貴方は頑張っている(1)
「勇者よ!ソナタに魔王討伐の使命を与える!……?勇者がいないぞ?」
「それが、どこかへと飛び出して行ってしまいました」
「……逃げたということだな」
「まぁ、そうでしょうね」
◇
「くそっ!!!なんで、なんで……僕は守れないんだ」
悲痛な叫びを一人、広い草原で漏らした。しかし認めたくないだけで、その答えはもう見えている。
ただ差がありすぎた。メラン、あいつだけ四天王の中でも強さの次元が違うのだ
精霊様に使った技……あれは一体何なのか。それに、なぜ地に落ちたはずのメランが僕達の前にすぐさま現れたのか。
分からないけど、今はとにかく、強くなる。
そういえば、最初の草原にも速いスッライムがでできたから、草原のスッライムを狩り尽くそう。
▶勇者は最初の草原で時間を過ごした
……1週間くらい、ずっとスッライムを狩ってるけど速いのはまだ3体しか倒せてない。
間違いなく、強くなれる。ただずっとここにいるのは効率があまり良くないかもしれない。
どうせなら、ラブケーンに行こう。
あっちでも速いスッライムは出るし、普通の魔物も強いから……その方が効率がいい。
……、……、…… ……、……、……
……、……、…… ……、……、……
……、……、…… ……、……、……
……、……、…… ……、……、……
───ひたすら戦っているとふと、頭に過ぎる。自分という存在がこの最悪の事態の元凶なのでは、と。
雪の森での事件が起きるのも、ボブとの事件が起きるのも、フィリと出会うキッカケの闘技場が開かれるタイミングも、その全てがズレていて。
思ってしまう。僕が何もしないことで幸せになるんじゃないかと。
もちろん、今魔物による恐怖に脅かされている村がいくつもあることは分かっている。
なんなら、この広い世界では僕が今までに行ったことの無い場所の方が多くて、魔物に支配された場所だって、進行形で魔物に滅ぼされようとしている国だっていくつもある。
でも、その行ったことのない場所でも僕をキッカケに大きな『悪い出来事』が起こるとしたら、僕という存在は悪と言えるのでは?
それなら何もしない方が―――
『───魔物により王が殺された』
『───1体の巨大な魔物によって村が壊滅した』
『───1体の魔物によって闘技場にいた人々が殺された』
『───勇者は何をしている』
『───勇者は逃げた』
『───勇者は』
◆
「───勇者よ!そなたに魔王討伐の使命を与える!」
……時間は限られていた。
おおよそ2年だ。2年ほど経つと魔王が大量の魔物と共に攻め入って来た。
王に至っては1年程で魔物……おそらくヨーによって葬られたらしい。結局の所……僕が行かなくとも四天王は動くということだ。
つまり、前回僕がしたのは……見殺しだ。
「勇者よ、なぜ涙を流している」
「すみません……、僕が魔王を討伐します」
あぁ、辛いなぁ。なんでこんなことやってるんだろう。会いたい、消えたい、もう見たくない。
―――何回、これで何回の死だろうか。
何回繰り返して、何回仲間と出会って、何回別れているのだろうか。
それでも、ここまで来たのだ。
メランも打ち破り、魔王城へと。
「勇者、もうすぐ魔王城だな」
「勇者……長かったね」
「まさか、トレジャーハンターの俺が魔王と直面することになるなぁ思わなかったなぁ!」
エーさん、ビーさん、シーさん、ディーさん、イーさん、エフさん、ジーさん、ソルドさん、ビルさん、そしてフィリを連れて最後の決戦に。
これでようやく、終わるのだ。
「よく来たな勇者!さぁ!ラストバトルだぁ!」
「う、うおぉおおぉ!」
魔王に向かって、全力の攻撃を振りかぶる。
「ぐはっ、やら……れた」
魔王を倒した!
「勇者、よくやったな!」
ソルドさん!
「勇者様が最強だぁ」
エーさん!
「うん!僕、やった……やっ……」
あれ、なんだろう。視界がぼやけて。
「勇者……?どうし───」
フィリが、皆がまた消えていく。あぁそっか、これは夢……か。
「───少年、大丈夫だったか? 」
「……」
あれ、目の前にソルドさんがいる。……おかしいな。まだ夢を見ているんだ。
「ソルドさん、会いたかったです。だって、どこいるか分かんないし……もう、会えないかと……貴方と会えない間も僕、ずっと頑張ったんですよ」
どうせ夢なら、今のうちに……甘えてしまいたい。
「……なぜ俺の名前を知っているんだ?」
「……?」
「少年……どうした、大丈夫か」
え、もしかして……夢じゃない?
▶勇者のビンタ
勇者の頬が赤くなった
「痛い……夢じゃない」
「……まだ、意識がハッキリとしていない様だな。少年は先程まで魔物の術にかかっていたんだ」
そうだ、僕は……自分からヨーの術にかかりに行ったんだ。
「あの、助かりました」
「……少年、なぜ俺の名前を」
「もう会うのは2回目だから」
「それは……どういうことだろうか?」
「えっと、───」
▶勇者は話した
「そうか、少年は繰り返しているのか……」
「信じるんですか?」
「……まぁ、思い当たる節はあるからな。俺も勇者、君の先代に当たる人物と共に魔王討伐をしたが行く先々で初めてとは思えない行動を取っていた覚えがある。だが……アイツも繰り返していたのならそれも納得できる」
「先代の勇者も同じように!?……あ、そうだソルドさんって何処で僕を見たんですか?」
先代の勇者の事も気になるけど……今は、ソルドさんと一緒に旅したいという気持ちが先行した。だから次以降の事を考えると出会える場所を知りたい。
「酒場だな」
「酒場……」
そういえば、久しぶりにエーさん達に会いたくて行ったんだっけ。
「ソルドさんもよければ一緒に旅に来てくれませんか」
「……俺でよければ力になろう」
▶ソルドが仲間になった
(ドォーン!!)
「魔王四天王、物理のサン参上!」
「なっ、どうしてここに四天王が!」
▶勇者の攻撃
サンは消滅した
▶フィリが仲間になった
サンも倒して、次は水の森だ。そこへ向かうため歩き出す。
「少年は強いな……本当に、強すぎるくらいだ」
「いや、僕なんてまだまだですよ。最後の四天王なんかには手も足も……」
「いや、少なくとも俺が戦った魔王よりも少年方がずっと強い」
「……え?そうなんですか?」
「あぁ。俺が昔に戦った四天王と少年がいう四天王とではそれこそ強さの次元が違う。先程の闘技場での四天王ですらあの強さとなると、復活した魔王も前とは比べ物にはならない強さになっているのか。……これは末恐ろしいな」
僕はまだメランにも勝てないのに、それよりも強い魔王がいて、その裏にいる大魔王という得体もしれない存在までもがいる。
……考えるだけで頭が痛くなる。
(なでなで)
「え、どうしたのフィリ?」
▶フィリは、勇者の頭を優しく撫でている
フィリどうしたんだろ……なんというか、恥ずかしい。
まぁ、心配してくれている……のかな?
◇
「俺ちゃんの攻撃を見切るなんて、やる、じゃん……」
▶ボブは消滅した
やったぞ!今回は、ボブを倒せた。
あの2年間のおかげで、ボブを倒せるくらいにはなったんだ。
ラブケーンで皆の装備も揃えて、雪の森に……いや、雪の森を通らないルートを行くか。
そうすれば魔王城の途中にいる魔物を倒すこともできるし、何より雪の森がメランによって燃やされることも無いのだから。
「次はラブケーンに行きます」
「……ん、わかった」
「ラブケーン!俺も行ってみたかったんだよ!」
ラブケーンに行く。……行くけど、ちょっと大変な事件が起こる。
「お、おい!龍が山から降りてきたぞ!」
媚龍が大きな羽を広げて街へと向かってくると村人の人がそう叫ぶ。
前回は早くにラブケーンに行ったから知っている。早く行くと丁度媚龍が降りてくる所に出くわすのだ。
「……これは、恐ろしい敵が現れたな」
「はい、でもこの龍に手は出さないでください。出したら―――」
▶ビルは媚龍に攻撃を仕掛けた
「へっへー龍の鱗はとんでもなくレアだからなぁ」
……あぁ。本当にこの人は!
「ァアアァァアァァァア!」
「え、怒ってます?」
「いきなり攻撃したのだ……怒るのも当然だろう」
これは、媚龍のアレがくる。
▶媚龍のブレス
勇者一行は興奮状態に陥った
「おっ……おっ!ヤベェ!なんかヤベェ!」
「……なんだ、これは」
「勇者……体、熱い」
まぁ、こうなる。直に喰らった分、その効果だって尋常ではない、はずなんだけどなんかあんまり興奮しないような……。
▶勇者には興奮耐性(中)が身についていた
「フゥーフゥー!」
「アァァアン!」
そして起こる龍の夫婦喧嘩。
これも決まった出来事の1つだ。
この後に灘められた媚龍は山に帰って、暴れた魔物を抑えるために風龍は途中にある草原に行く。
「……勇、者」
「うん、宿屋で休もう」
フィリがもたれかかってきた……。この雰囲気、状態も相まってダメだ。変な気が起こる前に安全な宿屋で休もう。ソルドさんも平常を装ってるけど息が荒いし。
ビルさんは……姿が見えないけどもういいや。
▶勇者一行(ビル以外)は宿屋へ向かった
▶フィリは勇者に体を密着させている
▶ソルドはベッドに倒れ込んでいる
「勇者、好き、好き……」
「―――っ!」
前よりもヤバい。フィリが興奮しすぎている。同じベッドの上でその……胸を押し付けるようにしてきてるけど、とにかくヤバい。
「フィリ、落ち着いて」
「勇者……好き。私……」
▶フィリは衣服を脱ごうとしている
「ちょっとフィリ!」
あぁ、ダメだ。媚龍が原因で僕に「好き」っていうのもそれ以上のことまで……これはよくない。
▶勇者のスリープ
フィリは眠りに落ちた
これで、よかったのだ。僕の選択は間違ってない。
とりあえずフィリを隣のベッドに移して……僕も変な気を起こす前に寝よう。
◇
―――眩しい。もう朝……あれ、なんだろう、何かが体に密着しているような……まさか、いや……え?
「……ねぇフィリ、起きて」
「ん、おは……よ」
僕の記憶が正しければフィリは移動させたはずなんだけど……おかしい。
「ねぇフィリ、なんで隣にいるの?」
「一緒に、寝たから……」
「……」
もしかして僕はやってしまったのだろうか?実は媚龍の攻撃でおかしくなっていたのかもしれない。
「……ねぇ、勇者。好きだよ」
あぁ、まだ効果がきれていないみたいだ。
やっぱり直で喰らったから。
「フィリ、落ち着いて。今のフィリは媚龍のせいでおかしくなっているんだ」
「落ち着いて……るよ。私は……《《前から》》、勇者が……好き」
「……」
ダメだ。頭が回らない。やっぱりおかしくなっているのは僕の方だったのかもしれない。
「勇者は……私のこと、好きじゃない?」
「そんなの―――」
好きだ。好きに決まっているじゃないか。
何回も、何回も出会って、その度にその存在は愛おしいものになっている。好きなんて言葉じゃ収まらない程に、僕はフィリの事を愛してしまっているんだ。
でも……この気持ちは伝えられるものでは無い。
伝えたら、死ぬのが、耐えられなくなる気がして。
「ごめん……」
だから今はまだ、伝えられない。
「……そっか」
「本当に、ごめん」
いつか、伝えられるその日が来ることを僕は願う。これは、僕の1番の望みだ。




