取り戻す(2)
「―――そうだお前は勇者……あぁ、思い出した。これでようやくお前と共に背負える」
相変わらず酒場で絡んでくるエー達を撃退したソルドだったが、その次に出てきた言葉は、いつもとは違っていた。
「え、ソルドさん……?まさか、僕のこと覚えるんですか!?」
「あぁ、本当に不思議なことにな」
勇者は、ソルドの手を掴んで泣いて喜ぶ。そしてソルドもそんな勇者に優しい笑みで見た。
『あーそっかぁ……これで皆思い出すのか!そうだよねぇ。うんうん!それにしても、感動的な場面だなぁ。涙が止まらないね』
そう言う勇者の顔に涙は無い。むしろ苦しそうな、険しい顔を隠せていない。
場面は再び変わる。
『これまた……少しくらい浸らせて欲しいなぁ。まぁ、文句言ってどうにかなる事じゃないけどね。どうせ夢だし。夢は夢でも普通の夢ではないけどね』
「ウォォァォォォォオォ!誰か助けてくれぇぇぇぇ」
「シンニュウシャハイジョ」
▶勇者の攻撃
全てのロボットは消えた
「うぉぉぉ!なんだ今のすげぇ!?助かったぜ勇者様!……あ?勇者……勇者。あぁ!そうだよ!勇者様じゃねぇか!それにソルドにフィリ!なんだこの記憶、おいおい全部思い出したぞ!?」
「あぁ、ビルさんも思い出したんですね」
「も?え、ま、まさか俺以外皆既に思い出してた感じぃ!?まじかよぉ……」
勇者達の反応が予想以上に落ち着いていて、ビルは肩を下げた。
「そう落ち込むな。俺だって記憶が戻ったのは今回だ。俺が思い出すタイミングが早かったのは出会う順番問題。それだけだ」
「……うぅ、そうだよな。俺たちは皆等しく勇者様と背負ってるもんがあるんだよな!とりあえずフィリの為にもさっさとエリクサー取り行くか!なんか力を滾ってるし今なら俺一人でもボブに勝てる気がするぜ!」
「そうですね」
『うーん、これは魔王を倒す日もそう遠くないね。というか今回で……あ、また場面飛びました!』
「再び人間に負けるなんて……こんな屈辱は……ない。だが……あの方がいる限り、私達は、復活す、る……」
▶魔王が消滅した
「や、やった!ついに、ついに魔王を倒したんだ!」
「ここまで、長かったな。本当に……」
「うん」
「いやぁ、ギリギリの戦いだったな!」
あまり見応えの無い魔王との戦い。それでもこの時の勇者達は、魔王を倒しただけで感傷に浸っていた。
『いきなり魔王倒す日に来ちゃったわ。でも誤差だね誤差。確か魔王倒したのと皆思い出したのは同じ時だ。それにしても初めての魔王討伐くらい見たかったけど』
「でもまだ喜んでられない。大魔王が残っているんだから」
「でも勇者、大魔王……どこ?」
勇者は大魔王の存在を思い出し再び気を引き締めるが、それらしい存在がいる場所は思い当たらない。
「ビル、お前のスキルならば場所が分かるんじゃないのか?」
「おうよ!……んん?」
「ビルさん見つけたんですか?」
「あぁ、なんかよ……それっぽいいのが……どんどんデカくなってるのが分かるんだけど……その反応があるの俺たちの真下っぽい」
ビルの言葉に、全員が体を強ばらせる。
そして、その時は訪れた。
魔王城に大きな震動が起こり、深い深い、奈落へと落ちていく。
『こりゃあ深い!……なんか夢の中で落ちるってのも変な感覚だな』
ふわふわと浮いている勇者もまた、穴へと落ちていった。
そうしてようやく勇者達が地に足を付けることになった時、その場所は闇であった。
文字通りの闇。何も見えないが、何か温かい物が下に敷いてあることは分かる。
カーペットだろうか。
▶勇者のフラッシュ
勇者は部屋を光で照らす
勇者は改めて自分達がいる場所を見渡す。
だが、そこにあったのは先程の闇よりもずっと黒い結晶。それ以外には特に目に見張るような物は存在しない。
「んん?なんだこれ」
「おいビル、無闇に触るな。何か……嫌な気配がする」
「ねぇ勇者、まさか、これが大魔王?」
「分からない、だけどそんな気がする」
そうして勇者達は結晶を前に、ただ警戒する。
「眩我眠妨貴何者」
ソレは、言葉のようで言葉でない何かを発した。
「しゃ、喋ったぁ?なんだよこいつぁ」
「……何か、来るかもしれない。身構えろ」
「闇囚全失我覚醒養分成」
▶???の???
勇者達の視界が奪われた
勇者達の聴力が奪われた
勇者達は沈黙状態になった
「……!?」
勇者は言葉が出ない事に、視界が再び闇に囚われた事に戸惑う。だが、止まる訳には行かない。
『ちょっと!見えない、聴こえないんだけどぉ!?なんで過去見てる俺も同じことになるんだよ!』
こっちの勇者もまた、同じように見えなくなっている。
▶???の???
???がビルを襲う
ビルが息絶えた
(……!?なんだ、何かが……かすった。何が起こった。何も、分からない……なら集中しろ!)
全てを閉ざされた中、それでも勇者は大きく邪悪な力を感覚で感じ取った。そしてそこへ攻撃を振り下ろす。
▶勇者の攻撃
しかし、???に全て吸収されてしまう
『見えない……!ってかこの時の俺が戦ってる形態ズルいんだよな。限りがあるとは言え攻撃吸収してくる』
勇者、フィリ、ソルドは視界を奪われた中、抗う……が。
▶ソルドが息絶えた
▶フィリが息絶えた
▶勇者が息絶えた
再び、場面は移り変わる。
『また飛んだって事は……死んだのか。夢なんだから俺の視界まで奪わなくなっていいのに、過去の記憶を見てる以上仕方ないけどね』
「……大魔王。何も分からなかった……なにも、出来なかった」
「そうだな、あれは、次元が違う。まずアレを生物と呼んでいいのか……」
「黒い結晶でしたね。アレに攻撃をしても通用した様には思えなかったし、未知」
草原を歩きながらソルドと勇者が2人で語らう。
『本当に未知すぎるよなぁ……何回も繰り返すの前提の敵。本当にふざけてる』
そうして勇者が大魔王に対して不満をぶつけているが……場面はまたしても、魔王城へと移り変わる。
「……行きます!」
勇者の言葉を合図に、それぞれが衝撃に備える。
『これは、アイツに殺されて5回目くらいの……かな?すっごい飛んだなぁ……人の死を省略するなんて許せないね!俺のやってきた事はどれも大切な記憶なのにさ。お前にとっては見せる必要も無いってか。いや、全部なんて見たくはないけどさ』
「何をする?まさか!お前たち大魔王様の居場所を―――」
……勇者一行は雪の森を辿ることなく魔王と対面していた。そしてある作戦の実行をしていた。
「そのまさかだ!」
勇者は、床に大きな衝撃を与え、大魔王の居る底へと繋がる大穴を開ける。
『そうそう、最速で魔王城に行って大魔王が少しでも時に叩け、っていう作戦だね!懐かしい』
メラン諸共、勇者たちは穴へと落ちる。
「結晶を……壊す!」
勇者一行はこの段階であれば壊せる可能性に賭け、結晶に向かい攻撃を振るう―――が、
「壊すのは……不可能ダ。だが、感謝しよウ。大魔王様の完全なる覚醒に近づけたことをナ」
「そ、そんな……ダメなのか。どうしようも……ないのか?」
『この頃の俺だと覚醒させないと倒す以前の問題だし、やってること自体は間違ってないけどね』
「……だが、大魔王様に危害を与えようとした事実、死を持って償わせよウ」
メランは、技を放とうとしている。
▶???の???
無数の伸びた何かが、襲ってくる
「……っ、危なかった。寸前で避けられて良かった」
すごい幸運と言うべきか。その攻撃は、勇者、フィリ、ソルド、ビルを本気で狙おうとはしなかったのだ。だから致命傷を与えることにはならなかった。
だが、複数のソレは、メランを貫いていた。
「……っ、何故……大魔王様……」
「……!?こいつら……仲間じゃねぇのか?」
「それは分からないが……メランの反応からして、予想外の事だったのだろう」
ビル、ソルドは目の前で起こった事に不信感を抱いている。
「勇者……恐ろしいのが来るよ」
「……うん、今までで1番だ。これはとんでもない化け物だ」
先程まで結晶だった物から、魔王とは比べられぬような夥しい嫌な気配が漂ってきている。
そしてそれに対し、勇者が斬撃を加えようとした時、ソレは目覚めた―――




