勇者だから
「―――こうして、2回の死で確信したんだ。俺は死んだ瞬間に《《勇者となった日》》に戻ることを」
勇者は仲間に自分の過去を語ってしまった。
最初の旅でヨーによって引き起こされた
エー達の話、死んだと思ったら再び勇者となった日に戻ったこと。
「勇者様が何度も死んでいるだなんて」
「お師匠、そんなに辛いことが」
「勇者……」
勇者の話を聞いて3人もまた、物の重さに心を痛めた。
「……ごめん、こんなこと話して」
こんなことを話すべきではなかった。しかし勇者は自分の行動を悔いないだろう。
「勇者様そんなこと言わないで、私たちが求めたのよ」
「そうですよお師匠!1人で抱え込まないで下さい」
「勇者は今、何回目……なの?」
「分かんないだよね。3桁を超えてから数えるのをやめた。いや、本当はもっと前から数えてないんだけど」
勇者は笑った。
「3桁もですか!?お師匠がそんなに死んでしまうなんて……」
「いや、俺も成長しているからさ。途中から負けるなんて無くなったし毎回死ぬことはなくなったよ。まぁ、何回も死ぬってこと自体おかしいけど」
勇者は先程まで泣いていたが、話しているうちに取り繕う程度の余裕は出来たのか明るく話す。
「それじゃあどうして3桁以上、繰り返しているの?」
マネからの当然の問に、勇者は少し頭を悩ませてから答える。
「勇者だから、かな」
勇者だから。その答えの意味は誰1人理解出来ていない様子だ。
「勇者、どういうこと?」
フィリが聞いた。
「そのまんま。俺が勇者だから繰り返しているんだよね。死んでも、死ななくても」
「お師匠、よく分からないです……」
「うん、俺も分かんない。とりあえず言えるのは……明日皆と別れることになるって事だけ」
勇者の表情は再び曇る。
「勇者様、一応だけれど死ぬだなんて言わないわよね?」
「まさか、俺が魔王ごときに負けるとでも?これで一撃だよ一撃」
勇者は人差し指を立てた。魔王程度指1本で十分らしい。
「それならどうして……」
「戻る条件は他にもあるから。それが、《《俺の場合は》》魔王……いや、大魔王まで倒すことなんだ」
「大魔王……?勇者は何回も、その大魔王を倒してるの?」
「そうなんだよね。いやぁ懐かしい。何回倒したことか……昔は手も足も出なかったのに」
勇者は昔を思い出し、腕を組みながら懐かしんでいる。
「でもお師匠、逆に言えば大魔王を倒さなければ戻らなくて済むんじゃないですか?」
リウの鋭い指摘だ。
「うん、そうかもね」
「なら―――」
リウの言葉を遮り勇者は口を開く。
「でも、倒さないといけない。それが俺のやるべき事だから……ところで初めて大魔王を倒した時のことも話していい?」
どうしても勇者は語りたい様だ。
既にタガが外れてしまったのだろう。
「もちろん聞くわ」
「聞きます!」
「……聞くよ」
そんな3人の反応に、勇者も気を許してしまった。
「やっぱりさ、あの時のことたまに話したくなるんだよね。忘れないようにする為にもさ!何回も繰り返してると、どうしても忘れちゃうこともあるというか……そういえば全部忘れた時もあったけど。……いや、あれは忘れたっていうか……あれなんだったんだろう」
勇者は明るく話すが3人は聞いているだけでも胸を痛める。そんなこと、勇者は分かっていただろうに。
「まぁ、とりあえず話したいこと話すよ」
そうして、顔を俯かせて勇者は再び語り始めた。




