第2話 暗い理由
キーンコーンカーンコーン…
平凡な俺は、今日も平凡な一日を送る…はずがなかった。なにせ、昨日あんなことがあったばかりだ。白雪さんのような人と隣の席になるのとは違う、別の息苦しさが俺の中に立ち込めていた。
「ではここの問題を…日村、分かるか?」
そんなことを考えていると、日村さんが先生に当てられていた。
「………」
言わずもがな、彼女は困っている様子だった。どうしたものか。沈黙が続く。
「先生、俺分かります」
放っておけなくなり、気がついたら俺はそう口走っていた。
「おう、じゃあ橋本」
「-3x²です」
「なんだ橋本?全然違うじゃないか」
やってしまった…。少しの間クラスが笑いに包まれる。
「橋本も分からないようだから解説するぞー」
授業のペースが戻り、俺はちらっと日村さんの方を見てみる。依然として、彼女は俯いていた。
昼休みが終わり、5限目の授業が始まった。教科書を取り出そうとすると、机の中で何やらガサッという音が聞こえた。
(なんだ…?)
覗いてみると、身に覚えのない紙切れが入っていた。
「相談があります。放課後、図書室で待っています。 日村」
何やら面倒な予感がした。こんなのは、俺の送りたい平凡な日常では無い。しかしそうと分かりながら、俺は放課後、図書室に向かう気しか無かった。
そして約束の放課後が来た。俺の足は、自然と図書室へ進んでいく。
ガラッと扉を開け、室内を見渡す。すると奥の方の席に、日村さんの姿を見つけた。
「日村さん、約束通り来たよ」
向かいに腰を下ろしながら話しかける。
「………」
初めて話しかけた時と同じように、少しの間沈黙が流れた。
「…私」
小さい声で、日村さんはようやく話し始めた。
「私、男性が怖いんです…。」
それは恐らく彼女にとって、とてつもない勇気を振り絞って放たれた告白だった。
そうとなれば、どうにかしてやりたくなってしまう。俺は少しお節介なところがあるのかもしれない。
「そうなのか…。だけどどうして、それを男である俺に相談してくれたの?」
「さっきの授業、助けていただいたのが頭から離れなくて…。こんな優しい男性がいるんだって、男性だから怖いって決めつけてしまうのは良くないって、そう思ったんです。」
相変わらず、彼女の声は小さく頼りなかった。それでも、俺のことを少しだけ信じてくれている、そんな気がして嬉しかった。
「分かった。どこまで力になれるか分からないけど、まずは俺と話して男に慣れてみよう。」
これは絶対に、俺の思い描いていた学校生活とは違うものだ。しかし、悪くないと思える俺がいた。
第2話です。
どんな展開にしようか、思いつきで書いている部分もあったりと拙いですが、今後ともよろしくお願いします。