取り戻す(1)
「―――勇者よ!そなたに魔王討伐の使命を与える!」
旅立ちの日。勇者が勇者になった日。それを見てる他の存在がいた。
『……うん、こりゃあ今俺、夢見てるわ』
目の前にいる王と、そして過去の自分自身の姿。
先程寝たはずの勇者はそれを見ているのだ。
『あれかな、寝る前に昔話したから夢に出ちゃったか?……まぁ、そういうこともあるよね。間違いなく現実ではない。だって俺の身体も透けてるし』
半透明となった姿を見ながら、勇者はうんうん、と頷く。
『夢ってか過去の記憶見てる。……見せられているか。何がしたいのかは分からないけど、なんか目的があるんだろ』
勇者は自分にされたことを理解した様だ。そして一旦、夢の中の自分を追いかけることにした。
「……また、1から。でも今度はソルドさんの居場所も分かる」
過去の勇者は今までよりもまだ前向きだ。
ソルドの存在が、そして決戦前夜の言葉が希望になったからか。
『ふむ、ソルドさんね。ってことはこりゃ大分若い頃の俺だ。もう空気が若々しい!いやまぁ……重くはあるけど』
そうして酒場へと向かう自分を勇者は追う。すると酒場で飲んだくれたエー達の姿を見つけた。
『いやぁ、相変わらずエーさん達は昼間から酒飲んでるなぁ。同じ事を繰り返してる以上は当たり前だけど。最後に一緒に旅したのいつだったかなぁ。確か100と少し繰り返した頃か……すっごい前だなぁ』
勇者はふよふよと浮かびながら後方腕組体勢で思い出に浸っている。
『確か、酒場に入ったら仲間にしてくれ!って感じに言ってくるんだよね』
「おい!あんたもしかして噂の勇者様か?もし良かったら俺達も連れてってくれよ!力になれるぜ?」
『そうそう、こんなだった。……でもエーさん達多すぎるからその分守るのが大変だし、1人で全部解決できる様になるまで連れてくこと無かった。かといって断ると皆して囲んで来るし。寄って集って皆悪酔いしてるしで大変!……酔って無かったらいい人なんだけど』
「すみません……」
「おいおいーまさか俺達の善意断るってのか?」
「すみません」
「おおおん?なら俺たちの力実際に見せてやるぜ!」
『酔ってるとこれですよ。ただこれが無いとエーさん達から、ソルドさんが助けてくれないし接点持てなかったんだよな。つくづく運命ってのは変だね』
過去の自分に襲いかかるエー達、そしてソルドが現れ気絶させる。
「大丈夫だったか、少年」
「はい」
『くぅ、かっこいいね!今回もこんな感じで助けて貰ったなぁ。ただ断ったから少し胸が……あぁ。それよりこっちを追わなないと。いつも通り過去の事話して―――ってあれ?』
「フィリ、よろしくね」
『なんだ、いきなり飛んだな』
勇者の見る光景は、ソルドに助けてもらったところからフィリが仲間となった所へと移り変わっていた。
『うーん急にフィリが!フィリ見てるとさっきまでの事思い出して恥ずかしくなってきた……』
幽体だが、その顔は微かに赤くなっている。
『……そういえば、フィリはこの時からだったかなぁ?あ、うん。明らかに距離感近いし、もう記憶引き継いでる
そうして勇者は飛ばし飛ばしとなる記憶の中を見ていく。
『……速い、感傷に浸るまでもなく進んでいく。ビルさんとかいつの間にか仲間になったって感じ。で、今回は確か雪の森に……行ったんだったかな?』
「それじゃあ、雪の森に行きます」
『ビンゴだ!まぁ、メランに至っては雪の森で倒すか魔王城で倒すかの2択。メランには苦労したなぁ。だって……』
「───う、うぁぁぁあぁぁ」
雪の精霊は暴走している。
『この時点じゃ実はメランに勝てない。早く倒さないと妖精さんの暴走に巻き込まれてお陀仏。メランって厄介だ!雪の森で対峙する場合は森が燃やされる前に倒さないとだし、魔王城で対峙するなら魔王を先に倒さないと復活しちゃうし』
勇者はメランに対してぶつくさと文句を吐いた。
◇
勇者は次の記憶へと飛んだ。
「……え、フィリも記憶を引き継いでる?」
「うん、勇者と会ったら……思い出した」
『こ、これは!ラブケーンの宿屋!……すんごい飛んだなぁ。今回は魔王城ルート行ったみたいだけど……このタイミングでフィリに打ち明けられたのか』
「でもなんで」
「わからない、けど背負うって、決めたから」
「フィリ……」
『うん、背負ってくれたんだよね。大切な仲間だから』
勇者は過去のフィリの発言に対してしみじみとしている。
「―――さぁ、今回は復活出来ない様にメランを倒す!」
だが、勇者が絆に感動している次の瞬間には魔王城の前に移動していた。
『また凄い時間が……感傷に浸る暇もねぇや』
「……よく来たな、我こそは四天王最強のメラン」
▶追憶のメランが現れた
「すぐに……終わらせる!」
▶勇者の攻撃
メランの右腕が吹き飛んだ
「……!まさか、これ程に強いとは、予想外」
『よしいいぞ俺!頑張れ俺!』
勇者は過去の自分が戦う姿を見て応援している。
「ならば、こちらも覚悟の上、相応の技を使おウ」
▶メランの追憶の炎
勇者の動きは止まった
『あー、あの技は良くない!俺と《《アイツ》》以外だと避けないと死亡確定レベルのずるい技!また……死んだかな?』
「おい!勇者様の動きが急に止まったぞ、どういう事だ!?」
「メランとやらも止まっているな」
「これは、危険。勇者を……助けないと」
▶ビルの爆弾攻撃
風龍の加護の籠った爆風がメランを襲う
メランの炎は揺らいでいる
▶ソルドの攻撃
風雷舞斬を纏った斬撃が風の様に舞いながらメランを斬りつける
メランの身体は揺れている
「くっそ、せっかくの新しい爆弾なのに効いてねぇ……」
「勇者の話通り、流石に強いな」
ビルとソルドは動きが止まったままであるはずのメランにも大きなダメージを与えられないことに困惑している。
『……あー、そっか、思い出した。これで次回以降はメランには勝てるのか』
戦闘を見ていた勇者の表情を少し明るくなった。
「2人とも、避けて」
▶フィリの攻撃
とてつもない流れの水が複数放たれ、メランの身体を貫く
メランの意識が呼び戻された
「邪魔をされたカ……どうやら、恐れるべきは1人では無かったらしイ」
『うん、覚醒ですね。引き継いだのは記憶だけじゃない。今までの旅で得たフィリの力が合わさってすんごく強くなった』
「我だけでは力不足……しかし―――」
「すまないメラン……城を燃やさないために手加減させてしまい」
『魔王が合流。こうなったら終わりだ』
▶魔王が現れた
勇者一行は、魔王とメランの攻撃に為す術なく、敗れた……
『さて、次はどこ行くなぁ』




