雪の森
「ってことで、この冒険が始まって早くも一月が経ったのですが……次は雪の森に行こうと思います」
マティスとの一件から日も過ぎ、真面目に歩いて移動をしていた勇者一行。道中の魔物を倒し、休み、食べ、修行もした。
「雪の森?聞いた事の無い場所ね」
「お師匠、雪の森ってなんですか!」
「教えて勇者」
「えー、魔王城への最短裏隠しルートです。なので雪の森を抜けたら次はもう魔王城!」
本当に早いもので魔王城への道のりは残り僅かのようだ。
「……そう、なら次が一緒に私の行く最後の場所なのね」
「え、嘘。マネいなくなるの!?」
マネから言われた衝撃的な事実に勇者は驚きを隠せない。
「勇者様、そういう契約でしょ?」
「マネちゃんがいなくなるなんて悲しいよ」
「マネいなくなるの……?」
マネとの契約を聞いていたのは勇者のみ、他は知らない。
「助けて貰ったばかりで悪いのだけれど私、怖いのは苦手なの」
そうして、マネにとっては最後の目的地である雪の森向かうのであった。
◇
―――ピヨピヨ、ワンワン、ニャーニャー、オラオラ、森に入ると生き物達のそんな鳴き声が聞こえてくる。
「わぁー凄い……幻想的な場所ですね、お師匠!」
「うん。すごくすごいよね」
「そうね」
「きれいだね……」
周りに生えている木々は結晶で出来ているのか、様々な色の光沢を発している。そして真っ白な空からは赤、黄、緑、他にも何色もの雪の結晶がふわりふわりと降りてくる。
『―――おいなぜ人間がここにいる!』
そんな幻想的な場所で突然、乱暴だが可愛らしい声が響いた。
「……お師匠、今なにか聞こえた気がします」
「私も聞こえたよ」
「そうね、何か聞こえたわね」
「うーん、精霊さんじゃないかな」
「精霊さん!精霊さんいますかー?」
こんなにも幻想的な場所なのだ。やはり精霊の1匹や2匹はいるだろう。
『うっせぇーやい!さん付けじゃなくて様だろ!』
そんな声が返ってきたがやはり姿は見えない。
「……やっぱり気のせいですかね?お師匠はどう思いますか」
「いや、やっぱり精霊さんだよ」
「そうですか!」
『おい人間!よく見ろよ!いるだろここに目をよーく凝らせ!』
そう言われて全員目を凝らすが……?
「勇者……いるかな?」
「確かに、目を凝らしたら見える気がするわ」
「そうですね!」
いるのか居ないのかよく分からない。
『あ、透明化してた』
自身が透明化していたことに気がついたおっちょこちょいな精霊は今後こそと、その姿を表した。
「よぉ!俺こそが雪の精霊さ!」
男勝りな口調の可愛い声をした雪の精霊。
その姿は雪のように白く柔らかな肌を持ち、透き通った髪を編み込んだ、それはそれはとても可愛い小さな少女であった。
瞳もおっとりとしていてとても可愛い。
「わぁ……お師匠、ちっちゃくて可愛いですよ!」
「精霊さん……すごくかわいい」
「本当、可愛いわね」
3人各々感想を言う。雪の精霊は可愛い。
「あぁ?可愛いだとー?べ、別に褒められても嬉しくないんだからな!」
「うん、正統派ツンデレ」
あまりにも定番な反応に勇者も即座にそう言葉を口にした。
「ですね!」
「そうね」
「うん……」
そんな、正統派ツンデレの美少女精霊に勇者一行が癒されていると……
(グワァン!)
空間に穴が空いた。一見闇のように黒い空間、その中には確かに赤く燃える炎も見える。そんな穴からは身体を燃え上がらせる魔物が現れた。
「ふっ、我こそは―――」
しかしその瞬間に勇者の一撃が放れた。
▶勇者の渾身の一撃
最後の四天王は消滅した
「……お師匠、今何かいましたよね?」
「気のせいじゃないかな」
「そうね、気のせいよ」
「うん、気のせい……」
最後にして最強の四天王が姿を表したように思えたが気のせいだったようだ。
「……ところで人間!お前ら何の為にここに来たんだよ!」
雪のツン美少女精霊は彼らが勇者一行である事も知らないので、彼女からすれば突然現れた変な人間なのだ。
「んーと、魔王城に行くための近道だから寄ったんだよね」
「は?いや、そんな近道だから……って言ってるけど、まずなんでこの場所をなんで知ってるんだ!」
雪のように透き通った美少女が反論をする。
「……まぁ、知ってるからとしか言いようがないよね」
「私はお師匠に着いて行ったらいつの間にかいました!」
「同じくそうよ」
「みんなに同じく」
恒例となったワープを勇者は結局使用していた。よって勇者以外どうやって来たのか分からない。
「えぇ……(ドン引き)」
奇跡的美少女精霊がドン引きをしている。
「それに俺……勇者だから早く魔王討伐しないといけないんだよね」
「勇者だと?そうか……」
勇者が勇者であることを告げると雪の精霊は納得したように頷いた。
「勇者なら知っているのも納得……いや、こんな短絡的な勇者は初めてだが。勇者としての使命……それを果たす為であればこの森を通って行けばいい」
「やったね!さす精!」
優しさすらも兼ね備える非の打ち所の無い雪の精霊に勇者は気分が上がった。
「流石精霊さんです!」
「そうね」
「さすが、だね」
「ぐぬぬ、様をつけろ!」
そうして1悶着はあったものの勇者一行は近道で魔王城へと向かうことができるようになった。
「ところで」
「なんだ、早く通らぬか」
早速魔王城へと向かうのかと思ったが、勇者は足を止めて美少女精霊に話しかけた。
「今日1日ここにとまってもいい?」
勇者はどうやらまだここに居たいらしい。
「……は?」
しかし雪の精霊様にとっては意味が分からないようだ。
「いや、魔王城行くの明日にしたくなって」
「……無理、というか嫌なんだが」
「いいじゃん!疲れたの!勇者だって休みたいの!」
▶勇者は駄々をこねた
精霊は再びドン引きした
「まぁ……他の精霊を起こさないのであれば1日くらい。特別だからな!」
やはり寛大な心を持っている雪の精霊。
さす精である。
「ヒュー!さす精!」
勇者も持て囃す。
「ふん、俺様の偉大さが分かったか!」
「流石精霊さんです!」
「流石精霊ちゃんね」
「さす精だね」
「……やっぱり無礼者だ!あとさす精に至っては特にやめろ!」
美少女精霊は旅に加えられない勇者の旅も終わりは近い。だが勇者の旅は終わらない。




