たまに夢と現実の区別がつかない
四天王を生かしてルシフェルと対峙する
そして、神と話をすることが今回の目標だ。
……とはいえ、正直に「神と話す」だなんてどうしたらいいのか。
以前にルシフェルがした嫌に長い話では天界と呼ばれる場所に居るのだろうが、そこへの行き方は分からない。
だけど心当たりが無いわけでは無いのだ。
今の自分には須磨太郎という人間の記憶が混在していて、須磨太郎の仲間であったフィリアさんは神に仕える人物とある。
そんな彼女であれば何か知っているかもしれない。今はとにかく可能性を追うのだ。
◇
教会の扉を開け、中に入る。
自分自身が入ったのは初めてのはずなのに何度も来たことがあるように思える。
すごく、気持ちの悪い感覚だ。
そうして頭痛と、嫌悪感につつまれていると『ギイィイィイ』という音が鳴り響き教会の扉が開かれた。
そうして1人の少女が顔をのぞかせる。
……フィリアさんだ。
「ただいま戻りました……って、えっと、どちら様でしょうか?どのようなご用事でこちらに……」
「貴方に神様と会う方法について聞きに来ました」
どう聞くか迷ったが、率直に聞くことにした。
「えっと神様に会う方法……ですか?不思議な質問ですね」
いきなりの質問に加え、この内容。
当然困惑している。
「それでしたら……そうですね。私よりも神父様に聞いた方がよろしいかと」
フィリアさんは何も無い方向に目を向け……いや、よく見たら人がいる。
「ア、ハジメマシテ」
この人も一応記憶にある。
「神父様ですよね。貴方は神様に会う方法について何か知っていますか?」
「エト……フツウノヒトデハ、フカノウ。ゴッツサマト、ハナセルノハ、エラバレシモノダケナノデ」
選ばれし人……勇者は選ばれし人と言えるだろうか?
「俺は勇者です。勇者は選ばれし者に当てはまるのでしょうか」
「勇者!?ゴホッオヴェ……」
「あぁ神父様の持病が……すみません。この方は精神を常に落ち着かせていないと吐血してしまうのです」
……変わった体質だな。
「フィリア…ス、スマナイ。トコロデホントウニユウシャサマ……ナノデスカ?」
「はい、俺が勇者です」
「ソウデスカ……デアレバ、イノリヲ サゲレバ セイシンセカイデ アエルデショウ」
「祈りを捧げる?」
「祈りは、ゴッツ様の前でこのようにするのです」
少女はそう言うと、銅像の前に正座で座り、手を組むと静かに目を閉じた。
それに習って隣に座り、俺もまた目を閉じる。
◇
目を閉じてどれだけの時間が経ったであろうか。体感にはなるがそれでも一時間以上は経っただろう。
結局は神に会えなかったのかと思うべきか、それともまだ祈り足りないのかは分からない。
祈りの間、目を開けてはいけないような気がしているが神に会うにはここまで時間が必要なのか。
こんな事で神に会えるのかという不信感もあり、うっすらと目を開けてみる。
「あ、おはようございます」
……。
「あれ?また目を瞑っちゃった!あの……起きて!」
……目の前には、眩い光を背に、そして金をベースに所々白い部分の入り交じった長髪を持った女が立っていた。身長は160、俺とそう大きな差は無い。
神と言われたら想像を絶する大きさかと思っていたが、そうじゃないのか。
今いる場所もいつの間にか変わっている。
何も無い、ただ白いだけの正に『無』と言った場所で俺は祈りを捧げた時のままのポーズでいる。
一体いつから俺はここにいたのか……それは考えない事にしよう。
「貴方がゴッツ様ですか?」
「いえ、違います。私は―――って目を閉じないでっ!」
なんだこの女。
「じゃあ貴方は誰なんですか」
目の前の女は見ていてイライラする。
どこか、ルシフェルと似たお気楽な感じがするからだ。
「私はカイエル!きっと貴方が1番会いたかったであろう天使。多忙な神様は貴方と会う事なんてしませんからね、来てあげたんです!まぁ私も忙しいんですけどね。本当ですよ!なにせお仕事が増えたのですから」
カイエル……確かルシフェルの仲間だった奴か。
「あー忙しい忙しい!忙しいなぁ!…チラリ、ほら伝えたい事を早く言ってくださいね」
……なんともわざとらしい。
「そうだな、じゃあ前提として、俺が勇者として何度も魔王討伐を繰り返していることは知っているのか?」
「もちろんですよ。だって私が貴方に力を与えないとルシフェルの奴に痛い目に合わせることも出来ませんから!あ、貴方には私の力が少し入ってるんですよ?」
これがルシフェルも言っていた女神の力……。いや、女神からの呪いと言うべきかもしれない。
ただこれがあったから俺はルシフェルに一泡吹かせることができた。
「じゃあ、次に俺の呪いについて。前回の俺の体にいた須磨太郎ってのは何なんだ?なんであんなことになった?お前は何か知っているはずだ」
須磨太郎について聞いた次の瞬間、カイエルは頭を抱え始めた。
「えーと言っていいのかなぁ?まぁいいよね。うん、いいはず。ゴッツ様基準ではセーフです!私個人的にもセーフにしましょう」
……こういう話を自己完結させるところ本当にルシフェルに似ているな。
「えーとです。貴方は前回、ルシフェルを倒したのに再びやり直す事になって絶望してしまいましたね。だからもう魔王討伐を諦めてしまうのかなと思って、貴方の体に代わりの人格を入れたんです」
は、なんだそれ。
「控えめに言ってお前を殺したくなった」
心底、イライラとする。ふざけている。
今まで、何度も、何度も、何度も繰り返して……背負っていた使命。
それがこいつの判断1つで……別の奴に?
「そんなに怒らないでくださいよ!貴方じゃ私に勝てませんから。……あと入れ替えた、と言うよりも《《貼り付けた》》というべきでしたね。勇者の役目は普通の人間では耐えられないんですよ。そう、実は貴方って凄いんなんです」
カイエルは手を合わせ、目を輝かせながら言う。
「意味がわからないし、嬉しくもない。とにかく、人格の貼り付けとかいうのは止めてくれ。そのせいでお前が言う普通の人間である須磨太郎っていうのは……」
須磨太郎という人間は俺の生きる世界と違う、平和な世界で生きる住人だった。
そう、世界が違うのだ。アイツは異世界と言っていたが……俺が繰り返したとして、異世界の住民であるアイツはどうなった?
元の世界に戻った?死んだ、存在が消えた。答えは分からない。
「そう、貴方は罪悪感を感じている。貴方はやはり優しすぎる。それが嫌なら貴方が諦めなければ良いだけ。勇者としてルシフェルを永遠に倒し続けるのです!それはあなたの使命。出来ないのであればまた、同じ様に人格を……それどころか今度は完全な消去なんかもするかも?」
有無を言わせぬとんでもない脅しだ。ルシフェルよりもこいつの方がずっと恐ろしい奴なんじゃないか。
「何はともあれ、貴方がすることは1つなんです。手段は問いません。ただ、ルシフェルを無力化するのです。私も今まで通りに、『都合が合うよう』サポートをしますから。あ、一応言っておくと2年以内にですよ?それが出来ないと2年前に逆戻りします」
……ルシフェルを倒せば、また一から始まって、倒せなくても戻る。
それじゃあ、魔王を倒した世界でのフィリとの幸せな暮らしは夢物語に過ぎなかった……?
「あ、絶望しました?」
「―――っ、してない!」
「強がりさんですね。まぁ、絶望してようと使命を果たせるのならいいですよ。それじゃあ、そろそろお別れです」
「待て!まだ聞きたいことが―――」
「それじゃあ、いってらっしゃい勇者様」




