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ep22 神の手の施術士様、王国に召喚される

ドタドタと鎧をつけた連中がお店のドアを叩く

「春香様はいらっしゃいますかー」

「春香様、王宮からのお手紙です!」


ある日、突然届けられた一通の召喚状。

送り主は、サンスト王国の国王陛下だった。


「ついに王族案件きたこれ……!」


春香は、緊張しつつも内心ほくそ笑んでいた。

「王族なんて大金持ちに決まってる。これは……ガッツリ稼げるチャンス!」


もはや”金に目がない”は春香の日常。

期待と打算を胸に、彼女は王宮へ向かうことにした。


「春香さん、いってらっしゃいませ!」


シルビアに見送られながら、

春香は「一発大仕事決めてくるぜ!」と親指を立ててみせた。



「お待ちしておりました、『神の手』の施術士様!」


王宮に到着すると、すでに春香は伝説扱いだった。

護衛騎士、女官たち、皆が尊敬の眼差しで彼女を見つめている。


「(いやいや、そこまで大層なもんじゃないんだけどな……)」


と思いながらも、見栄っ張りな性分が刺激され、春香は胸を張って王妃の元へ。



「肩こりが酷くて……最近むくみもひどいんですの……」


王妃は優雅な雰囲気をまといつつも、身体は疲れ切っていた。

春香はすぐさまオイルを温め、熟練の手技を駆使する。


「ふぁぁぁ……すごい……こんなの初めて……」


王妃、メロメロ。


「春香さん、あなたはまさに奇跡の手をお持ちですわ!」


周囲の女官たちも感嘆し、拍手が起こる。


「(おぉ、王族案件うまくいった!報酬アップ確定!)」


心の中で小躍りする春香。




その様子を見ていた国王が「わしも頼めるか?」と興味津々に声をかけてきた。


「もちろん、特別スペシャルコースになりますけどね!」

「スペシャルコース?」


営業スマイルを決める春香。


特別コース=高額請求。


そう心に決め、国王に施術開始。

「王様、四つん這いになって下さい。」

「王様、かえる足のポーズで。」


「おっふ。」


「んおぉ……なんだこれは……!」「うっ。」「ふぅ。」


国王、骨抜き。


リンパを流し、ギリギリを攻める春香の手技に、いや、ちょっとやっちゃったかもしれない手技に、国王はもうデレデレだった。


「す、素晴らしい……!」


そして――

「そなたを妃に迎えたい!!」


「はっ!?」


王宮、騒然。


王妃は苦笑い。


「まぁまぁ陛下ったら……」


「いや、本気じゃ!そなたを後宮に迎える!」


王様、ガチ求愛。


「(ちょ、ちょっと待って、玉の輿!?いやでも後宮とか入ったら自由なくなるじゃん。仕事どうすんの?ルミカたちは?)」

春香は頭をフル回転させる。


とはいえ、王様の顔を潰すわけにもいかない。


「い、今すぐは難しいので、また……いずれ……」


なんとかその場を取り繕って逃げ帰る春香。



ホッと胸を撫で下ろしながら王宮を後にした。



眠りについたその夜。


「おっす、久しぶり!」


「あんた!!」


軽いノリの声。

振り向くと、あのインチキ神が、ニヤニヤしながら立っていた。


「なんであんたがここに!?」


「いや~、お前の噂がすげぇからさ、見に来たわけよ」


「……絶対暇でしょ」


「まぁな」


安定の胡散臭さに、春香は思わず脱力する。


「で、何しに来たの?」


「そろそろ言っとこうかなって思ってさ。現実に帰る道、一応用意はしてたんだぜ?」


「……は?」


突きつけられた”現実”という言葉。


「好きな時に帰れるようになってる。お前が望めばな」


「……」


一瞬、春香の中で時間が止まった。


帰れる。


現実に。


「(帰るって……現実に戻るってことは……あの、どん底の……あれに戻るってことじゃん)」


辛かった日々。

客に雑に扱われ、身体も心も擦り切れていた自分。

でも、現実世界には”家族”も”友人”もいたはずだ。


「今のほうが楽しいけど……」


自分でそう思っている。

けれど、現実という存在が突きつけられると、揺れる心。


「(……私、どうしたいんだろう)」


インチキ神は、「まぁ、すぐ決めなくてもいいけどさ」と笑って消えた。


残された春香は、王宮への疲れも吹き飛ぶほど、頭の中がぐるぐるしていた。


「帰る道……か……」


春香は初めて、“異世界で生きる”ということに、改めて向き合うことになった。



こうして、春香は大金を手にしつつも、

心に小さな迷いを抱えながら、メンズエステ春香へと帰っていくのであった。

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