2ターン目(3)
「な、なななナントォォォ!自分を四天王と名乗る男の乱入があったものの!それを見事に討伐した!最後に残った1人の男は―――この男だぁー!」
……他の観客も選手も逃げた状況で、唯一残った司会の人によって僕の勝利が告げられた。
でも、素直に喜べないよ……。
(ツンツン)
今……誰かに肩を―――僕が後ろを振り向くと、そこにはあの奴隷の女の子がいた。
「勇者、今この奴隷の所有者は君にある」
あ、そうか……僕が優勝したから。
「何か、命令を求めているんじゃないか?」
「命令だなんて……そんな」
「なに、命令と言っても酷いことを頼めと言った訳では無い」
「あ、そうか。じゃあ、魔王討伐の旅に着いて来て欲しい……とか」
僕がそう言うと彼女はこくん、頷いた。
僕に着いてくるのは当たり前の事なのに……なんかおかしな命令をしてしまった気がする。
でも、こうなった以上、この旅で僕は彼女を守るんだ。絶対に、絶対に。
「良かったな、勇者。やっぱり冒険に華は必要と言うものだからな」
「……ソルドさんもそういう事、言うんですね」
「意外か?」
「少し」
◇
女の子を連れる様になってから少し時間が経った。そうして分かったのは彼女は声が出せないことと魔法が得意、という事だ。
もし、仮に奴隷じゃなければ彼女の職業は魔法使いとして活躍していたと思う。
そういえば魔法と言えば僕も使えるようになった。……初めて旅に出た時は簡単な火を出す魔法も使えなかったのにな。
着実に、勇者として成長しているのが感じられる。
それと同時に、もっと強くなった状態でエーさん達を、シールドさんを救えたら、なんて思ってしまう。
既に過去に戻ってやり直していることを考えると、もしかしたらそれが出来る可能性は否定できない。
でも、僕が今生きているのはソルドさんと、女の子が一緒にいるこの時だ。
有り得るかも分からない理想を考えるよりも今はただ、魔王を討伐するために行動をするんだ。
……そういえば『女の子』と言ってるけどこの子にも名前はあるのだろうか?
「ねぇ、ソルドさん」
「どうした、お腹でも減ったか?」
「いや、この子に名前はあるのかなって」
「奴隷になる前は名前があったのかもしれないが……今はもうどうだろうな」
せめて声が出せるようになれば、それも聞けるのだけど……。
「そうだ勇者、君が名前を付けてあげるのはどうだ?」
「え、僕が名前を?」
「何にしても、呼べる名前がある方がいいだろう?」
「じゃあ……フィリとか」
……咄嗟に思いついた名前をつけたけど、どうなんだろうか?名前に特別な意味がないというのは。
「いい名前じゃないか」
「でも咄嗟につけちゃったから特に名前の意味とかなくて。やっぱりちゃん名前に意味を考えた方が……なんて」
「深い意味が無くてもいいんじゃないか?
いいかを最後に決めるのは本人だからな」
「そう、ですよね。ねぇ、君の名前なんだけどフィリってどうかな?」
面と向かい合って名前を告げてみる。
すると彼女は笑みを作って、頷いてくれる。これは多分……喜んでくれてるのかな。
うん。喜んでくれてるといいな。
「それじゃあ改めてよろしくねフィリ」
そうしてフィリはゆっくり「よろしく」と言うように頷いた。
◇
次に、僕達が向かったのは水の森だ。
なんでも、噂によると水の森には精霊が住んでおり勇者にしか抜けないという伝説の剣が眠っているらしい。
「ここが水の森!」
水の森に着くと、その辺りには水の塊?のような物が複数浮かんでいる。そして水の森を象徴するかのように大きな泉がそこにはあった。そして、僕達が泉に近づくと―――
「よく来ましたね、勇者」
泉からザパアッーと音を立てて女の人が現れた。多分、噂の精霊なのかな?
「初めてまして。えっと……精霊様、ですよね?」
「えぇ初めまして、私こそがこの森を守護する水の精霊です」
「その……伝説の剣を引き抜きに来たんですけど」
「それなら、これをどうぞ」
▶水の精霊から勇者の剣を授けられた
「え!?これって引き抜くんじゃないんですか!?」
「既に土台が壊れてしまったのです。それに結果の決まった試練等あっても無駄です。貴方が勇者かは見れば分かるので」
……えぇ。
「あぁ、それと魔王のいる城に行くのなら雪の森を通るといいですよ」
「雪の森……ですか?」
「はい、私たち精霊の長がいるの森です。魔法で隠された場所なのですが、そこを通れば1日もせずに魔王城に着きます」
1日もしない!?今辿る予定のルートたと魔王城までは半年はかかると思ってたけど、雪の森からはそんなルートがあるなんて……少しだけ早く世界を救えそうだ。
「ちなみに、そこにはどうやって行くんですか?」
「ここを出て―――」
話を聞くと、雪の森にはこの先にある遺跡の更にその先にある森で「開けユキユキ」と言えば入れるらしい。
「ありがとうございました!それでは!」
こうして、僕達は水の森を後にした。
◇
「勇者、次は武道家の街……ファイターストリートだ」
「はい」
雪の森へ行くには、ここと武道砂漠、そして例の遺跡を抜ける必要があるらしい。
「うわぁ、なんかこの街も凄いなぁ……」
水の森から数日を得て要約ストリートファイターに着いた。……改めて時間について考えるともう王国を出て半年以上経っている。
この旅が始まった当初は本当に不安なことが多かったけど今は、それもだいぶ良くなった。
うん、それにしても強そうな男の人が沢山いる。
「修行がてら、ここに何日か滞在するのもいいかもしれないな」
「そうですね」
前に戦った四天王の1人……僕じゃ勝てなかった。だけどきっとこれから先にいる2人はもっと強い。なら僕は強くならないと行けない。
「―――うわぁ!魔物だぁ!」
え、魔物!?
「ソルドさん!」
「あぁ、行こう」
そうして僕達が声の聞こえた方へと走ると―――
「パンッパンにしてやるパンー」
「な、なんだこの魔物……まさか四天王?」
「いや、巨大パンダだ。しかし何故街中に……」
巨大パンダ……ソルドさんが前に言っていた魔物じゃないか。今は被害が広がる前に倒さないと!
▶勇者の攻撃
しかし分厚い皮と肉で刃が通らない
「強い……!」
▶ソルドの攻撃
蒼雷が巨大パンダに降り注ぐ
巨大パンダは泣きそうだ
▶フィリの攻撃
メラァフレイムが巨大パンダを包み込む
巨大パンダはこんがりした
▶???の攻撃
昇給拳(極)によって巨大パンダが後ろに倒れた
「パッ……パァン……」
え!?巨大パンダが倒れた。
「大丈夫ですか?……一緒に戦いますよ」
この人が今の一撃を?こんな僕とそんな歳も変わらなそうな女の人が。
「これは……力強い助っ人だな」
「パンパンしてやるぅだパン!」
▶巨大パンダは起き上がった
巨大パンダは怒っている
▶勇者の攻撃
「メラフレアブレイク!」
▶ソルドの攻撃
「蒼鬼閃光!」
▶フィリの攻撃
メテオが降り注ぐ
▶???の攻撃
「昇給拳(極)!」
巨大パンダは倒れた
「や、やった!」
巨大パンダを倒せた……でもこの人は何者なんだ。すごく、強い。
「街に入った魔物討伐を手伝ってくれてありがとうございます。……御三方は旅の方ですか?」
「あ、はい……魔王討伐の旅をしていて」
「え、魔王討伐の旅って……もしかして勇者様?」
「えっと……そうです」
自分で勇者と言うのはなんだか恥ずかしい。それに多分僕はこの人よりも弱いし。……勇者パーティなんだけどな。
「……それにしても先程の技、相当に洗練されていたが君は?」
やっぱりソルドさんから見てもそうなんだ。
「あ、はい私はリウと申します……この街の鍛冶屋の娘です」
「鍛冶屋の娘ってことはもしかしてリュウキさんの?」
「え、父のことを知ってるんですか?」
「あぁ、俺が持っているこの剣は君のお父さんに作って貰ったんだ。ところでリュウキさんは元気だろうか?」
「父は……」
お父さんの話題を出されるとリウさんの顔が曇った。まさか……?
「以前に巨大パンダが出た時にぎっくり腰になってしまって……だから今は父の代わりに私が街を守っているんです」
「そうなんですね。……って、巨大パンダが前にも出たんですか?」
「はい……ココ最近は魔物の動きが活発になっているみたいで……」
これも魔王のせいなのかな。
「事態は最悪、か。勇者よ、ここは1つリウさんに修行をつけてもらってはどうだ」
「私が勇者様にですか?そんな恐れ多い……」
「いえ、ぜひ一緒に修行したいです!」
「では」
▶勇者とリウは修行した
「―――リウさん、ありがとう!すごい為になる修行でした!」
「いえ……私も為になりましたよ」
「なぁ、リウさんも旅に着いて来てくれないだろうか」
あのソルドさんがそんな提案を。
でも、実際にリウさんが一緒なら心強いだろうな
「すみません……私は父に代わってこの街を守らないと行けないので」
「あ、そうですよね……。それじゃあ、リウさんも頑張って下さい」
「はい、では御三方も頑張って下さいね」
▶勇者一行はリウと別れた




