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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第三章 この世界は定められている

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36/68

空白

―――『追憶』……それは、あのお方の力に触れた事で我が得た力。


 生物には魂があり、生きる者は皆、魂を燃やス。


 我が元より宿していた燃やすだけの単純な力と、追憶の2つを合わせた『追憶の炎』は人間の魂そのものを燃やし……対象を燃え尽きた灰のように何をする事もできなくすル。


 直接魂に触れる必要があり、その間、動けない事が欠点だが、どんな相手にも通用する諸刃の剣ダ。


 勇者……実力だけは確かだったがここで消えてもらウ。


 ……フッ、実にあの人間らしい魂ダ。欲に塗れた醜い形をしている。


 ここにあるのは魂のみ……我以外に立ち入るものはナイ。勇者、その魂よ燃え尽きロ。


「なんだここ?僕は……」


 ……?こいつは、何者ダ。


 何処から、現れた?先程燃やしたはずの場所からまるで生えるように現れタ。


 魂の形では無い、我と同じく肉体を保ってイル。見た目は……元の勇者、しかし他の全てが違ウ。


 ソウカ。元から居たのダ。それを、目覚めさせてしまっタ。


「状況は分からないけど……メラン。お前は消えろ」


 大魔王様にすら届きうる……化け物―――


 ▶メランは、消滅した


 ◇


 頭が……痛い。意識が、ぼんやりとする。

 ついさっきまで夢を見ていたような、そんな感覚に襲われる。


 僕は……何をしていた?

 ルシフェルを倒して、……倒したのに。


「なんかヤバそうなのが消えたニャ!」


 猫の耳を生やした女。


「なんだったのでしょう……」


 よく分からない金の髪の女。


「まさか、勇者がやったのか?」


 鎧を纏った女


「流石勇者様ですぅ」


 本を持った女。


 ……こいつらは、誰だ?


「勇者すごい」


「フィリ?」


 え、フィリも戻っていたのか。フィリ、フィリ。


「ニャ?フィリって誰ニャ?また新しい女ニャ?」


 は?


「何言ってるんだ!フィリは……この子の名前だ」


「そいつはアリシアだ。アレクお前、ついに頭がイカれたのか?」


 アリシア?この子はフィリじゃない?いや、そんなわけがない。


「おい!俺を置いてくな!勇者アレク、お前らなんの話をしているんだ」


 雪の精霊?あれ、どうして……僕は雪の森にいるんだ。ここに来るまでの記憶が、まるでない。


 頭痛い。頭が、どうにかなりそうだ。


 それに、さっきからみんな僕を見てアレクアレクって……誰なんだよ。


 何か、おかしい。誰かの記憶が……知らないはずの、何かが僕の頭に残ってる。


 僕?は……何なんだ?分からない。何も、分からない。


 誰か……俺のことを、教えてくれよ。


『―――お前は、呪われている』


 あぁ、なんでこんな時に、ルシフェル(アイツ)の声が聞こえるんだよ。


「ルシ……フェル」


 最悪な、気分だ。……最悪だけど、アイツなら何か、知ってる。そんな気がする。

 行かないと。アイツに聞かないといけない。


「何か言ったニャ?」


 どうにかなる前に、アイツの所に……


「―――え、おいアレク!どこに行くんだ!」


「勇者様ぁー置いてかないでー」


「……勇者?」


「違う。この方はアレク様ではない。…貴方は一体、誰なのですか?」


 は、お前らこそ誰なんだよ。


 ▶どんどん進んだ勇者は、やがて倒れてしまった


 ◇


 あれ、ここは…どこだ?

 知らない人間、知らない部屋、そして霊にでもなったかのように自分の身体は半透明で、浮かんでいる。


『おい須磨太郎!相変わらず鈍臭いな!』


『ギャハハ!オタク君さぁ、俺の彼女になに告白してくれちゃってんの?なに、少し優しくしてもらって期待しちゃった?』


『須磨太郎!あんたいつもスマホか異世界?なんてありもしないものばっかり見てるけどさ……現実の女の子のことも見てよ』


 なんだこの記憶?知らない…見たこともない服装、見たこともない物を持っていて……

 でも、なぜか分かる。


 記憶の世界が日本と呼ばれていて、手に持っている機械はスマホというすごい物。


 金髪の男らにいつも笑われていて、世界そのものに嫌気がさしている。


 幼なじみでお節介なアリサちゃん、そして何よりも憧れていた異世界。


 異世界に飛ばされてからは、色々と楽しそうにしている記憶が流れてくる。


 俺の知らない女の子に、通ることのなかった街。


 この記憶の持ち主は、須磨太郎。ついさっきまで、僕として生きていた人間。けれど僕が出てきたことで消えてしまったであろう人間。


 どうして僕はこいつに体を奪われてしまったのか。やはり、よく分からない。


 分からないまま、須磨太郎の記憶が流れてくる。そして、メランが現れた辺りで光景は途絶えた―――


「っ……ここは?」


「ああ、目覚められましたか?ここは尾張の街の宿屋です。貴方は街に向かう道中でいきなり倒れられたのですよ。皆とても心配していました」


 俺が目覚めるとそこはボロボロなベットの上であった。そして横には知らないはずの知っている女の子が慈愛に満ちた表情で、俺の頭を撫でていた。


 なぜ?と思いながら見ているとその子は急に手を離す。


「あ、その…涙を流しておられたので、すみません。えぇと、辛い時は頭を優しく撫でられると落ち着くんですよ?」


 少し顔を赤くしながらも、少女はそう答えた。


 この子は…たしかフィリアと言ったか。須磨太郎の最初の仲間。


「……ありがとう、フィリアさんのお陰ですごく落ち着いたよ」


「なら、良かったです。ところで貴方は一体何者なのですか?」


 ……気づかれていたらしい。というか、倒れる寸前にも同じような事を言われていた。


 何者かと聞かれたらどう答えるべきか、難しい質問だ。


「俺は、勇者です。あなたと共に居た須磨太郎……いや、アレクよりも前にこの体で生きていた人間です」


「そうなんですね」


 意外にも、すんなりと認められてしまった。まるで最初から何か知っていたような反応。


 それでも長くいた大切な仲間がいきなり違う人物に意識を奪われたとなれば、内心は辛いだろう。


「ごめんなさい。俺は、貴方の大切な存在を奪ってしまった」


「確かに私はアレク様を慕っていました。ですが元はと言えば貴方は貴方の身体に戻っただけなのでしょう?ならば仕方がなかったのです。それが運命だったということでしょう」


 俺の知らない間に生まれた絆を俺が壊してしまった。さっき、何者か聞かれたけど、自分でもそんな事分からなくなってきた。


 どうして俺は彼女に謝ってしまったのだろう。理不尽に奪われたはずなのに、それでいて生きる事が罪のように思わなければならない。

 俺には、何も分からない。


 もう魔王城に行こう。


 ◇


「……貴様勇者か。つまりメランは……そうか。手加減は―――」


 ▶魔王は、勇者に頭を掴まれてそのままルシフェルの寝室へと落とされた


「グがっ……よくも―――」


 ▶魔王は、勇者によって結晶体ルシフェルの方に投げられた


「ア…ア…ガ……ガ……」


 ▶魔王は、養分になった

 ルシフェルが目覚めた


「ふぅ……ようやく目覚められた。ところで君は勇者?勇者なのに1人なんだ」


「置いてきただけだ」


「へぇ、冷たいんだね。いや、大切だから置いてきたのかな?……どちらでもなかったりするのかな」


「……なぁ、ルシフェル、俺は一体なんなんだ?」


 ただ縋るように聞く。大嫌いな存在に。


「え、初対面の僕に聞くことじゃなくない?」


「お前が前に言ってた言葉……俺が呪われてるって何なんだよ」


「……ふむ、よく分からないけど分かったよ。君は何回も人生をやり直してるんだね?それで前の僕に言われたことを気にしてる。もしかして僕の計画に協力してたりもする?」


「協力はしてない」


 相変わらず……脳天気なやつだ。こちらのペースが狂いそうになる。


「そっか!」


「俺は、前回お前を倒した。なのにまた繰り返している」


「え、僕が負けたの?どうして僕が人間に……まさか……」


 この反応。こいつは、何を知っているんだ。


「お前は、前回も同じ様な反応をしていた。教えてくれルシフェル、お前が知ってることを」


「えぇ……フェアじゃなくない?僕にメリットってある?」


「ない。だけど教えろ」


「……君は傲慢ごうまんだね。まぁいいや、真実を知った方が僕に協力したくなるだろうし。うん、君は呪われてるよ。不気味な程に大きな呪いが見える。これはきっと、神が君にかけた呪いだ」


 神がかけた呪い?


「まぁ、憶測だけどね。でも僕を殺したことが本当なら天使か神のどちらかが君を呪っているんだ。いや、この場合は祝福しゅくふくというべきかな?でも僕に言えることはそう多くないよ。だって君と違って記憶を引き継げるようにできていないみたいだから」


「そうか」


 俺だけが、最初からずっと記憶を引き継いでいる。


「なにか記憶を引き継ぐ方法でもあればいいんだけどね」


 記憶を……引き継ぐ。今回は引き継いで居ないけど、コイツを倒した前回までフィリも、ソルドさんも、ビルさんも引き継いでいた。それは、なぜ?


「俺の仲間は、記憶を引き継いでいた」


「え、本当?そんな都合のいいことある?

 いや……まぁ、あったんだろうけど」


「なにか、記憶を引き継いでいた事に心当たりは無いのか」


「僕に分かるわけないよね。君は僕をなんだと思ってるのかな。まぁでも、そうだなぁ。記憶を引き継ぐ、じゃなくて記憶を共有する方法ならあるよ。天使が使える凄い魔法なんだけど……力が足りなくて今の状態じゃ使えないんだよねぇ」


「それなら……俺が力をやればいいのか?」


「うーん、足りないかな。僕の力の源は君らと少し違うからさ……。まず、この世界には適応度ってのがあるんだよ。例えば君の強さの元は下等生物達を倒した時に発生するエネルギーだ。けど、それは天使である僕には合わない。吸収したところで元の千分の一、一万分の一の力に満たないだろう。だから、君の体に巡るエネルギーを全て奪ってもその効率は魔王一体分にも及ばないんだ」


 ただでさえ気分が悪いのに、こいつのペースで長い話を聞いていると、中々頭に入らない。


「顔色悪いけど大丈夫?休憩するかい、お茶とお菓子でも用意しようか」


「……いらない」


「そう。じゃあ続けようか。僕にとってアイツらの力が弱い、逆に圧倒的な僕の力を吸うことであいつらは本来以上の変化を遂げる。ずるいよね。ただ、おかしな事にその四天王を倒したはずの君から僕の力は感じないんだ。……まぁ、何か不都合があって僕の力は君に還元されないよう理をつくったんだろうね。理由は分からいけど。だから、うん。だから君がやるべき事は元々僕の力だったものを宿してる四天王と魔王を全部吸収させること……いや、それでも足りないか。プラスでエリクサーが欲しいね」


「エリクサー?」


「そう。あれは僕らの世界での栄養剤っていう飲み物なんだけど一時的だけど力が出るんだよ」


 つまり、次回は四天王を全員生かした状態でエリクサーを持ってコイツの所まで行かないといけないのか。……でも、その場合フィリの呪いが解けない。


「じゃあ次の世界に行って貰いたいんだけど、何か言い残したことはある?」


「言い残したこと……。今回、記憶がおかしくなったんだ。別の誰かの人格に支配されていた。お前に話を持ちかけたのは、それが理由だ。なにかお前は分からないか」


「当然分からないね。まぁ神だか天使だかが関係してるのは間違いないさ。いっそ本人……いや、本神に聞いて見たらいい。まぁ、ろくでもない事情があるのは確定しているよ。それじゃあそろそろお別れだね。いってらしゃい」


 そんなお気楽なルシフェルの声と共に、身体が内側から圧倒的な力によって破壊されていく。


 あぁ、そういえば今回はメランじゃなくて魔王を吸収させたから……前回よりも強いのか。


 それに1人なんだから勝てるわけ……なかった。


 ▶勇者は、息絶えた


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