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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第2章

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取り戻す(4)

「ルシフェル……今回こそお前を討つ!」


 目を覚ましたばかりで目を擦るルシフェルを前に、勇者は宣言をする。


「おっはよーって…へ、なに?どうしたのそんな殺気に満ちて。初めまして、だよね?

 もしかして僕が覚えてないだけで複雑な事情をもった僕の子供だったり?」


『わぁ、ルシフェル討伐の最終決戦に来ちゃった。……何十回も不快な光景見るよりはマシか』


「……消えろ!」


 ▶勇者の攻撃

 聖剣をルシフェルの首を狙って振った

 しかし、ルシフェルには当たらない。


「うわっ、殺意高いなぁ。……少しはこっちの話を聞いて欲しいんだけど、ダメな感じ?

 久しぶりに喋れるようになったから思い出話でもしたいのに!僕が何か悪いことしたかな?というか君ら何者なの?普通の人間とは思えないくらいの力を感じるんだけどさ……あ、分かったぞ!君らは勇者だね?まさか4人も勇者がいるなんてビックリだなぁ」


 ルシフェルは勇者とソルドの攻撃、フィリの魔法、ビルのアシストトラップをニコヤカな表情をしながら交わす。


「勇者は……僕だけだ」


「あれ、そうなの?おかしいなぁ。うーん、じゃあなんでこんな強いんだ………?あーでも……そうだね。仮説はいくつか建てられる。ところで君たちさ……これは何回目?」


「―――なッ!?」


 ルシフェルから出た言葉に、つい動揺してしまった勇者の腕が止まってしまう。


「……ねぇ、改めて言うよ?1回話し合おうよ。君らも、僕も損しない、すごく、大事な話をしない?」


「しない!」


 そう否定する勇者の目は、怒りに塗れている。何度も、何度も敗北したことで出来た感情だ。最早ルシフェルの言葉に耳を傾ける気はないらしい。


「はぁ、でもさ君らじゃ僕には勝てないって。天使……いや元天使の僕には、天使か神の力しか通じないの。君らがなにをやっても勝てない。それは、君らも薄々分かってたんじゃないかな?だからこそ、君らは何回も、何十回も僕に負けて、そんなにも強くなった。違うかな?」


「……」


 ルシフェルの問いに対しての、勇者の答えは沈黙だ。


「それは肯定って事でいいよね?……ねぇ、なんで君らは僕と争うんだい?僕らは似た者同士だと思うんだ……あ、もしかして似たようなこと前の僕言ってたりする?」


『相変わらずだ。なんか、こいつとの会話って変に繋がらないんだよ。こっちは超真剣に戦ってるのにさ。……それに、先に魔王だけ倒して、メランだけ吸収した状態でもこんな話す余裕あるって化け物だよなぁ』


「ねぇ、そこまで僕を倒したいの?何が君らをそこまで突き動かすの?」


「ただ、幸せになりたい。僕はルシフェル、お前を倒して!抑えてたものを、解放したい!だから……お前を倒す!」


 勇者は、気持ちを爆発させる。そして―――ルシフェルに剣を突き立てた。


 ▶ルシフェルに、傷を与えた


「うん、面白い。だけどおかしい。どうして傷がついたんだろう。……あぁそうか、本当に……忌々しい奴ら。ここまでやるか……」


 ルシフェルは、不快そうに、しかしニヤリと笑う。


「決めた。これこら僕は普通に、本気で、真剣に、君らと戦おう。……その前に一言―――勇者、君は()()()()()()


 最後の一言は、勇者だけに聞こえるように囁かれた。……そして、それを合図に決戦が始まったのだ。


 ◆


「……勝った?アイツに、勝った!」


 戦いの末その場に残ったのは、勇者、フィリ、ソルド、ビルの4人であった。

 それぞれ、傷は負っている物の致命傷に至った者はいない、完全勝利だ。


「あぁ、俺たちはついに勝った……勇者、勝ったんだ」


 この結果は、決して夢ではない。


「うぉぉぉ!やったんだ〜!最初にアイツ見た時は勝てないと思ったけど……俺ら勝ったんだなぁ!勇者様!」


 ソルドは勇者の肩に手を置き、ビルはその場で腕を掲げて喜ぶ。


「勇者……やっと、やっと終わったね」


 そして、フィリは勇者の手をそっと握り、そう呟いた。


「うん、ようやく終わった」


 勇者も、フィリの手を握り返し、そして涙を流した。


『……』


「ねぇ、フィリ……伝えたい事が有るんだ。君にずっと言えなかった事があった」


「うん」


「ずっと、ずっと前からフィリが好きだった!僕はフィリがこの世の何よりも愛おしくて……大好きだ」


「知ってる。私も、勇者が好きだよ。ずっとその言葉を待ってた」


 2人の顔はゆっくりと、ゆっくりと近づいた。そして口付け交わした。


 その光景は今までの努力が実を結んだとても美しいものだ。その一瞬だけまるで写真の様に切り取られて見える。


「ヒューヒュー!お二人さんお熱いねぇ!」


「ビル、少しは空気をだな……」


 仲間も心から祝福の言葉を捧げている。


『もう、覚めるかな……覚めてくれないかな』


 しかし、そんな素晴らしい事を経験したはずの勇者だけがそれを見て怯えて、震えていた。


 勇者の言葉に答え、場面は変わる。ルシフェルを討伐したその日の、夜。


「改めて、ようやくこの旅が終わったんですね……」


 尾張の街の宿屋で、美しい夜空に輝いている星を見ながら勇者が呟く。


「そうだな。……なぁ勇者、これからお前はどうするんだ?」


 そんな勇者の様子を見て、ソルドが聞いた。


「えっと、王様から報酬の金貨を沢山貰って、家とか建てて……そこでフィリと暮らしたりしたいです」


 顔を赤くしながら勇者は答え、それを聞いたフィリは勇者へと寄りかかる。


「あぁ、いい夢だ。お前たち2人は幸せになるべきだからな。それを見届けたら俺はお前らと別れたら改めて旅に出ようと思っている。人探しのな」


「え、人探し……ですか?」


「あぁ……昔の友人だ」



「昔の友人……。ソルドさんならきっと、また会えますよ」


 ソルドの指す人物を勇者は理解していた。だから勇者はそれだけ返した。


「えっと、じゃあ!ビルさんはどうするんですか?」


 そして話のバトンは自分が夢を語るのをソワソワとしながら待っていたビルへと渡される。


「へへ、俺はトレジャーハンターを続ける!今回の旅を通して改めて分かったんだ!この世は広くて、未知のもんが溢れてる。この好奇心は止められない!旅で力も着いたから今まで行けなかったとこも隅から隅まで制覇してんよ」


「……ビルさんらしいですね」


「本当にな」


「ビルはずっとビル、だね」


「おう!俺こそが世界を救ったトレジャーハンターのビルよ!」


 それからも、楽しい時間は続いた。

 そして、旅疲れと語り疲れで勇者達は深い眠りについた……はずだった。


 ◆


「―――勇者よ!そなたに魔王討伐の使命を与える!」


『……本当に、最悪な夢。夢……夢だった良かったのに……なぁ、俺もそう思うだろ?』


「え、なん……で、僕は!だって!!ねぇ!」


 勇者は錯乱している


「勇者よ、どうした」


「あ……ああぁ……もう、嫌だ」


 勇者は……


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