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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第三章 この世界は定められている

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フィリアちゃんはついて行きたい(3)

 席に着いた俺は考える。なぜ、フィリアさんがバニーの町にいるのか。


 気落ちしていたせいでバニーの街に向かう足が進まなかったのは事実だ。


 けれど、それを差し置いても普通の人間であるフィリアさんがここまで早く来るなんて予想ができるはずない。


 ……流石に早すぎる。なにかがおかしい。


 もしかして四天王が現れるタイミングが決まっているように、フィリアさんを置いて行っても結局は再開するように定められていたのか。


「バーニバーニバニ!」


 ……あぁ、聞き慣れた鳴き声も聞こえる。


「あの、なぜこのようなお店へ来たのですか?」


 隣に座っているフィリアさんが目を逸らしながら、そんな事を聞かれる。

 何か勘違いしてるようだが素直に四天王が現れるから、なんて言えるわけは無いし……なんと言うべきか。


「ふふ、この坊やも男の子ってことよ」


「やっぱりそういう事に興味が!?私も覚悟を決めた方が……うぅ」


 そうして席に着いているバニーさんによってあらぬ誤解が広がっていく。フィリアさんは何の覚悟を決めようとしているんだ。


 よく分からない状況ではあるが、どんな時でも決まってその時は訪れる。


「クスクスクス」


 ヨーが現れた。


「バーニバニ!ん?誰じゃこの小さな子供は……」


「僕は四天王の1人!僕は欲望のヨー!これでも喰らえー」


「パイパイ……!」


 ▶王様が欲望に囚われた


「追加でどんどんやるヨー!」


 ▶店内に幻惑の霧が広がった

 勇者以外の店内の人が幻惑の囚われた


「ヨッヨッヨッ!みんな幸せそうだヨー?よーし、こいつらを大魔王様に献上するんだ…………ョッ」


 ▶勇者のビンタ

 ヨーは気絶した

 全員の幻惑状態が解除された


 よし、ヨーは何とかなった。……もうこいつの魔法が効くことも無くなったな。耐性がついたんだ。


 さて、次に捕らえるのはサンだけどこの調子ならサンも一撃で沈めれてやれば大丈夫だろう。


 メランも雪の森に行かなければ魔王城でそのまま落とすだけで問題は無いから―――ボブだけが厳しそうだ。


 捕まえてから、一度でも気を許して逃げられたらと考えると気が遠くなる。


 ……さて、次の問題。この眠っているフィリアさんはどうしようか。


 置いていってもいいけど、今回の事を考えると必然的にまた出会でくわす可能性が高い。


 第一にここにいる時点で旅の同行を諦めてはくれないだろう。


 置いていった結果フィリアさんが命を落としでもすれば気分的に良くないし……仕方がない、連れて行くしかないよな。


 ……しかしフィリアさん、幸せそうな顔して眠っているな。


 ▶フィリアが仲間になった


 ◆


 ―――私、フィリアにはルミリという名前の兄がいる。


 ただ兄と言っても正式なものではなく義理の。


 それに21もある年齢の差を考えれば親子の方が関係性は近いのかもしれない。


 ルミリさんは今の私と同じくゴッツ様に仕えている神職に就いている人だ。


 13年前に起きた魔族の侵攻によって家族を失い、私は目に入る全てから逃げて細々と生きていた。

 食料を取れず、私が倒れてしまった時に教会で引き取ってくれた恩人。


 引き取られてからの日々は、今も鮮明に思い出せる。


 あの時期はずっと魔族の侵攻が続いていでルミリさんは配給や街の人の精神的サポートで自分だって忙しいだろうに、声も出せない程に衰弱しきった私の面倒まで見てくれた。


 両親を失った時の事を思い出し、震えている時にはいつも「大丈夫、君は僕が守る」と優しく頭を撫でてくれたことは忘れようがない。


 ルミリさんに引き取られてからの記憶は、今でもよく思い出す程には大切で、幸せなものだった。


 ―――けれど、それすらも5年で終わりを告げてしまった。


 魔王が現れたことで始まった、長く続く魔物との戦い。それを収めるため、あの人は自らゴッツ様に勇者になると願い出て、果てには本当に勇者になったのだ。


 本来勇者というのは魔王が現れた時に、ゴッツ様から「魔王をうち倒す存在」として天啓を授かった人間なのだと神父様に聞いた。


 けれど、今から二つ前の魔王が現れた時は勇者として選ばれた人が居なかった。そのせいで、今から二つ前の魔王は初めて魔王が現れた時と同じように好き勝手に暴れることができた。


 その期間は討伐されるまでの8年間。長い歴史の中でも、それだけの年数かかった事は何百年ぶりだったらしい。


 元々新しい魔王の誕生も、人間が生きていて一度体験するかどうか。そう多くある事じゃない。それに加え天啓を受けた勇者が1年もせずに魔王を倒す。


 それが崩れてしまった結果がこれだ。あまりにも大きな被害が世界を襲った。


 それでも被害が8年だけで済んだと私たちは思うべきなのかもしれない。


 だって本来勇者として選ばれた存在はいなかった。


 なのにルミリさんは勇者になって、たったの2年間で歴代最強と言われているあの魔王を倒したのだから。


 本来ならもっと長い期間、私たちは脅かされていたであろう未来を変えてくれたのは彼だった。


 ルミリさんはすごい人だ。……なのに、魔王を倒した後も戻ってきれくれなかった。


 そして、今から5年前。私が15歳になった時に現れた魔王に至っては1年もかからないで討伐された。


 私はその知らせを聞いた時に、あの人がまた助けてくれたのだと思った。


 それは、勇者として旅立ってから一度も顔を見せてくれなかった理由がどこかで人を救っているからだと考えていたから。


 けれど私が18歳となった今、ついには目の前に自分を勇者と名乗る人が現れてしまった。


 それは、ルミリさんが勇者でなくなった事を示していて。


 ただ本当の勇者様が現れたことでルミリさんが勇者という使命から離れた可能性もある。


 それでも……私の知らない間に亡くなっていたら、と考えると怖くて仕方がない。


 もちろん、生きていると思いたいけ。けとそれならどうして彼は一度として戻ってきてくれないの?


 流れていく時間と共に、私の不安はより一層強くなって、最悪な可能性が幾度も脳内を過ぎる。


 もしかすると、待っていればいつか戻ってくるのかもしれない。


 そう思いたいのに不安で、頭がどうにかなってしまそうで……このまま、ただ待っていることに耐えられなくなっていく。ルミリさんの事を探すために旅に出たい。


 ―――けれど私は非力な人間。


 ルミリさんを継いでシスターとなってから、癒しの力を身につけることが出来たけれど強い魔物に抗う程のものでは無い。


 もし、彼が強大な魔物から世界を守るために旅を続けているのなら、それでもいい。


 けれど……せめて知りたいの。

 私は理由を知って、安心したい。ただ悲しむことすらも出来ないことを私は耐えられなかった。


 それをするためには危険な場所に行く必要があるけとゴッツ様に選ばれた本物の勇者様と一緒であれば成し遂げられるかもしれない。


 一度は断られてしまったけど、私はこの願いを叶えるためなら、どんなことでもする。


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