ep21 店長ルミカ、支店を回せ!
「ルミカ、そろそろ本店に戻ろうと思うんだけど……」
サンスト支店の控え室で、春香はルミカに切り出した。
店の経営は順調。ルミカもすっかり板についてきた。
オープンしてから忙しくてバタバタだったけど、気づけば支店も安定してきた。
ルミカは「はい!」と笑顔で答えるものの、その表情には少しだけ寂しさが混じっているように見えた。
無理もない。
二人で肩を並べ、同じ布団で眠りながらここまでやってきたのだ。
離れる寂しさは、春香も同じだった。
「代わりにアルムを置いていくから任せるわ、店長」
春香がそう告げると、ルミカは一瞬目を丸くしたあと、にっこりと笑った。
「はい! 頑張ります!」
本店に戻ると、シルビアがおっとりした口調で出迎えてくれた。
「おかえりなさい、春香さん〜」
久しぶりに見るその脱力系の笑顔に、春香は「ただいま」と笑い返す。
シルビアは相変わらずのマイペースだけど、少しずつ仕事も板についてきた。
お客さんからも評判がいい。
本人はおっとりし過ぎていて気づいていなかったようだが、どうやら固定の客もかなり付いているらしい。
「意外とやるじゃん」と春香は密かに安心していた。
一方、支店ではルミカとアルムが忙しく店を回していた。
「アルム、そっちの予約確認して!」
「はいっ、ルミカさん!」
アルムは相変わらずドジっ子だ。
今日もオイルをこぼして床をぬるぬるにしていた。
「も〜アルムぅ! 拭くからタオル持ってきて!」
「す、すみません!」
でも、接客は相変わらずピカイチで、お客さんから「可愛いし癒される!」と大人気。
その分、ルミカがフォローに回ることも多かった。
「人手が……足りないなぁ……」
春香から言われた言葉を思い出す。
『出来ないことはできる人に任せなさい』
「うん……」
ルミカは一人うなずき、思い切って新人募集をかけることにした。
数日後、見習いとして二人採用することに決まった。
一人目は、リヨン18歳。
しっかり者で真面目な女の子。最初は緊張していたが、教えたことはすぐに覚える。
二人目は、シャミール19歳。
明るくて接客大好き。「楽しいです!」と笑顔を絶やさない元気っ子。
二人とももちろん未経験だったけど、やる気があった。
ルミカは春香から教わった施術や接客の基礎を思い出しながら、二人に丁寧に指導していった。
「力加減はこうね。優しく、でもしっかり……」
「あ、はい!」
「オイルはこう塗って……滑らせる感じ」
「おお〜!」
指導しているうちに、自分が成長していることも感じる。
「春香さん、こういう気持ちだったんだ……」と、ふと胸が熱くなった。
本店にいる春香の耳にも、そんな噂が入ってきた。
「サンスト支店、ルミカ店長、すごいらしいですね」
「新人が2人も入ったとか」
客から聞かされるたびに、春香は思う。
「……ルミカ、頑張ってるんだなぁ」
誇らしい気持ちと、少しだけ寂しい気持ち。
その両方が胸に広がっていた。
数日後、春香はふらっとサンスト支店に顔を出した。
すると、新人のリヨンとシャミールが目を輝かせる。
「噂の春香さん!? 本物ですか!? うわぁぁ!」
「ま、まじですか! すご〜い!」
アイドル扱いに苦笑しつつ、店内を見渡すと、ルミカが忙しそうに働いていた。
「あ、春香さん!」
「久しぶり」
「もう、ちゃんと回せてますから。安心してください!」
その笑顔が、頼もしくて、眩しくて。
「ああ、もう店長の顔になってるなぁ」と春香はしみじみ思う。
「ルミカと、並んで働いてた頃……楽しかったなぁ」
しかしお互い、その寂しさを口に出すことはない。
それぞれの場所で、仕事に励んでいる。
少しずつ、でも確実に、前に進んでいた。
ここまで読んでくださっている方がいましたら感謝申し上げます。いないかー




