敵が心を開き始める展開は熱い?(1)
「ふわぁ……眩し―――って、ここどこですか!?」
次なる目的地の闘技場を目指して歩いてると、先程まで右手で抱えていたフィリアさんが目を覚ましたらしく、そんな声があげた。
「おはようございます」
「……、あの……どういった状況なんですか?なんで私は貴方に抱えられて」
「フィリアさんが意識を失っていたので運んでました」
一度、背中に背負うでも考えたが背後からの魔物による不意の襲撃のことを考えるとこうするしか無かったのだ。
「私を置いていかないで……それではもしかして旅に同行してもいいのですか?」
抱えられたまま俺を見上げるフィリアさんが言う。
「はい」
「……ありがとうございます。なんと感謝を述べればいいか」
「いえ、そんな感謝だなんて」
「せめてもの気持ちを込めてお名前でお呼びしたいのですが、貴方はなんと呼べば……」
「勇者」
「それは……お名前なのですか?」
……名前、名前?あれ…俺の名前って何だ?
分かって当然のことなのに、何故答えられない。分からない事を疑問にすら思えなかった。
「ヨ……ヨヨ……」
「今の声はなんですか?」
あぁ、どうやら左手で掴んでいたヨーが目覚めたらしい。もう一度気絶させないと。
「ヨ?ここはどこなんだヨー!お前なんでヨーの頭を掴んでるんだヨ!痛い、離せヨ」
……こいつは自分が今どういう立場なのかを理解していないのか。
「待ってくださいどういう状況なんですか?今のままだと貴方の……その、胸しか見えないので降ろしてください」
▶勇者はフィリアを降ろした
「……うぅ!人間にこんなことされるなんて屈辱だヨー!」
▶逆上してきたヨーは攻撃を放とうとしている
▶勇者の攻撃
ヨーは意識を失った。
生かして連れてくのって……めんどくさい。
◇
「……あの、私お店に入ってからの記憶が無いのですがこの小さな子供は一体何者なのですか?」
横を歩くフィリアさんがそんな事を聞いてくる。
「子供っていうか、こいつは魔物で、……四天王です。それでフィリアさんはこいつの幻惑魔法でさっきまで意識を失ってました」
「幻惑魔法……ですか?」
「そう、こいつは人の欲を引き出してその人に都合のいい夢を見せてくるんです」
本当に厄介な奴だ。エーさん達の時の事は、絶対に許せない。
「それって……悪いことなんですか?」
「悪い事です」
断言できる。
「幸せな夢を見れるのにですか?……いえ、すみません変なことを言ってしまって」
幸せな夢……か。幸せな夢で終わるのならどれだけ良かっただろうか。
「それだけなじゃなくて、夢を見てる人間はこいつに自由に操られて最悪の場合爆発させられるんです」
「それは……恐ろしいですね。見た目は小さな子供なのに」
フィリアさんはその光景を想像したのか、顔を青ざめさせている。
「あれ?それではどうしてそんな危険な子を連れてきているのですか?」
「……」
答えにくいな。
「なにか事情があるのですね」
「まぁ」
「安心してください。なにか事情があるのであれば聞きません」
「助かります。ところでまたさっきの体勢に戻ってもいいですかね?」
早く移動をしたい。
「さっきの体勢で……うぅ。やはりそういう目的で私を……?」
あぁ、すごい誤解が起こりそうになっている。確かに凹凸のある部位が密着するけど、そんな変な目的は持っていない。
「いや、次の目的地まで安全に移動する方法があれなんです。だからどうか分かってください」
「……あぁ、そうですよね。変なことを考えてしまい申し訳ありません」
「いや、こちらこそ」
何故だろうか、今回は凄く気まずい旅になってしまった。
異性と2人でとはいえ、フィリと2人で旅をするという事は何度もあったはずなのに。
気が狂う。
▶なんやかんやフィリアは抱っこされた
……まぁ、ペースは上がったけど全力疾走は出来ないし闘技場の到着は明日になるだろう。
それにフィリアさんのことを考えるなら本当なら宿屋に泊まりたいけど、ヨーがいる以上それも厳しい。
フィリアさんは野宿できるだろうか。
「あの、次はどこへ向かうのですか?」
「闘技場です」
「そうなんですね」
……会話が終わった。
何か話題を振るべきか?
「あの、フィリアさんってどうして旅に着いて来ようとしたんですか?」
「兄のためです」
「兄妹……ですか。いいですね」
「義理なんですけどね」
「あ、えぇと仲はいいんですか?」
「……良かったと、思います…ただ何年も会っていないので」
……話題、間違えたかな。
それにしても兄のためにっていうのは魔王のせいでお兄さんを失ったということだろうか。
……この事について俺は、どう考えたらいいのか。
たとえ魔王を殺しても、繰り返されてしまう世界。彼女の目的がどうにかなることはないであろう世界。
◆
日も暮れ、今夜は野宿する事に。……夜風に吹かれ、草の上で眠りにつくのは初めてでは無いけれど久しぶりだ。
……やっぱり、夜は寒い。せめて焚き火でも出来たら良かったけど炎に寄る魔物のせいでそれもしたくはない。
フィリアさんはちゃんとリッュクの中に毛布を入れていたから眠っている間に身体を冷やす心配も無さそうだ。
「……ョ…ヒト…ハ …シィ…ヨ…ドウシテ…奪わないで…ヨ」
そして意識を失っているヨーは何かをブツブツと呟いている。
……奪わないで。こいつは一体何を見ているんだ。




