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勇者様は抑えられない!〜世界を救う勇者は好きに生きる〜  作者: ゆずリンゴ
第2章

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15/22

勇者になった日(3)

 捜索依頼を受けた僕らは、ウバワレの森へ向かいそこで探していた相手が既に亡くなっていた事を知った。


 彼は既に骨になっていてどれがその人物なのかは分からないけれど、倒した魔物の中にあった赤いリングが答えなのだ。


 そして帰ってきた時、僕たちはこの依頼を出してきた人物と話したのだ。


 痩せた16歳くらいの女の子だった。病気を患っていたんだろう。だからこそ兄である男はあの森へと向かったのだ。


 幸いというべきなのか、僕らが遺品として持ち帰ったものの中にフワフワナオール草の入ったカバンがあった。彼はしっかりと遺したのだろう。この子の病はきっと治せるだろうけど、この花を見る顔がどうにも寂しく見えた。


 当たり前だ。家族が死んでしまった事を知ったのだから。僕は、救えなかった事を悔やんだ。


 ◇


 ウバワレの森に言った翌日。

 8人部屋の宿屋で僕達は次の目的地について話していた。


 まだ気分は上がらないけれど、早く次の目的地に行きたい。多くを助けるために。


「……え?」


 しかし、そんな僕をみんなが取り囲んできた。


「勇者様、大丈夫か。その……なんだあまり気を病むな」


「そうだぞ!あんたはまだ子供なのに背負いすぎなんだ」


「ただでさえ魔王討伐なんて大きすぎるもん背負ってんのに他のもんまで考えてたら潰れちまうぜ?」


「それに勇者様のお陰であの子もまだ救われたはずだぜ」


「大切な兄貴がどうなったか知らないままでいるのは辛いだろうからな。変に夢みたままでいるよりもこの方が二人にとって良かったと思うぜ?」


「エーさん、ビーさん、シーさん、ディーさん……イーさん」


 確かに5人の言う通りだよね。


「……よし!今日は息抜きするぞ!いいよな勇者様!」


「え……息抜きって、イーさん?」


「ここまでずっと魔物倒して、人助けしてるけどよ、たまにはちゃんと休んだり娯楽に身を委ねないとしんどいだろ?少なくとも俺は辛い!」


   イーさんの言葉に他の人も頷いている。


「うん、確かにそうだね」


   ここまでの旅路でお金も集まっていたし、何より、この優しい言葉を僕は断れなかった。ということで次の街に来たんだけど……。


「うっひょぉー至る所にバニーさんがいるぜ!」


「最高!」


「ナンパしようぜ!」

(以下省略)


   何この街。色々と凄い。もうすごい服を着てる女の人が沢山いる。あと所謂大人のお店ってやつが沢山ある。


 酒場とはまた違った入りにくいお店だ。


「勇者様!どこから入りますか?」


   イーさんは既に興奮している。

   ……というか僕は大人のお店に行くの初めてだからどこに行けばとか分からない。


「なぁ!まずはバニバニ天国行こうぜ!」


   最終的に、エフさんからの提案でバニバニ天国に行くことになった。


「あらぁ、団体さんが来たわねぇ」


   わっ、……ワァッ。


「あらあらまだ小さい坊やもいるみたいねぇ」


   あ!金髪大人っぽい系お姉さんの胸が当たってる!当たってる!


「おいおい勇者様羨ましいぜ!」


「俺たちオッサンを甘やかしてくれるバニーちゃんはどこかなァ?」

 

   エーさんとビーさんも興奮してるみたいだ。

   なんだがちょっと……いや、かなり恥ずかしいけど複数のバニーさんに連れられて僕達は席へと連れていかれた。


「あらぁ、皆さんは魔王討伐の旅をしてるのぉ?」


「すっごぉいカッコイイー」


「お兄さん達腕ふとーい。お強いんですねぇ」


   相手をしてくれるバニーさん達に冒険についての話をしているとたくさん褒められる。

   何とも……その、アレである。

 

「ふぅ!最高だぜ!勇者様も酒呑んじゃいなよー」


   ……既にお酒によって出来上がったジーさんが僕にお酒の入ったグラスを渡してきた。


「いや、僕まだそういう年齢じゃ……」


「おいおい!いい子ちゃんかよ!俺が勇者様ぐらいの頃にはもう酒を呑んでたぜ?」


「でもぉ……っもごご」


   ジーさんに酒を無理やり呑まされた……


「うぅ……美味しくない」


   なんというか苦い、僕これ苦手かも。

   もう少し僕が大人になったら美味しいと思えるのかな?


「ちょっとぉ!こんな可愛い子に無理やり呑ませちゃだめよ!」


「ごめんなちゃあい」


   ジーさん……その口調はキツいよ。


「はい。坊やにはジュースね」


「ありがとうございます」


   こうして僕たちはバニバニ天国を楽しんだ。


「―――よぉし!次行くぞ!」


「え、まだ行くんですか?」


   もう既に結構な時間を女の人と飲み物にお金を使って過ごしたのに。


「行ったろ?今日は1日楽しむって」


「え、そうでしたっけ?」


   ……うーん、でも言ってた気もしなくはないなぁ。


「よーひ、づぎはぁ……バニーガーデンにいくぞぉ」


   ジーさんまだ酔ってるなぁ……


「―――バーニバニバニ!」


   次なる目的地、バニーガーデンに入ると何だが聞いたことのある声が聞こえた。……うーん、どこで聞いたんだっけかなぁ。


「……おい勇者様、あそこにいるのって王様じゃねぇか?」


「え、いやまさか」


   エーさんはそう言うけど、こっちが命をかけた魔王討伐の旅に出てるのに1国の王が離れた所にある大人のお店に来て「バーニバニバニ」って笑っているわけが……。


「あ、勇者ではないかぁ!魔王討伐を放ってこんな所に来るとはけしからんなぁ!」


「……あぁ」


   本当に王様本人だった……。っていうかお店で変な笑い方ししてるこの人だけには、けしからんって言われたく無いんだけど 。


「まぁまぁ、コイツらって頑張ってるれすよぉ!」


「ジーさん……」


「そうだ!勇者様はよーく頑張ってる」


「エーさん……」


 仲間って温かいな……。


「クスクスクス」


 ……ん、クスクスクス?誰の声だ。

 ―――っ!?誰だこいつは……子供?違う、魔物だ!……いつの間に目の前に。


「皆!敵!」


「あ!?なんだこいつ!こんな魔物は見た事がねぇぞ」


 始めてみる異様な魔物を前に僕たちは直ぐに戦闘態勢に入った。しかし、それよりも早く敵の攻撃が放たれてしまったのだ。


「ヨッヨッヨ、僕は四天王の1人!欲望のヨー!これでも喰らえー!」


 ▶欲望のヨーが現れた

 ▶欲望のヨーの攻撃

 ヨーから幻惑魔法が放たれた、王様が欲望に囚われた


「……π、π」


「な、なんだ。いきなり王様が変に……」


 さっきも変だったけど目がおかしい。昨日のエフさんと同じ感じだ。幻覚を見ているんだ。


「まだまだいくヨー!」


 ▶ヨーの攻撃

 ヨーは全体に幻惑魔法を放った

 勇者一行は欲望に囚われた


「あ、あ、……金だぁ!金ェ!」


「酒!女!バニー!」


「エーさん!ビーさん!シーさん!ディーさん!イーさん!エフさん!ジーさん!」


   どうしよう、皆もおかしくなった。


「アレェ?どうして君だけ欲望に狩られていないんだヨ」


「おい!皆を元に戻せ!」


「……まぁ、いいヨォ!お前は殺しちゃえばいいからヨ!」


「僕だって強くなったんだ!負けない!」

 

 こいつを倒せば、皆にかかった魔法も解けるはずだ。倒す。


 ▶ヨーの攻撃

 鋭い風の刃が勇者を襲う

 しかし勇者は避けた


 ▶勇者の攻撃

 勇者の剣がヨーの急所を突いた

 ヨーに大ダメージを与えた


「……あれー?思ったよりも強いヨー?」


「負けない!」


 こいつ、あんまり強くない。勝てる!


「でもでも負けないヨー?仕方ないから本気をだしちゃうヨー!」


 ▶ヨーのdesire doll(欲望人形)

 欲望に囚われた者はヨーに操られる人形になった

 勇者一行と王様が勇者を捕える


「え、どうしたの皆!」


「ヨッヨッヨッ!仲間の存在が仇になったヨねぇ?やっぱり人間は欲望には勝てないヨー」


「うっ、無理やり引き剥がすしか……」


「そんなことさせないヨー?養分が減るのは勿体ないけどお前は絶対に倒すヨォ」


 ▶ヨーのdoll bombドールボム

 欲望に囚われた人形は爆弾となって爆発した

 勇者に大ダメージ


「ウワアアァ!!」

 

 痛い、痛い。燃えて、身体が熱くて痛くて、でもそれよりも───皆が爆発して。


「あれぇ?おかしいヨ、まだ生きてるヨー?でもまだ終わらないんだヨー?」


   許さない、許さない、許さない、許さない。


「怒ってる所悪いけどお前じゃ勝てないヨ?他の逃げるヤツは今『生きたい、逃げたい』って欲があるから操れるヨー!人間は弱いから簡単に人形になるだヨ」


 ▶勇者はdesire dollの大群に囲まれた


「くっ……」


 どうしよう、仮にもこの人たちは普通の人間……攻撃出来ない。


「今度こそ終わりだヨー!もう、お別れだヨ」


 ▶ヨーのdoll bomb

 爆発に巻き込まれ勇者は瀕死だ


   あ、もう何も見えない……僕は死ぬのか。

 それに僕のせいで皆まで。

   エーさん、ビーさん、シーさん、ディーさん、イーさん、エフさん、ジーさん……こんな旅に巻き込んでごめんなさい。


「それじゃあ、お別れだヨー!バイバイだヨ」


 やっぱり僕は、世界を救う勇者なんかじゃ無かった。


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