6.希望の光援者召喚計画
「よし、俺様たちの紹介はこんなもんでいいだろ」
アレガルトが手をパンと叩き、場の空気を切り替えた。
「それじゃあ本題に入ろうか。マサト、お前がこの世界に召喚された理由についてだ」
「そう、それだよ! 俺は早くそれを知りたかったんだよ」
この夫婦の、濃すぎるキャラクターのせいですっかり忘れていた。俺がこの世界に来た理由。ようやく核心に触れられると思うと、背筋がぐっと伸びた。
「そう慌てるなって。ちゃんと説明してやる。ママ、あれをお願い!」
「わかった」
するとロネッカが、足元から何かを取り出した。両手で丁寧に抱えるように持ち上げると、ゆっくりと俺の前に差し出した。
縦30センチ、横20センチほどの本みたいだ。表紙には深いえんじ色の革が張られており、暖炉の光を受けてしっとりとした光沢を放っている。
「……これは?」
「これは、私が自作した絵本だ」
「自作した絵本?」
「ああ、そうだ。これには我々が考えた、とある計画について書かれている。マサトの召喚にも深く関わる、極めて重要な内容だ」
「そうなのか。でもなんで絵本なんだ?」
「文字ばかりの難しい計画書より、絵本の方が頭に入りやすいと思ってな。ほら、イラストとかもあって可愛らしいだろ?」
そういうことだったのか。絵本を自分で作るなんて、相当な手間と時間が掛かるはずだ。それなのに、この形式を選んでくれたのは、俺みたいな異世界の人間にも理解しやすいようにという、ロネッカなりの配慮だったのだろう。
「でも、絵本なんて初めて描いたんだ。だから、その……、温かい目で見てくれると助かる」
ロネッカが俯きがちに呟いた。少し恥ずかしいのか、頬がほんのりと赤く染まっていく。
「ふぅ。……それじゃあ、読み始めるぞ」
彼女は心を落ち着かせるように小さく息を吐くと、表紙にそっと手をかけた。革が擦れるかすかな音。ゆっくりと表紙がめくられていく。
なぜ、俺はこの世界に召喚されたのか。いよいよ、その真実が語られる——。
「……ん?」
ページに描かれていたのは、石造りの部屋に閉じ込められている男。その上には、ピンでせき止められている真っ赤なマグマが。隅にはキラキラと輝く大きな宝箱が置いてある。
……いや、これ広告でよく見るゲームじゃね?
「おっと、広告が入ってしまったな」
「え? これロネッカが作ったんだよな? なんで手作りの絵本に広告が入ってんだよ」
「すまない。でも安心してくれ。私に月額料金を払えば、広告が表示されなくなるぞ」
「うるせーよ」
なにサブスク化してんだよ。広告が「入ってしまった」ってなんだよ。不可抗力みたいに言っているけど、あんたが描いたんだろ。まさか異世界に来てまで、この広告を目にするとは思わなかった。
動くことのない残り5秒の表示。それでも、しっかり5秒待つロネッカ。
「よし、広告が終わったな。じゃあ、改めて読み始めるぞ」
*
【私たちが住むこの世界。名前はオワッテール】
【今、この世界は大ピンチ。光と闇のバランスが崩れようとしているのです】
【日に日に力を増していく悪の勢力。光援者たちをもってしても、対抗することができなくなってしまいました】
【このままでは近い未来、世界は完全に闇に支配されてしまうでしょう】
【そこで、この危機を乗り越えるため、アレガルトはある計画を考えました】
【その名も、希望の光援者召喚計画です】
【この広大な宇宙には、魔王を一撃で葬り去るような最強の人間がいるはず。ならば、その人間をこの世界に召喚してしまえばいい】
【その者に希望の光援者の称号を与え、この世界を明るく照らしてもらうのだ!】
【世界の運命を賭けた、希望の光援者召喚計画。オワッテールは再び光を取り戻すことができるのか】
【おしまい】




