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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第三章 この世界は定められている

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フィリアちゃんはついて行きたい(1)

「―――待て!!」


 悲鳴にも似たような自分の声が教会内を反響する。


 そして、ソレは自分が現実へ戻ってきたことを自覚させた。


「きゃ……あ、その、どうされたのですか?」


 横にいたフィリアさんだ。俺の声に驚いたのだろう。手は祈るままのポーズのまま、心配したような目でこちらを見ている。


 ……なんと説明したらいいものか。


「たった今……神様では無いのですが、天使に会ってきました。それで言い合いになってしまって」


「天使様に?」


「まぁ、一時間程も目を瞑っていたので……その間に寝ていて夢を見ていただけ、なんて話じゃなければ」


 そうして、自分が夢を見ていただけという可能性を語ると神父様が目を見開いた。


「ホントウニ アエタノデスネ」


 言葉、そして雰囲気は確証を持っているような、何かを感じさせる。


「アナタガイノリヲ ササゲテ、マダゴフンモ タッテイナイノデスヨ。……カミノセカイデハ、ジカンノナガレガチガイマス 。ツマリ……」


「あの!この方の体内時計がおかしくなっているだけの可能性もありませんか?」


「いや、流石に一時間と数分は間違えませんよ」


 とは言ってみたが何度も人生を繰り返している自分の時間に対する感覚は当てにならなかったりする。


 ……それでも一時間と数分の違いは分かると思いたいけれど。


「……そう、ですよね。おかしなことを言ってしまい申し訳ありません」


「フィリア、コノカタハマチガイナク、ユウシャデショウ。ワザワザカタル(騙る)モノハイマセン」


「神父様……」


 なんだろうかこの言い方……まるで俺が勇者であるのを認めたくないように聞こえる。


 まぁなにか事情があるのだろうが…俺が聞くことでは無い。それよりも四天王を捉えてルシフェルの所に行かないとだ。


「あの、俺はそろそろ魔王討伐に行こうかと―――」


「待ってください!私も、その旅に連れて行って貰えませんか」


 そう言うとフィリアさんは立ち上がり丁寧に頭を下げた。


 そういえば……須磨太郎の時にも似たようなことがあった記憶はある。

 彼女の魔法は回復に秀で、魔物を焦がす神聖な光にもなっていた。力が無いわけではない。


 ただ今回に至っては四天王を生かしての冒険。普通の人にとっては、かなり危険になることを考えれば断るべきだ。


「すみません無理です」


「どうしてもですか……?」


 潤んだ瞳で見つめられても難しいものは難しいし、無理なのだ。


「どうしても、無理です」


 ◇


 そうして、旅への同行を願い出るフィリアさんを後に俺は再び旅立った……のだけど。


 先程から、ずっとフィリアさんに付けられている。


 付けられている、といっても物陰に隠れいる訳でもなく、むしろ堂々とそれは立派に物の詰まったリュックを背負い後ろを歩いているのだ。


 そして振り向けば「どうされましたか?」と言わんがばかりの笑顔をこちらに向けてくる姿はどこか堂々としており清々しいと感じる程だ。


 いくら相手が勇者とはいえ、初対面の男を付けてまで魔王討伐について行きたいだなんて、一体何が彼女を駆り立ているのか。


 須磨太郎の記憶にも、彼女がここまでの執着を持つ理由なんてないしどう考えるべきか。


 まぁ、理由がどうであれ連れて行く気は無い。


 そうと決まればやることは1つだ。ソルドさんがいる酒場へ行くまでに距離を付けてしまうのだ。


 流石に俺の事を見失えば諦めるだろう。


 ▶勇者は走り去った


 ◆


「……え?」


 たった今起こった出来事に、呆けた声がでてしまう。


 私は、先程からゴッツ様からはとても褒められ無いことを行為をしていました。


 それは1人の青年の尾行。けれど今、その青年の姿は見えなくなったのです。


 ……けして、よそ見をしていたという訳ではありません。本当に一瞬にしてその姿が無くなったのです。


 一体どうしたものでしょう。……いえ、ここで止まることはできません。


 そうして私はまず、あの方の行方を知るために情報を集める必要があると考えて情報収集に向いているでろう酒屋へと向かう事にした。



 ―――通りに出ると、多くある酒屋の中から1番近い場所を選択して中へと入る事を決める。


 普段外に出るのは貧困な家庭へ支援物資を渡しに向かうか、買い出しに行く場合のみでの私にとって入るのは初めての場所。


 ……そうして昼間なのに扉越しに会話も聞こえない事に違和感を感じながらも扉を開ける。


「失礼しま……え?」


 中に入るなり入ってきた光景は倒れた7人の男性と、それを持ち上げようとする……店の店主であろう人。


 状況からは、今から少し前に何か揉め事が起こったであろう事が想像できるけれど……人が倒れる程の騒ぎがあった割には近くにあるテーブル上のクロスは綺麗に敷かれたままだし、壁や床にも人が倒れている以外には何もおかしなとこは無いなど、あまりにも綺麗なことに違和感を感じる。


「くぅぅ……重いぃぃ」


 店主の人、とても困っている様子。


 神に仕える身として困っている人は見過ごことはできません。


「あの、すみません。手伝いましょうか?」


「い……いえ貴方のような華奢な方、それもお客様に手伝ってもらうのは……」


「ご配慮、感謝します。ですが大丈夫です。むしろ手伝わせて貰えませんか?」


「なんと慈愛に満ちた方でしょうか。それではお言葉に甘えさせて貰います」


 店主さんと一緒に、男の人を運ぼうと腕に力を入れる。けど、すごく重たい。成人男性がこんなにも重たいだなんて。


 いえ、見た目から筋肉もかなりついた冒険者の方でその分重たいのでしょう。


 それでも、何とか2人で持ち上げて店の外に出す。


 ……倒れてる人を外に放り出すのは……いえ、お店に置いておくのもあまり良くないから仕方ないのかも。


 そして、続いて2人目の人を運ぼうと店内へ戻る。


 これをあと7人……大変そうです。


 と、……なんでしょう、青髪の男の人がこちらに近づいてきました


「良ければ、俺も手伝おう」


「えぇいいんですか!?あぁ、じゃあお言葉に甘えます」



 どうやら、この青髪の男の人が力を貸してくれるらしい。店主さんが喜んでいます。


 すごい、この人一気に2人も持ち上げてしまいました。もしかして有名な冒険者さんなのでしょうか?


「―――お二人共ありがとうございました。なんと感謝をすればいいか!」


 ようやくのこと運び終え、店主の人に改めて感謝を伝えられる。


「いえいえ、人として当然の事をしただけですから」


 とは言っても私が運んだのは店主さんとの3人だけ。残りは青髪の人が軽々運んでいったのですが……人助けが出来たことに違いはありません。


 しかし私の本来の目的は情報収集です。誰に聞けばいいか……いっその事この青髪の男性に聞いてみるべきでしょうか。


「あの、すみません」


 青髪の男性に声をかける。


「む、なんだろうか」


「人探しをしていまして……この辺りで私よりも身長の少し高い黒髪の少年を見ませんでしたか?」


「すまないが、それに当てはまる人間は多すぎて答えようがないな」


 確かにその通りなのだけど、彼はあまりにも普通の少年で他に挙げられる特徴が……いえ、1つ大きな特徴がありました。


「言い方を変えますね。勇者様について何か、心当たりはありませんか?」


 これは間違いなく大きなくて、当てはまるのが1人しか居ない特徴。

 ―――そして、私の質問に対する肯定として青髪の男性は首を縦に振った。


「不思議な事もあるものだ。俺は少し前にその少年に会った」








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