点で意識を落とそうと攻撃を仕掛けてもそれを避けようとするものだから攻撃箇所を間違えてうっかり殺してしまう可能性があるのも怖い。
計画のことを考えればいっその事味方につけたかったが、2人と違ってボブは魔王…そしてルシフェルに対して信仰心を持っているらしく、それも難しいだろう。
しかし魔王城まで、もう折り返しを超えた以上どんな手段を選ぶことになってもやり遂げるしかない。
◇
「"オッ"!ゴ"ウ"ブ"ンジ"デ"ギタ"ア」
▶勇者の攻撃
サンは気絶した
ラブケーンに着くなり、通例となった媚龍のブレスが放たれた訳だが、興奮によってサンが暴走を始めたからそれを強制的に止める。
「……なんだかぐったりするヨォ」
「すみません……なんだかボーッと……します」
「お師匠!熱いです!修行しましょう!」
他の三人もブレスにやられてしまっている。それでもボブがブレスによって目覚めなかった事だけが救いか……?とりあえずこの三人を安全な場所で休ませたい。
「―――フゥ!フゥ!」
「アーン!」
「フゥ……フフゥ!」
風龍と媚龍の和解を見ながら、三人を宿屋へと向かわせることにした。
「ンッ!チェックインッ……すね。本日ッ、特別に無料となってッ!ので、ゆっクリ!しいって…ね!そちらの魔物の方と部屋はセッ……トでよろしいです?」
「……魔物も泊めていいんですか?」
「はイッ!私たちは魔物ッとも、共存してるっので!」
今回の旅では宿屋に泊まることを諦めていた。今だってサンとボブを連れ外で待機する予定だったが……これは素直にありがたいな。まぁこいつらが四天王だと知ったらまた話は変わってくるのだろうが。
しかし流石は風龍と媚龍と共存して栄えた街だ。
◇
「お師匠〜修行しましょ〜?」
宿屋のベットにの上に乗せたリウさんだが、横になってからも中々眠ってくれない……フィリアさんとヨーの2人は興奮疲れで直ぐだったけど、リウさんはそうもいかない。
それに先程から右手で服の裾を掴んでくるから離れ難い。無理やり離すのはなにか、申し訳ないのだ。
それにしても、酔っ払いのように顔を赤くし、とろんとした目で見つめられているとなんだか照れる。
……そういえば、前にもこんな事があった。
『勇者……好き……私……』
胸が、苦しい。
こんなこと思い出せばどうなるかなんて……分かっている。
過去に戻りたいなんて言わない、ただ感傷に浸るくらいしたってバチは当たらないだろう?
ねぇ、フィリ……やっぱり会いたいよ。
「すや……」
あ、リウさんが眠った。
一旦全員が眠りについた事だしボブを縛る用に風龍の鱗から作られた縄だけでも買いに行くべきか。
……こんな時間に店、まだやってるかな。




